【投稿】レアアースを巡る邦人拘束と日本産業の崩壊への一歩
福井 杉本達也
1 中国・レアアース密輸で邦人2人が拘束
6月25日付けの日経新聞は、日本政府は、中国遼寧省大連で日本人2人が中国当局に拘束されたと明らかにしたと報道した。重電大手・富士電機の社員で、レアア―ス製品の輸出に関して法令違反の疑いをかけられたとみられる。
26日付けの日経新聞社説では、「今回の2人が具体的にどんな不正を犯したのかを明らかに」していない、「中国側にはあえて拘束の理由をあいまいなままにし、日本企業を萎縮させる狙い」があるとし、「経済を武器にして、意に沿わない相手を威圧する中国のやり方は許しがたい」と主張する。
しかし、中国商務部の2025年第18号公告によれば、軍事転用可能なデュアルユース品目の輸出は商務主管部門に申請が必要とされ、規制対象品を無許可輸出、加工・分解で部品化して許可を回避する輸出、第三国を迂回する輸出する行為は「禁止貨物密輸罪」で違反となる。「ダミーアセンブリ」に加工した後、「規制外の深度加工品」と見せかけて輸出し、海外で分解するような行為は、当局トレーサビリティを事実上掻い潜る行動で、軍事用途に転用される可能性もあるため、悪質度が高いとされる(X-ZHWさん投稿:2026.6.25)。
「ダミーアセンブリ」による密輸とするならば悪質であり、日本の産業界は死ぬか生きるかの瀬戸際で、どうやって事業を継続するかというサバイバルモードに差し掛かっていることになる。日経社説を始め、政治の世界では中国への抗議が叫ばれているが、現場の産業界はすでに物理的に崩壊し始めている。
2 米国の属国として軍事膨張を続けるか、中国からの圧力に屈し日本経済を救うか
戦後日本の外交戦略の本質は「曖昧戦略」であり、安全保障を米国に依存しつつ、経済は中国の成長に乗るという、二股をかけた現実主義だった。日米同盟を基軸にしつつも、台湾問題や中国への関与については明言を避けることで、米中双方に敵対しない姿勢を示す日本など東アジア諸国にとって、中国は最大の貿易相手国であり、雇用と産業サプライチェーンを支える成長のモーターである。RCEPなどを通じた地域の経済統合こそが、リアルな富を生み出すインフラになっている。しかし、この戦略は、2010年代後半からの米中対立の激化に伴い、どちらかに付くことを迫られる時代に突入した。高市政権は、「台湾有事は日本の存亡の危機」と明言し、明確に米国との一体化を選択した(X-Dr.Fager 投稿 2026.6.26)。
経済的には融和的な統合へ向かう重力が働きながら、軍事的にはそれと逆行して衝突の最前線へ送り出されている。「中国との地域統合によって発展を追求している社会が、同時に、その最大の貿易相手国と軍事衝突するための前進基地として機能することなど不可能だ」。
日本はアメリカの要請に応えて軍事拡張を続けるか、中国の圧力に屈して経済を救うかという、究極の二者択一に直面している。このジレンマは、日本が自立した国家としての戦略を持たず、米中の狭間で振り回されてきたことの代償に他ならない。
中国が提示する条件は極めて厳しく、事実上の安全保障政策の敗北宣言を意味する。もし日本の生存を最優先するのであれば、屈辱を受け入れ、産業基盤を守るために中国の要求を呑むことが、現実的な唯一の合理的な解である。(X-Dr.Fager 投稿 Vijay Prashad『東アジアの二重の拘束:新冷戦における矛盾と可能性』Tricontinental:Institute for Social Research2026.6.24)。
3 高市首相が台湾発言を撤回するだけでは収束しない
すでに状況は更に悪化しており、高市氏が発言を撤回するだけでは収束しない段階になっている。「東京が軍事的・外交的に北京に反対すればするほど、希土類の規制は厳しくなるだろう。2026年1月から4月にかけて、中国の7つの規制希土類製品の日本向け輸出は前年比で34%減少しました。3月の1か月間での減少率は88%に達し、4月は82%の減少となりました。電気自動車の磁石に使われるジスプロジウムやテルビウムなどの重希土類の日本への輸出は1月からゼロとなり、同時期にイットランドの輸出量は90%以上減少しました。」「日本は2026年後半に希土類の備蓄を使い果たす見込みです。2027年前半には、関連産業の製造コストが「肉眼で」(目に見える形で)上昇します。もし来年後半までに状況が緩和されなければ、日本の自動車産業の電動化は大きく妨げられるでしょう。他のセクターへの波及効果と合わせると、これは日本のGDP成長に対する全体のマイナス影響の35%以上を占める可能性があります。」(イエン・モー:日本は「存続を脅かす危機」からどれくらい離れているのか? MODERN DIPLOMACY 2026.6.26)。
中国商務部(省)が25日に開催した定例記者会見で、記者の「日本経済界の関係者が相次いで中国を訪問している。中国は日本経済界の訪中交流に対する姿勢を調整したのか。中国は日本企業に何を期待するか」という質問対し、何報道官は「日本の高市早苗首相による台湾問題に関する誤った発言は、中日関係の政治的基礎を深刻に損ない、両国の経済貿易協力に深刻なマイナス影響を与えた。日本経済界が自身の利益から出発し、日本政府に反省して過ちを正すよう促し、両国の経済貿易協力が健全な発展の軌道に立ち戻るための環境作りをすることを願う。」と述べた(『人民網日本語版』 2026.6.26)。
「円安が続き、内需も力強さを欠く今、日本経済の回復はもともと容易ではない。これは高市政権が認識すべき一つの基本的事実だ。中国という巨大市場を失い続ければ、日本の製造業や観光業など多くの基幹産業にとって、事態はさらに深刻化するだけだ。日本側が本当に自国企業のために安定した発展空間を確保したいのであれば、自らを省みて、対中政策や台湾問題に関する誤った発言を直ちに撤回し、『経済安全保障』の名の下での保護貿易をやめ、対中世論戦の場での悪意ある扇動を停止すべきだ。日本の経済界はより強い決意をもって、『張本人』である高市政権に声を上げるべきだ。在中国日系企業の切実な利益のため、そして中日経済・貿易協力の大局のために、一連の誤った対中政策を直ちに修正し、対立思考を捨て去るよう求めるべきだ。日本側が率先して誠意を示し、中国への誤った言行を停止してこそ、中日関係は真に現在の困難を脱することができる」(「中国網日本語版(チャイナネット)」2026.6.15)と、日本経済界の再三の懇願に対しても突き放した対応を示している。