【投稿】古色蒼然とした「安全保障」と「エネルギー政策」
福井 杉本達也
国民民主党の玉木雄一郎氏は立憲民主党との連立を組む条件として「安全保障」=安保法制肯定と「エネルギー政策」=原発推進の二つを修正することをあげている(日経:2025.10.14)。しかし、この条件は。あたかも1993年の細川連立内閣発足時に社会党に突き付けたような古色蒼然とした内容である。野党連立政権から32年、玉木氏の頭はなんらの進歩はないようである。
1 完全に破綻した「原発推進」政策
福井県内3原発の敷地内で計画する「使用済み核燃料の乾式貯蔵施設について、関電は10日、高浜1カ所目の着工が早くとも2026年、運用開始はお年ごろになるとの見通しを示した。」(福井:2025.10.11)。ようするに、原発内の使用済み核燃料プールが満杯になったので、プール外の乾式貯蔵施設を作らないと原発の運転ができないところまで追い込まれているということである。関電の計画では、使用済み核燃料を青森県六ケ所村の核燃料再処理施設に持ち込んで、核燃料プール内の使用済み核燃料を減らして、原発の運転を継続したいところであるが、核燃料再処理施設の稼働は延期に次ぐ延期を重ね、いつになったら動かせるかは全く見通しが立っていない。また、関電は、この使用済み核燃料を青森県六ケ所村の中間貯蔵施設や山口県上関町で中国電力が計画する中間貯蔵施設に搬入できないかを画策したが、青森県知事の反対や上関町での反対運動で見通しは全く立っていない。そこで、関電は福井「県外の中間貯蔵施設への使用済み核燃料搬出を開始できない場合は原発内の貯蔵プールに戻すとした」案を地元に提示したが、これに、これまで原発を一にも二にも推進・協力してきた美浜町や高浜町などが猛反発した。10月2日に美浜町会委員会はプールに戻すことに反対する「地元の改善を求める要望書」を関電に提出した(福井:2025.10.3)。そもそも、一旦、湿式貯蔵の核燃料プールから乾式貯蔵に取り出した使用済み核燃料を、受け入れ先がなかったという理由で再び使用済み核燃料プールに戻すというのである。かつて、物理学者の武谷三男氏は原発を「トイレのないマンション」と形容したが、いまやもう完全に物理的に破綻している。使用済み核燃料の持って行く場所はもう日本国中どこにもないのである。北海道などで調査されている高レベル放射性廃棄物の地下最終処分場などというのは全くの幻想である。これ以上、原発を動かし続けて使用済み核燃燃料を増やすことは物理的にできないのである。
3.11の福島第一原発事故により、原発というシステムがいかに危険かつ脆弱なものであるかが明らかとなった。さらには、使用済み核燃料は半永久的に冷却する必要があり、万一、冷却水がなくなれば再び核分裂反応を引き起こし、各暴走するやっかいなものである。稼働中の原発には広島型原爆1000発分以上の放射能がある。もし、玄海原発や高浜・大飯原発などがミサイル攻撃を受けた場合には、核攻撃以上の被害となり、日本は壊滅的状況に陥る。「安全保障」どころか「存立危機」である。玉木氏の「エネルギー政策」は原発の実態を全く踏まえない空理空論に過ぎない。そんなものを国民に押しつけてどうするつもりか。
2 米国に追随し「安全保障」を考えなかったドイツは今どうなったか
10月13日の日経新聞は「欧州最大のドイツ経済が正念場を迎えている。政府によると2025年の実質成長率は0・2%にとどまり、3年連続で景気低迷を避けられない見とおし」と書いた(日経:2025.10.13)。要因は「ロシアからの安価なガス調達が止まった」ことであるとするが、ロシアからの北海経由のノルドストリーム1・2ガスパイプラインの米国による破壊(2022年9月)を黙認したのは当のドイツであり、自業自得である。結果、エネルギー価格は高止まりし続け、「自動車大手や部品会社による大規模なリストラが相次」ぎ、VWの持ち株会社ポルシェSEが防葡産業への参入検討を明らかに」している(日経:同上)。
これに対し、YouTubeで米元海兵隊情報将校のスコット・リッター氏は「ポルシェにとっての問題はドイツ国内にはもはや鉄鋼を生産している企業が存在しないという点だ。安価なロシア産ガスを手放してしまったためもはや維持する余裕がない。つまり、もう鉄を作れないのだ。その結果、ポルシェはすべての鋼材をスウェーデンから購入しなければならず、そのコストが莫大な負担となっている。そして現実としてポルシェはいま防衛産業への転換に多額の資金を投じているものの実際にはその余裕がない。一台の戦車すら造ることはできないだろう。…彼らは戦車なんて作れない。資金がない。金がないんだ。いくら喋りまくろうが、言葉だけ流れるだけだ。大恐慌の時代には、少なくとも鉄鋼産業があった。ピッツバーグが鋼材を供給しフォードはモデルTをシャーマン戦車に改造できた。だがドイツには何もない。ポルシェは崩壊した企業だ。今まさに鉄鋼産業を解体している。スウェーデンは、装甲鋼板の価格を吊り上げるだろう。競争が起きる。フランスが戦車製造を計画しているが、もはや鋼鉄は生産していない。ヨーロッパで鋼鉄を生産しているのはスウェーデンだけだ。それだけだ。装甲鋼板を製造している国は存在しない。」「彼らは完全なパニック状態にある。」(スコット・リッター:2025.10.13)と述べている。
3 日米財務相会談で加藤財務大臣がサハリン2から手を引けと脅される
故ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、かつて、「アメリカの敵になることは危険かもしれないが、友人になることは致命的である」と発言している。「ベッセント米財務長官は、15日に行われた加藤勝信財務相との財務相会談で、日本がロシアからの原油購入を停止することを期待していると述べた」「『サハリン2』プロジェクトの最大株主はロシアのガスプロム社(77.5%)だが、日本の三井物産と三菱商事もそれぞれ12.5%と10%を保有している。そこで生産される多くが日本に供給されている。」(Sputnik日本:2025.10.16)。武藤経産相にいわれるまでもなく、「海外からの天然ガスの確保は、日本のエネルギー安全保障上大変重要」である。
『西の模範生』はいつも同じ試験で満点を取る:服従し、投資し、それがパートナーシップだと装う。プラザ合意から『5500億ドルの取引』まで、日本は管理された主権の優等生であり続け、従順さが知恵としてブランド化され、服従が外交として位置づけられる。すべての帝国には、その鎖を隠す成功物語が必要だ。」(X-C𝘰𝘳𝘳𝘪𝘯𝘦:2025.10,16)