【投稿】ウクライナ戦争を止めさせたくない米国(ネオコン)と中国の和平提案

【投稿】ウクライナ戦争を止めさせたくない米国(ネオコン)と中国の和平提案

                              福井 杉本達也

2月24日でロシアがウクライナに侵攻して1年となった。日経新聞は23日「ロシア、支配地5割失う」、「死傷者20万人規模」、「プーチン氏、戦果なく焦り」と書いた。しかし、この1年、日本のマスコミは全く事実を報道していない。人的にも弾薬も枯渇したウクライナ=NATOの敗北は必至の状況である。

1 ロシアを孤立させる試みは完全に失敗

ワシントン・ポスト紙は2月23日、「『西側諸国の外からよく見てみると、世界が一致団結しているとは言い難いことがわかる』と指摘した上で、『この紛争は、世界の分断と、急速に変化する世界秩序に対する米国の影響力の限界を明らかにしている』と報じている。また同紙は、『中国やイランなど、ロシア政府を支援するとみられるロシアの同盟国の間だけでなく、(ロシアの)プーチン大統領を孤立させようとする努力が失敗したことを示す十分な証拠がある』と伝えている。」(Sputnik:2023.2.23)。

また、米国のPEWの世論調査では、「対ウクライナ支援」が「あまりに多い」とするものが、2022年3月にはわずか7%であったものが、2022年9月には26%になった。これを共和党支持者だけに限ると、3月:9%が9月:40%にもなった。マージョリー・テイラー・グリーン 氏は、今月初めに列車の脱線事故が環境災害を引き起こしたオハイオ州を訪問しなかったバイデンを非難し、「『バイデン氏は大統領の日にオハイオ州東パレスチナに行かなかった。彼はNATO 非加盟国であるウクライナに行き、その指導者は俳優であり、現在、米軍に世界大戦を指揮しているようです。手遅れになる前に、このアメリカの最後の愚か者を弾劾しなければなりません。』」とツイートした(孫崎享:2023.2.23)。

2 ノルドストリーム爆破の犯人は米国とノルウェー

昨年9月26日のロシアのガスを欧州・ドイツに供給するパイプライン「ノルド・ストリーム」が爆破された。ベトナム戦争時のソンミ村虐殺報道でピューリッツア-賞を受賞した経歴の米国報道記者:シーモア・ハーシュは、2022年夏のNATO軍事演習「バルトップス」に参加した複数の米国人ダイバーらが「ノルド・ストリーム」の下部に爆破装置を設置し、それを3か月後にノルウェーが作動させたために起きたとするすっぱ抜き記事を表した。この破壊工作は、バイデン米大統領が国家安全保障チームと9カ月以上にわたって秘密裏に協議し、サリバン米大統領補佐官・国家安全保障担当が関与していたと断言した(Sputnik:2023.2.8)。「バイデンは、ドイツと西ヨーロッパがパイプラインを開くのを防ぎ、西ヨーロッパがNATOを支持し続け、明らかにロシアに対する代理戦争に武器を注ぎ込むことを確実にするために、政治的な目的で米国は破壊を行いました。」(シーモア・ハーシュ:ゴーイング・アンダーグラウンドでのインタビュー:RT:2023.2.23)とシーモア・ハーシュは述べている。

ノルドストリーム・パイプラインは二つの大陸を結びつけ、最終的に世界最大の自由貿易地域になる経済コモンズをもたらす重要な動脈だったのでノルドストリームがアメリカによる攻撃の主要標的になったのはそのためだ。これがワシントンが最も恐れていたことで、それがバイデンと仲間がドイツとロシア間の経済関係強化を防ぐためにそうした必死の措置を講じた理由だ(マイク・ホイットニー『マスコミに乗らない海外記事』:2023.2.24)。

ところが、日本の主要マスコミはこの重大事実を全く報道しない。『現代ビジネス』が『「ノルドストリーム爆破」は米国の仕業だった…!? 新説急浮上でバイデン政権に噴出するいくつもの疑惑』と報道するが、数少ない(2023.2.14)。いかに日本のマスコミが米軍産複合体に抑えられているかを示している。

3 ウクライナ政権内部の分裂・粛清

1月14日には、ドニプロの高層住宅にウクライナ軍の防空ミサイルが着弾し、数十名の死者が出た責任を取らされる形で、17日、アレストビッチ大統領府長官顧問が辞意を表明し、大統領府は承認した(毎日:2023.1.17)。アストレビッチは辞任後「戦争におけるウクライナの勝利は、もはや保証されていないように見える。…戦争に勝つことが保証されていると誰もが思っているとしたら、それは非常に異なっています。」「ウクライナ当局はロシアとの軍事衝突に勝つチャンスだけでなく、内部の政治的なチャンスも逃した」とツイートした(2023.2.22)。また、18日にはキエフ近郊で「内務省高官を乗せたヘリコプターが墜落した。モナステイルスキ内相を含む少なくとも14人が死亡」し、内務省の高官が全滅した(日経:2023.1.19)。2月6日のBloombergは「レズニコフ国防相が任を解かれ、後任に国防省情報総局長のキリロ・ブダノフ氏が就任」との記事を流した。共同通信は「ウクライナでは軍を巡る汚職疑惑が報じられており、引責の司能性がある」と報道した(共同=福井:2023.2.7)。さらに11日には、CNNはゼレンスキー大統領は国家親衛隊のルスラン・ジュバ副司令官を解任したと報道した。また、1月末に大統領府のティモシェンコ副長官が辞任を発表したのに続いて、国防次官、副検事総長、地域開発次官らが次々と解任されたり、辞任したりしていると報じている。なお、CNNは「レズニコウ国防相が更迭されるとの情報もあるが、議会幹部の一人は先日、当面交代はないと述べた。」と報道し、その後、公の場に姿を現した。ウクライナ政権の内部は分裂・崩壊状態にある。

