【投稿】バイデン政権・「世界大戦」の脅し--経済危機論(74)

<<開戦ドラムを打ち鳴らすバイデン>>
2/10、バイデン米大統領はNBCニュースのインタビューで、「ウクライナにいるアメリカ国民に一刻も早く国外に出るよう」呼びかけ、「テロ組織と取引しているわけではない、世界最大の軍隊を相手にしているのだ。事態は急速に悪化する可能性がある。アメリカとロシアが互いに撃ち合い始めたら、それは世界大戦になる。我々はこれまでとは全く異なる世界にいるのだ。」と警告。
イギリスのジョンソン首相も同じ2/10、欧州が「過去数十年で最大の安全保障上の危機」に直面している、と呼応。
翌2/11、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)

利益相反:バイデン政権が開戦ドラムを打ち鳴らし、ヨーロッパは平和を模索

はホワイトハウスで行った記者会見で、「ロシアは空爆で侵攻を開始する可能性があり、出国が困難になる恐れがあり、ウクライナ国内にいる米国民に対し24─48時間以内に退避するよう」呼び掛け、「侵攻はいつ開始されてもおかしくはない、首都キエフへの奇襲もあり得る」とし、「事実上何の予告もなく、出発を手配するための通信が遮断され、商業輸送が停止される可能性がある」、「五輪閉幕前にも侵攻の可能性」があるとまで発言。
2/12、米国務省は、土曜日の早い段階で、キエフ大使館の約200人、ほぼ全ての米国人スタッフが退去する予定である、と発表している。
こうした一連の発言、報道に対して、ロシアは、一貫してウクライナへの侵攻を繰り返し否定しており、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「ホワイトハウスのヒステリーがこれまで以上に鮮明になった」とし、「アングロサクソンは戦争を必要としている。どんな代償を払ってもだ。挑発、偽情報、脅しは自分たちの問題を解決するための常とう手段だ」と述べている。

これらは、作り出された危機である。ロシア軍がウクライナに侵攻する寸前であるという米英共同の作戦であり、他の欧州諸国が乗ってこない焦りの産物でもある。この作り出された危機によって、ロシアの国境にさらにNATO軍の重装備を一層拡大し、緊張を激化させる口実として使われているのが実態である。
極論すれば、米英のバイデンやジョンソン両首脳は、ロシアに「ウクライナに侵攻してくれ」と懇願しているようなものである。バイデン、ジョンソン、どちらも国内支持基盤が低落の一途をたどり、軍産複合体と石油独占資本にぼろもうけの機会を提供し、緊張を激化させることで、政権批判の矛先をかわそうとしているのである。

肝心の危機に直面しているとされるウクライナ自身がこの間、パニックを煽り、危機を作り出さないでくれ、と一貫して否定し続けているのである。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「アメリカのレトリックが危機を生み出しており、ロシアの侵攻の脅威が昨年4月から高まっているとは考えていない」、ロシアの侵攻はまだ「あり得ない」と述べている。キエフ – ウクライナ大統領府のミハイロ・ポドリャク氏は声明で、「状況を率直に評価すると、非エスカレーションのための外交的解決策を見つける可能性は、さらなるエスカレーションの脅威よりもまだかなり高いと言える」と主張している。さらに ウクライナのクレバ外相も、戦争が間近に迫っているというアメリカの予測を「終末論的な予測 」だと一蹴し、「信じるべきではない」と述べている。

<<本音が現れた!>>
2/7に訪米したドイツのショルツ首相と会談した後、バイデン大統領は共同記者会見で、ロシアがウクライナに侵攻すれば、「天然ガスパイプライン・ノルドストリーム(Nord Stream)2はなくなる」、「我々はそれに終止符を打つ 」と発言している。ここに本音が現れている。ドイツはウクライナ危機に対応した軍の派遣も、武器の供給も拒否しているが、ショルツ氏は、ロシアが侵攻した場合、ドイツはパイプラインの「プラグを抜く」のかと問われると、同盟国との結束を強調したが、ドイツと直結するパイプラインに「終止符を打つ 」確約はしなかったし、できなかったのである。
ドイツは天然ガス供給の50%以上をロシアに依存しており、ロシアのバルト海沿岸からドイツ北部に直接つながる海底を走るノルドストリーム2が稼働すればさらにその依存度が高まるであろう。また、ロシアはEU全体のガスの約3分の1を供給しており、石油も約4分の1を供給している。軍事同盟であるNATOは、欧州がロシアのガスに依存していることを「懸念している」と繰り返し述べ、米国は一貫してヨーロッパにこのプロジェクトのキャンセルを要求し、米英石油資本から、ロシアのガスの約4倍の高価格でエネルギー需要に対応することを要求してきたのである。米英は、このノルドストリーム2を破壊

バイデンはガス輸出を促進し、パイプラインの株式で議員を儲けさせる         ヨーロッパへのガス輸出急増でパイプライン株で利益を上げる米国議員

したいのである。

これを裏付ける経済的背景として、だぶつくアメリカの原油生産量が上げられる。米エネルギー情報局(EIA)が発表した2022年1月の短期エネルギー見通しは、米国の原油生産量が2022年に平均1,200万B/D、2023年に1,260万B/Dに増加し、年間過去最高を記録、2023年に日量1240万バレル(bpd)の新記録を達成すると、生産量見通しを上方修正している。
しかし問題は、米国の非在来型石油・ガス生産は、ロシアやOPECの生産能力には到底太刀打ちできないほど、高価格であり、環境破壊型なのである。

西側民主主義の結束の象徴としての軍事同盟・NATOは、実は米英エネルギー独占資本、ならびに軍産複合体の独占的利益追求の道具として使われているのである。いろいろと難癖をつけてきたのであるが、今や、ロシアを競争相手として排除する唯一の方法が、戦争となったわけである。

一方、フランスのマクロン大統領は「今日のロシアの地政学的目的は明らかにウクライナではなく、NATOやEUとの同居ルールを明確にすることだ 」と主張し、米国のシナリオを明確に否定している。モスクワでプーチン大統領と会談したマクロン氏は2/8、「プーチンから紛争をエスカレートさせないという誓約を得ることに成功した」、「私の目的は、ゲームを凍結し、エスカレーションを防ぎ、新しい展望を開くことだった…私にとってこの目的は達成された。」と述べている。

米英が「世界大戦」の瀬戸際にまでエスカレートさせだしたのは、こうしたモスクワとフランスとドイツとの間の対話を頓挫させ、挫折させ、弱体化させようとする明確な意図の産物でもあろう。それはまた、米英の政治的・経済的危機の明確な反映でもある。しかしそれは頓挫せざるを得ないし、させなければならないほど、危険極まりないものである。
(生駒 敬)

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