<<「いじめっ子は、いじめ返された」>>
10/30、トランプ米大統領のアジア歴訪の締めくくりであった、韓国(釜山)・APEC会合での、米中首脳会談について、トランプ氏は、中国の習近平国家主席との会談は「本当に素晴らしいものだった」、「両国間には計り知れないほどの敬意があり、今回の会談によってそれがさらに深まるだろう。」、「0から10のスケールで、10が最高だとすれば、今回の会談は12点だったと言えるでしょう」と自らを礼賛した(TruthSocialへの投稿)。
 しかし、トランプ政権のおべんちゃら閣僚以外は誰も絶賛などしていない。ガーディアン紙の外交担当編集者パトリック・ウィンター氏は、トランプ氏は「いじめっ子はいじめ返される可能性があることを発見した」とまで述べている。
 しかし、トランプ政権のおべんちゃら閣僚以外は誰も絶賛などしていない。ガーディアン紙の外交担当編集者パトリック・ウィンター氏は、トランプ氏は「いじめっ子はいじめ返される可能性があることを発見した」とまで述べている。
トランプ氏が仕掛けた一方的な関税戦争は、米中間においては、11/1に実施予定であった100%関税の脅しが撤回に追い込まれ、少なくとも4月までは一応とりあえず「休戦」、「安定」が確認されたというのが、実態なのである。
 米中間で、何が確認されたのか、列挙してみよう。
 米中間で、何が確認されたのか、列挙してみよう。
* 中国政府、米国産大豆の大量購入を再開へ : トランプ大統領「中国が米国産大豆やその他の農産物を「膨大な量」購入し、米国の農家に救済を提供する」
* 中国、レアアース輸出制限を1年間停止 : 中国商務省の声明によると、「中国は10月9日に発表した関連輸出管理措置の実施を1年間停止し、具体的な計画を検討・改善する」としている。
* トランプ大統領、中国のフェンタニル関税を即時10%に引き下げる。
* 中国政府は、米国は一部の相互関税の停止を1年間延長すると発表し、TikTokに関連した問題の解決に向けて米国と協力する。
* 米国、ブラックリストに掲載された中国企業の子会社を対象とした規則を一時停止する。
* 中国はアメリカからのエネルギー購入を開始する。
* 両国は特定の輸送関税と手数料を撤廃することにも合意。
* トランプ大統領は、中国が米国への投資を強化することに楽観的な見方を表明し、4月に中国を訪問すると表明。中国政府は、米国が習氏の訪米を招待したと発表。
<<「解決どころか、ごまかしているだけ」>>
しかし、これらの合意・確認では、真の解決策は何も提示されはていない。あくまで一時しのぎなのである。
 10/30、『アトランティック』誌や『ファスト・カンパニー』誌への寄稿で知られるジャーナリストのスロウィエツキ氏はXへの投稿で、「これはトランプが自ら作り出した問題を、解決どころか、ただごまかしているだけだ。トランプが最初に大統領に就任した当時、中国は米国から年間3000万トン以上の大豆を購入していた。トランプによる最初の対中貿易戦争でその量は激減し、ブラジルが市場シェアを奪った。そして、トランプの2度目の貿易戦争で状況はさらに悪化した。中国の大豆需要は2017年当時よりもはるかに大きい。しかし、今回の合意後でさえ、中国による米国産大豆の購入量は2017年当時よりもはるかに少ないだろう。これはすべてトランプのせいだ」、「トランプ氏は、最新の政策ミスによって、自らが引き起こした問題さえも解決できていない。トランプ大統領は問題を作り出しただけで、真の解決策は何も提示していない」と手厳しい。
 10/30、『アトランティック』誌や『ファスト・カンパニー』誌への寄稿で知られるジャーナリストのスロウィエツキ氏はXへの投稿で、「これはトランプが自ら作り出した問題を、解決どころか、ただごまかしているだけだ。トランプが最初に大統領に就任した当時、中国は米国から年間3000万トン以上の大豆を購入していた。トランプによる最初の対中貿易戦争でその量は激減し、ブラジルが市場シェアを奪った。そして、トランプの2度目の貿易戦争で状況はさらに悪化した。中国の大豆需要は2017年当時よりもはるかに大きい。しかし、今回の合意後でさえ、中国による米国産大豆の購入量は2017年当時よりもはるかに少ないだろう。これはすべてトランプのせいだ」、「トランプ氏は、最新の政策ミスによって、自らが引き起こした問題さえも解決できていない。トランプ大統領は問題を作り出しただけで、真の解決策は何も提示していない」と手厳しい。
これらの合意で露呈され、確認されたのは、米国の弱さと中国の強さであった。
* トランプ大統領が発動した中国の大豆規制は、米国農家が頼りにしていた126億ドル規模の市場を壊滅させたが、中国はブラジルなど他の供給元へ直ちに転換することが可能であった。
* また、トランプ大統領が中国企業に課した制裁は、逆に中国のレアアース輸出制限をもたらし、中国が保有し、米国のテクノロジー企業が電気自動車、スマートフォン、AI搭載デバイスに必要不可欠なレアアース(希土類金属)の入手を困難にさせ、米軍事企業まで悲鳴を上げ、操業停止にまで追い込まれる結果をもたらしたのであった。世界のレアアースの約70%は中国産なのである。
* 中国の習主席は、米中貿易協議について、「私たちは常に意見が一致するわけではなく、世界をリードする二つの経済大国が時折摩擦を抱えるのは当然のことです」と述べ、「風や波、そして様々な困難に直面する中で、中国と米国の関係を担う私たち二人は、正しい方向性を堅持し、米中関係という巨大な船が着実に前進していくことを確保しなければなりません」と念を押している。
* そして、この中国の強さは、ドル一極支配の弊害から自立的経済圏の形成を目指し、拡大しているブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを中心とするBRICS+諸国の存在と協力に支えられているところにある。
トランプ政権は、中国と世界を相手に次から次へと違法な一方的関税を課し、貿易戦争を展開、過去6ヶ月間、脅迫と威嚇を繰り返してきたが、成果を得られるどころか、実際にはほとんど何も達成していないのが現実である。引き続き政治的経済的危機が押し迫り、根本的政策転換を迫られているのは、トランプ政権なのである。
(生駒 敬)
