【投稿】菅前政権よりグダグダー岸田首相のコロナ・オミクロン株対策―「防疫」から「医療」への転換を図れ

【投稿】菅前政権よりグダグダー岸田首相のコロナ・オミクロン株対策―「防疫」から「医療」への転換を図れ

                             福井 杉本達也

1 菅政権下のコロナ対策担当者を復帰させる

2月9日付けの日経新聞は「政府は新型コロナウイルスワクチンの3回目接種加速に向け体制を整える。菅義偉政権時代に担当閣僚の河野太郎氏を支えた官僚を堀内詔子ワクチン相のチームに戻し始めた。堀内氏の実動部隊を強化し、首相官邸と省庁横断で連絡を円滑にする狙いがある。」と報じた。実は、現在のワクチン担当者は「10月に発足した岸田文雄政権はワクチン行政を本来担う厚生労働省を軸にする体制に戻した。」というのである。本来の行政の担当部門からすれば厚労省が行うのことが筋ではあるが、あまりというべきか、やっぱりというべきか、厚労省の担当部門が全く機能していないということを暴露したものである。堀内ワクチン相の国会答弁では、“目が泳いでいる”とか、官僚作成の答弁書をひたすら読んでいるとの指摘がなされていたが、厚労省担当部局の能力が全くないのでは堀内氏の“目が泳ぐ”のも仕方がない。

 

2 原則8か月という3回目ワクチン接種時期の大失敗

岸田政権での3回目ワクチン接種時期は当初11月までの段階では、2回目接種から原則8ケ月とし、最も早い医療従事者、次に高齢者から順次行っていくとしていた。それを、11月15日には自治体の判断で6カ月も容認するとした。方針転換したのは、海外で、接種後半年でワクチンの効果が低下し、ブレークスルー感染するとの報告が相次いだことが分かったことによる。高齢者は昨年6~7月頃までには多くの自治体で2回目の接種が終わっており、半年後とは2021年12月~2022年1月頃である。しかし、その後も厚労省は原則8カ月に固執した、2月9日の記者会見で、小池知事は、2021年の年末に、3回目の追加接種を、できるだけ早く始めるよう政府に求めたところ、「それはいかん。みんな足並みを揃えていくんだ」などと言われたとし、厚労省の方針が二転三転したことを明らかにした(FNN:2022.2.8)。結果、免疫が低下した時期がちょうど、オミクロン株の感染拡大期となり、2月上旬の段階でも、感染のピークは見えない。若者から学校・保育園に感染が拡大し、これが家庭を通じて、高齢者施設や病院に持ち込まれると、免疫力が低下した高齢者などが感染し重症化する恐れが強い。岸田首相は今頃になって「100万回接種」実現をと表明したが、3回目接種率5.9%(7日時点)はOECD38カ国中、最下位である。東大先端研の児玉龍彦教授は科学的根拠もなくワクチンの3回目接種・原則8カ月を強硬に唱えた厚労省の担当者は更迭すべきだとしている(「デモクラシータイムス」:2022.2.5)。

 

3 PCR検査の拡大を拒否し、医師が診断せず「みなし陽性」導入という医療崩壊

東京都の2月7日現在のコロナ検査の陽性率は40.1%となった。10人検査すれば4人が陽性ということである。上昌弘医療ガバナンス研究所理事長は「検査の体をなしていません。感染が急拡大し、かつ検査件数が圧倒的に不足しているからです。発表される新規感染者数は実態からは大きく乖離してしまっている。」(『ゲンダイ』2022.2.9)と指摘している。感染者数は発表される人数の数倍に及ぶと思われる。発熱外来もパンクし、検査キットも不足する中、症状が出た人でも重症化リスクの低い若者などは、PCR検査や医師の診察を受けることなく“陽性”と診断する「みなし陽性」を導入した(福井:2022.1.28)。「みなし陽性」を導入した自治体は少なくとも21都道府県に上る。これはどのような症状なのかという医師の診察などを受けずに自ら判断するもので完全なる医療崩壊である。「国民は病気になれば、医療から切り捨てられる」のである。まともな考えの持ち主ならば口が裂けてもこのようなことを口にはできまい。このような重大な事項を「医療現場逼迫、窮余の策」(福井:同上)などと、あたかもそれが正しいことのような見出しをつけて政府の方針を垂れ流すメディアは、もう報道の責任を完全に放棄したといってよい。

 

4 医療圧迫の元凶は厚労省の防疫に著しく偏ったコロナ政策

ついに「大阪府 コロナ 新たに1万1990人感染確認 過去未集計分7625人も」(NHK:2022.2.3)という目を疑うような見出しが躍った。あまりにも膨大な感染者の発生で、感染者の多くはほったらかし、PCR検査や濃厚接触者の追跡どころか、感染者の集計さえできないところまで追い込まれたといえる。維新の橋下―松井―吉村の悪政による大阪市の保健所機能を1か所に集中し、二重行政だとして府・市の検査機能を統合し、市立住吉病院などを廃止したつけが回ってきた結果ではあるが、これに対し、松井大阪市長は「マンパワー不足」と説明し、「100%対応せえと言われても、人材も含め持ってる資源の中では非常に厳しい」と開き直るしまつである。完全に行政の責任を放棄した態度である。

わだ内科クリニックの和田眞紀夫院長は「同じコロナウイルスを相手にしていながら、医療と防疫とでは月とすっぽんほど全く異なる視点でウイルスに対処する。まず対象としている相手は医療では一人の人間であって複数の人間をまとめ治療することなど決してないが、防疫は社会全体を対象としている。コロナ対策の柱であるワクチン、検査、治療薬にしても医療と防疫では全く違った見方をする。」「医療ではその個人の治療のために患者さんを入院させ、病気がよくなれば退院させるが、防疫では感染者を隔離するために感染者を入院させて、その人がほかの人に病気を移さなくなったどうかで退院を決める。すべての人に共通する入院基準とか退院基準などというものは医療の世界ではありえない」。「防疫は未知の新興感染症の侵入とまん延を防ぐために行われるものであり、コロナがすでに日本中で市中感染を起こしていることが明らかになった2年前にその役割を終えるべきものだった。今からでも遅くはない。第6波が収束したら直ちに行うべきことは、防疫に関わる人には退陣していただいて、根詰まりの原因となっている法律の整備に取り掛かることである。おかしなことにいつの間にか防疫の目的が医療の逼迫を回避することに置き代わっているのだが、皮肉なことにその防疫偏重のコロナ政策を続けていることがかえって医療を苦しめている」(医療ガバナンス学会・メールマガジン:2022.2.8)と書いている。各感染症病院に10床や20床の感染症病床を確保し、厚労省→感染研→保健所という戦前―戦後1980年頃までの結核の時代の隔離政策は、エボラ出血熱などの特殊な感染症には適用できるが、オミクロン株のような大規模な感染症には通用しない。もう防疫に特化した感染症対策は終わりにしなければならない。日本のすべての医療資源を活用し、ふつうの病気と同じように健康保険の下で一般医療機関で普通の検査・治療ができる体制の提供を工夫しなければならない。2歳児の実態も把握できず、社会防衛の観点のみから「2歳児にマスク」というばかげた提言しかできない“専門家”は即退陣すべきである。

カテゴリー: 医療・福祉, 新型コロナ関連, 杉本執筆 パーマリンク

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