【投稿】「下駄の雪」公明党の連立政権離脱と80年間もの米国支配

【投稿】「下駄の雪」公明党の連立政権離脱と80年間もの米国支配

                           福井 杉本達也

1 高市自民新総裁下で完全にコケにされた「下駄の雪」

「下駄の雪」と称されてきた公明党がついに自公連立政権から離脱することを通告した。表向きは、公明党がとりわけ重要視したのが「政治とカネ」問題の取り扱いであり、自民党が最も飲めない「政治とカネ」の企業団体献金の問題を突き付けたことにあるとしている。しかし、政治評論家の後藤謙次氏は「これまでの『自公連立』は繰り返し、例えば大きく政権が交代する時には、事前の人事の前の段階で、『創価学会』とそれから公明党と幹部に『こういう人事やります』という意味で、仁義も切っていたわけですね。今回は全く通告なしにむしろ総裁就任直後から高市さんが公然とと言いますか、国民民主党の玉木雄一郎代表に会ったり、麻生さんが榛葉幹事長と、これもテレビカメラが見えるようなところで会ったりということで、ある面で公明党に喧嘩を売っている」(TBS:2025.10.10)と述べた。

そもそも、今回の高市新総裁就任後の自民党内人事は異常であった。本来ならば政権を維持するためには公明党との連立協議を最優先にするのが筋である。ところが、新聞紙上では公明党と協議することもなく、次期内閣の閣僚の名前までが取りざたされている。副総裁となった麻生太郎氏は、「かつて安全保障関連3文書への対応を巡って山口那津男代表ら当時の公問党幹部を名指しで『一番動かなかった、がんだった』と批判」(日経:2025.10.8)しており、麻生氏の露骨な公明党排除の動きに「下駄の雪」も、ついに反発せざるを得なかった。所詮は「下駄の雪」、国民民主党や維新を取り込めば、いやでもついてくるとタカくくっていた。自民党は公明党だけでなく国民をも舐め切っていた。統一教会・裏金の萩生田光一氏を幹事長代行に任命したが、高市氏は「あえての起用と思ってほしい」と述べた(NHK 2025.10.9)ことにも表れている。高市総裁は、開口一番、党首会談において「一方的に連立離脱を伝えられた」と怒りの形相で語ったというが、民主党政権の3年を含む26年間も連立を組んだ政党に対し、反省どころか相手が一方的に悪いというのでは政治倫理にも悖る救いようにない政党に成り下がってしまった。

2 自民党は解党しかない

昨年10月の衆院選挙を分析した元朝日新聞記者の佐藤章氏は「注目されていたのになぜ投票率が低かったのか? 自民党の集票システムがぶっ壊れたからである。インボイス導入で地方の中小土建業者が塗炭の苦しみを味わい、国内農家を無視したアメリカ農産物の輸入増加によって農家・JAが打撃を受けた。自民党への投票者はもういない!」とXに投稿した(2024.10.29)。日経新聞は「公明党は支持母体、創価学会の組織票を持つ。衆院選は大半の小選挙区で候補者を立てず、創価学会の会員らに自民党候補への投票を呼びかける。」として、公明党が自民党候補への支持をやめれば、2割の候補者が落選すると試算している(日経:2025.10.10)。さらに、衆院選では50人近くが落選するとの試算もある。孫崎享氏によるAI予測では、「公明離脱で自民の比例票が500 万票近く減少し、都市部での小選挙区競争が激化すると見込まれる。”衆議院(定数465、過半数233)現在の自民議席: 196(公明離脱で連立総数は220 から196 に減)。”離脱時の影響: 公明の選挙協力(推薦・組織動員)がなければ、自民の小選挙区当選率が低下。比例代表での票流出も深刻で、ボーダー議員(当選圏内の現職)の多くが落選リスクにさらされる。”予想議席減: 40~60 議席(自民単独で140~160 議席程度に)。」(孫崎:2025.10.11)。これでは永久に少数派になり、浮上できない。比較第1党ではあるが自民党は連立でないと政権につけない。これまで政権与党ということで、集まった集団が自民党であり、与党という利権の鏨が外れれば、バラバラになり、解党しかない。

