【投稿】いまなぜ原発再評価か?—原発事故は歴史の韻を踏む
福井 杉本達也
1 原子力で日仏連携
1972年に日仏原子力協定が締結されてから50年以上が経過した。使用済みプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX)の再処理技術の確立に向けた実証研究の一環として、関電の工程表では高浜原発の計400トンを27年度から29年度にかけてフランスに搬出する(福井:2025.2.13)など、日本とフランスの関係は非常に危うい状況下で深まっている。6月24日付けの日経新聞は「脱炭素の動きに中東混迷が重なり、世界で原子力が再評価されている。」とし、続けて、「日仏は核融合や高速炉といった次世代技術で市場開拓を狙う。フランスにある核融合の実験炉の早期稼働が新たな産業の成否を左右する」と書く。さらに早大の遠藤典子氏の言葉を引用して、「『経済安全保障上重要な人工知能(AI )やデータセンター向けの電力を確保するには原子力発電が有望だとの認識が各国政府間で広がっている』」、とし、「長引く中東混乱も、石油など化石燃料に頼らない電源整備を促す。」と述べている。
2 実態は恐ろしい老朽原発の再稼働
しかし、実態は「原子力が再評価されている」どころか、古い耐用年数をとっくに過ぎた原発の再稼働であり、あちこちで事故や書類の偽装が頻発している。2026年5月8日、福井県美浜町の美浜原発3号機で高圧タービンカバーから蒸気が噴出し、関西電力は原子炉を手動停止した。破損したのは高圧タービンを覆うカバーの一部。縦約1センチ、横約8センチにわたって亀裂が生じ、本来約20ミリあるはずの厚みが、最も薄い部分では、(計測可能な範囲で)わずか約1ミリにまで減っていた。設計厚の95%が失われていたことになる。 原因は高温高圧の蒸気による内側からの腐食。そしてこの部材は、1976年の運転開始以来、およそ50年にわたって一度も交換も補修もされていない。

3 美浜3号機の2004年8月の死傷事故
美浜3号機には、決して忘れてはならない事故がある。2004年8月9日、タービン建屋で、二次系の復水配管が破断、約140度の熱水と蒸気が噴出、点検作業の準備をしていた作業員のうち、5人が死亡、6人が重傷を負った。今回の事故も、同じプラントの高圧タービン・カバーという別の二次系設備で、2004年と同じ構図で安全管理の失敗が繰り返された。ようするに、関電は安全管理に金を投資する気は全くないということである。規制官庁の目の厳しい、一次系だけはまだしも、全くゆるゆるの二次系については、点検も保守も蔑にしている。しかも50年に亘り何も安全管理をしていないという事実である。この会社は安全管理などカネのかかることには一切投資しない。老朽設備でも動かせる間は動かすという姿勢である。
4 美浜3号機はトラブル続きで、昔もいまも関電の問題児
美浜3号機は1976年12月1日に営業運転を開始し、福井県内では関電美浜1・2号機や日本原電敦賀1号機など既に廃炉を決めたものを除いた原発の中では高浜1、2号機に次いで古い。60年までの運転に向けた50年超運転の新計画では、原子炉容器など安全上重要な約4干の機器・構造物について、運転開始70年時点での劣化状況を想定した健全性評価を行い、安全性に問題がないことを確認したこととなっている(福井・2025.12.25)。
しかし、現実には、2024年10月、美浜3号機の原子炉格納容器内にある一次冷却水ポンプなどの機器を冷やす水を熱交換器を通じて海水で冷却する系統で、配管に減肉や微少な穴が見つかった。関電は、配管を取り換えた。規制委は、関電が配管内側の保護シートを補修する際に、耐久性が低い樹脂の塗布を採用したことが原因と指摘した。しかし、規制委は一次系の機器などの冷却に必要な海水の流量は確保されていたことなどから、安全は保たれているとして問題を無視した。(福井:2025.2.20)。
また、2026年2月6日には、非常用ディーゼル発電機1台が自動停止したが、燃料油タンク内に水が入り込んでいたことが原因であるとし、燃料油を取り換え正常に動くことを確認したので問題はないと、これもスルーしている(福井:2026.2.7)。
5 原発事故は歴史の韻を踏む
2026年6月27日付けの日経新聞コラム『大機小機』は「崩壊するまでバブルかどうかは分からない」。先日亡くなったグリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長は、バブルの本質をこう表現した。米著名投資家ジョン・テンプルトンがいみじくも言ったように「今回は違う」というフレーズほど高くつく言葉はない。そう皆が思ったとたんに株価はうなぎ登りに上昇していき、最後は制御不能となる。株価が人間の心理に左右される限り、バブルは歴史の韻を踏むと書いている。
原発の巨大事故も起こるまでは安全か危険かはわからない。いま、3・11後16年目の日本では原発の再稼働がどんどん進められている。「今回は違う」と政府も規制委も電力会社も立地市町村も皆が安全だと思って進められている。しかし、そのフレーズは非常に高くつくことになる。人類の存立基盤さえ脅かしかねない。