4 中国の気球を巡っての米中の緊張

オースティン米国防長官は、2月4日、米軍が南部サウスカロライナ州沖の大西洋上空で中国の偵察気球を撃墜したと発表した。中国はコントロール不能の研究用の気球が米国内に入っただけだと反論した。王毅氏は訪ロに先立って、ドイツ南部ミュンヘンでプリンケン米国務長官と会談した。王氏は「米国の気球撃墜を非難し『米国が事態を拡大させるなら、中国はとことん相手をする。すべての結果は米国が負うことになる』と発言した。」(日経:2023.2.22)。元米中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデンは、米国およびカナダ上空で撃墜された飛行物体はノルトストリーム爆破の調査から目をそらすために作られたものだとの考えを示した(Sputnik:2023.2.14)。

5 バイデンのキエフ訪問

日経のワルシャワ支局の中村亮記者は、バイデン大統領は2月20のウクライナのキエフを訪問について、数か月前から極秘に計画し、「不測の事態への緊急対応計画を練り、17日に訪問を決断した。ロシア側に事前通告したが訪問中に防空サイレンが鳴り響き、安全へのリスクを物語った」。「鉄道に乗り換えて暗闇の中を約10時間かけてキーウ」に向かった(日経:同上)と書いた。米国大統領が10時間も列車で移動するというのは異例中の異例である。ウクライナ上空の制空権がロシアに握られている現在、安全を保障するのはロシア以外にはない。バイデン大統領がキエフでどう発言しようが、ロシアの手の内にある猿回しの猿以上のものではない。

 

6 「NATOの弾薬は尽きた」とストルテンベルグNATO事務総長

ストルテンベルグNATO事務総長は2月18日、ミュンヘン安全保障会議でのCNNの取材に対して、「ロシアはこれまでのところウクライナよりも多くの弾薬と人員を最前線にもたらすことができたと述べ」「ウクライナの弾薬消費量は『NATOの総生産量よりも多い』と彼は続け、この状況は『継続できない』と付け加えた」。「昨年の秋以来、ウクライナでの紛争は『消耗戦争に移行した』とストルテンベルグ氏は述べ、『消耗戦争は兵站の戦いである。物資、スペアパーツ、弾薬、燃料など、どうすれば十分なものを最前線に届けることができますか。』」と語ったが(RT:2023.2.23 自動翻訳)、逆に問えば届けられるはずもない。NATOの敗北は必至である。

7 中国の和平交渉の動きとウクライナの解体

中国の王毅氏は18日にウクライナのクレバ外相と会談した。「『中国は常に和平交渉の促進を堅持している』と語りかけた。その後、24日に、中国外務省はウクライナ情勢を巡る『政治解決案』を公表した。①すべての国の主権と領土保全の尊重、②冷戦精神の放棄、③敵対行為をやめ、戦争を止める、④対話と交渉、⑤人道問題、⑥捕虜交換・民間人と捕虜の保護、⑦原発に対する武力攻撃に反対、⑧核兵器の使用反対、⑨穀物の輸送に関する合意の遵守、⑩一方的制裁の乱用に同意しない、⑪生産とサプライチェーンの安定、⑫戦後復興の支援 の12項目を提案した。これを受けて、AFPは「ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻開始から1年となった24日、中国の習近平国家主席と会談する予定だと明らかにした。」と報道した(AFP=時事:2023.2.24)。

しかし、戦闘継続が利益となる米国の軍産複合体勢力は中国の動きを妨害しようとしている。先の気球撃墜事件もその一環であるが、2月18日、ブリンケン国務長官は「中国がロシアに殺傷力のある武器を供与する可能性に懸念を示し、会談は平行線だった。」(日経:同上)と伝えられた。遠藤誉氏は「ウクライナの国民を殺戮する武器支援を中国がロシアに提供しているとなれば、絶対に王毅がミュンヘン会議で習近平の考え方として提唱した『和平論』には乗らないだろう。つまり、ブリンケンの発言は、ゼレンスキーが習近平が唱える『和平論』に乗らないようにすることが目的だったにちがいない。」との中国主導の和平交渉を妨害する謀略と分析した(Yahoo:2023.2.23)。「バイデン大統領はABCテレビが24日夜、放送したインタビューの中で、中国が24日に発表した、ロシアとウクライナに対話と停戦を呼びかける文書について『プーチン氏が称賛している提案だ。そのどこに見るべき中身があるのか?中国の提案が実行されたとして、ロシア以外の誰も利するようには見えない』と述べ、検討に値しないとの考え」だと述べた(NHK:2023.2.25)。とにかく戦争を終わらせないことを考えている。

「数十人のポーランド軍部隊がウクライナで何ヶ月も地雷処理で活動し、部隊は現在帰国していると、ポーランドの国家安全保障局の責任者であるヤツェク・シエヴィエラは水曜日に述べた。」(RT:2023.2.23)と報道された。形上の外国人傭兵としてではない正規軍としての本格的な介入である。ポーランドのウクライナ支援の規模は国家能力を超えている。支援諸国中その規模は5番目であるが、上位4カ国の国力と比べれば、きわめて無理を生じている。ポーランドがかつての支配地域であった西ウクライナを分割しようとすれば、戦線がウクライナから東ヨーロッパに拡大する可能性もある。早く停戦に持ち込まねばならない。

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 平和, 杉本執筆 パーマリンク

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