3 自民党は分裂するか

経済評論家の植草一秀氏は「自民党内に異なる政治理念、歴史認識、政治哲学、基本政策を唱える勢力が同居している。今回は極右勢力が自民党実権を握ったために公明が連立を離脱したという側面も強い。これまでの与党勢力は、政治理念と基本政策で、極右、中道、新自由主義の三勢力に分類できる。この異なる三つの勢力が同居していることが政治を極めて分かりにくいものにしている。野党勢力では、公明、国民が中道、維新が新自由主義、参政と保守が極右に分類できる。自民が三つに分裂して、それぞれ同類の野党と合流すると政治は分かりやすくなる。自民と同じ問題を抱えているのが立民。立民も中道、新自由主義、革新の三つに分裂するべきだ。」(植草一秀の『知られざる真実』2025.10.10)と書くが、そのような「分かりやすい」分裂が起こるとは考えにくい。

上野千鶴子氏は「党内融和を最優先したすべての自民党総裁候補者。石破首相もしかり。結果、思うような政策をなにひとつ実現できなかった。政権与党であることにだけ価値がある自民党にとっては党を割る選択肢などないのだろう。」と述べている(yahooニュース:2025.11.11)。「党を割る選択肢」ではなく、政治的志しもエネルギーも人材もなくなっている。

4 米国の80年間もの支配から独立する以外に日本の政治を正す道はない

公明党の連立離脱発表と同時の10月10日に出された石破首相の『戦後80年所感』はあまりにも内向き過ぎている。誰に呼びかけたのか。「なぜあの戦争を避けることができなかったのか」という自問は「(今日への教訓)」としては中途半端なままである。今日的には思い切って9月3日の中国の戦勝記念日に敗戦国として出席して、対米従属を脱し、顔を西に向け、東アジア・東南アジアの諸国と協力していくと宣言してこそ意味をなしたであろう。

BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、2013年4月からの安倍政権で行われたアベノミクスにおいて、円を600兆円も増刷したが、GDPへの効果がなかった。それは消費税を5%から8%、8%から10%への増税をしたため、ゼロ金利マネーは、2%から5%金利のつく米国債とドル株の買いになった。推計400兆円のドル買い・円売りで、1ドル80円台(2012年)が120円、140円、160円の円安になって海外に流出した。10年に及ぶ大実験によっても日本の経済成長率は低いままであり、黒田日銀の異次元緩和が引き起こした超円安による輸入インフレにより日本の家計はひどく苦しめられている。原油など資源価格の上昇は、海外への支払いを増やし、交易条件を大きく悪化させ、賃金は上がらず、物価上昇が続くため、実質賃金は3年連続の減となり、家計の実質購買力を大きく悪化させている。低金利が円安を逆に助長し、実質購買力を大きく損なっている。衰退する国家の制度は収奪的であり、一部の社会エリートが富を独占している。と同時に青天井の企業献金が容認され、金権政治がまかり通ている。包括的だったはずの日本の社会制度は、いつの間にか収奪的な社会に向かっていると分析する(河野:『日本経済の死角』)。

消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は28%と42年ぶりの水準となり、当然ながら、年収200万円未満の世帯は33.7%と、低所得世帯ほど影響は大きい。国民の生活水準が低下している。昨年の衆院選の評価で、宮本太郎中央大学教授は「若者を含めて多くの国民が直面し呻吟している物価高騰と生活苦である。このリアルな現実に、既存の社会保障と税さらには雇用の制度が機能していない、むしろ若者をつぶしているという感覚が折り重なり…社会保障はもはや高齢者向けの給付に限られ現役世代は負担だけを強いられる。税はとられるだけで決して還つてはこない…空気は幻影ではない。その根底には紛れもない現実がある」と書いている(『世界』:2025.1)。

連立を離脱した公明党は「野党各党による国会対策委員長会談への公明の参加に向けて調整」することとなった(朝日:2025.10.11)。当然、責任ある野党として自民党に対抗してもらいたいものだが、アベノミクスをはじめ、26年間(民主党3年を除く)に亘り売国政策に加担し、国民の生活水準を大幅に低下させ、国民は生活苦に呻吟していることの罪と反省は厳しく問われねばならない。「国内」ではなく「海外」に80兆円もの大枚を気前よく投資して、衰退する金融帝国・米国と心中しつつあるが、日本の与野党には馬耳東風である。意図的に通貨の価値を減額させ、海外へと投資を誘導し、インフレを引き起こして実質賃金を減額させてきた売国政策を厳しく問える野党連携を作ることができるかが問われる。

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