【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備

【投稿】日本の5500億ドルで米国の電力(原発)などインフラを整備

福井 杉本達也

1 トランプ大統領との会談で徹底的に売国をアピールした高市首相

⾼市早苗⾸相は10月28⽇、都内でトランプ⼤統領と初の⽇⽶⾸脳会談を⾏った。会談後、トランプ⽒とともに横須賀基地を視察した。トランプ⽒のスピーチした際、⾼市⽒は表情を崩しながらサムアップで応じた。また、肩を引き寄せられる場⾯もあった。これが一国の首相の態度であろうか。目を疑わざるを得ない。宗主国の「国王」に媚びへつらい、従順に従う植民地の総統そのものである。しかし、我々国民の問題はその映像にあるのではない。会談での米国との正式の約束事にある。①5500億ドルの米国への投資、②米国産米の75%輸入増、③防衛装備品購入2兆5000億円、④ボーイング社の航空機100機の購入、⑤米産トウモロコシ・豚肉など1兆2000億円の購入、⑥アラスカ産LNGの新たな調達計画への参画などなど国民の生活を直撃するものばかりである。

これに加えて、小泉進次郎防衛相は、「へグセス米国防長官と会い、防衛力強化を前倒しする方針を説明した。へグセス氏は、「速やかな実行に期待を表明した。」(日経:2025.10.30)。これについいて、日経新聞は「日本の防衛費増額は米国の要求に先手を打つもので、財源や自衛隊の人材確保は見切り発車という危うさを抱える」とのコメントを付け加えた(日経:10.30)。防衛費GDP比2%強を前倒しにするというが、財源は国有財産の売却など一時的なものが多く、所得税の増税は先送りされている。トランプ政権内にはGDP比5%を求める発言もあり、5%強となれば30兆円、「25年度の一般会計歳出総額は115兆円あまり。防衛関連予算が却兆円に膨らむと全体の4分の1を占める」(日経:10.30)こととなり、社会保障費に匹敵することとなる。消費税のさらなる増税か、赤字国債の発行かしか財源の手当てはできない(日経:同上)。いったい、高市内閣は日本をどこへ導こうとしているのか。

 

2 江戸末期の不平等条約よりも不平等な5500億ドルの投資先

トランプ氏との会談で5500億ドルの71.5%=約4000億ドル(約60兆円)の投資先が「日米間の投資に関する共同ファクトシート」で少し明らかとなった。「原子力発電などのエネルギー、人工知能(AI) 向けの電源開発、AIインフラ開発、重要鉱物の4つの投資分野を列挙した。」ソフトバンク・東芝・日立・三菱電機・村田製作所など「日本企業8社が『プロジェクト組成に関心』を持っていると明らかにした。」(日経:2025.10.29)。

これについて、野村総合研究所の木内登英フェローは「投資計画の最終決定が米大統領に委ねられる点、日本企業を支援する日本の政府系金融機関が資金を出資、融資、融資保証の形で提供する枠組みに、米国企業が参加すること、米国政府が投資から得られる収益を得ること、など、米国主導で日本にとっては不平等な取り決めになってしまった」「日米合意の投資に関する覚書:米国優位の不平等な取り決めにである。」「また、投資対象は日米が協調する経済安全保障分野とすることで、日本の国益にもよりかなうもの、とされたが、実際には米国の製造業の復活と拡大に資する枠組み」である。「投資計画が日本にとって不平等なものであり、それが日本の国益を損ねていないか」とコメントしている。

 

3 80兆円でアメリカの原発を建てる

見た目は「投資」、中身は「公共事業の肩代わり」。日本の費用でアメリカの電力インフラを再建しようとするものである。日本が直接米国の電力会社に出資するのではなく、特別目的会社(SPC)を作り、日本政府系の金融機関──JBIC(国際協力銀行)、NEXI(貿易保険)、JOGMEC(資源機構)──がこのSPCに融資や保証を行い、SPCが原発や送電設備の建設を担う構造である。しかし、日本も同様だが、電力料金は勝手に電力会社が上げることはできない。米国でも州ごとの認可制である。日本でも建前は同様だが(実際は日本は電力会社優先だが)、消費者保護が最優先されるため、「外国投資家の利益確保」は理由にならない。その結果、電気料金は上げられず、融資返済の原資が失われる。原発建設には常に想定外のコスト超過と遅延がつきまとう。損失が出れば、融資保証をしているのは日本の政府系機関──JBIC、NEXI、JOGMECである。損失はアメリカではなく、日本の国費が負担することになる。「受益者はアメリカである。日本の資金によって、原発や送電網といった老朽インフラをほぼ無償に近い形で再建できる。建設に伴って地元では雇用が生まれ、関連企業にも発注が広がる。完成後は安定した電力供給を確保し、政治的にも『エネルギー再建の成果』としてアピールできる。さらに、電気料金を抑えることで国民の支持を得ることもできる。コストを負担せず、成果だけを享受する理想的な構図だ。」(くもnote:2025.10.28)。東芝の名前が出てきた時点で、東芝が倒産した、かつてのウエスチングハウス原発事業のみじめな過去を思い起こさざるを得ない。ウエスチングハウスは10月28日、全米で800億ドル分の新たな原子力発電所を建設すると発表した。「日米両政府が発表した投資枠組みを使うとみられる」(日経:2025.10.30)。日本は国内に投資できず、上下水道や道路など、老朽化したインフラの更新もできず、金は全て米国に巻き上げられ、ますます貧しくなる。これを売国といわずしてなんというのか。野党は投資の枠組みをまともに理解しているのか。

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