<<「先制攻撃」を自認>>
6/13早朝、イスラエルはイランを攻撃し、首都テヘランをはじめとするイラン各地を複数の空爆で標的とし、対イラン戦争を劇的に拡大させ、中東戦争、世界戦争、核戦争への挑発路線を公然と開始した。
アルジャジーラの報道によると、イスラエル軍はイランの核施設だけでなく、イラン軍事指導部と軍事能力をも標的とし、少なくとも5波にわたる空爆を実施した。空爆に加え、イスラエルの対外諜報機関モサドの工作員がイラン領内で暗殺や破壊工作をも行ったと報じられている。イラン国営テレビは、イラン革命防衛隊のホセイン・サラミ司令官を含む複数の高官が死亡したと報じている。
イスラエルの空爆は、首都テヘラン、ナタンズ、エスファハーン、アラク、タブリーズ、ケルマーンシャーなどの都市を標的とし、イランのテレビ報道では、爆撃された高層マンションが映し出され、女性や子供を含む民間人が空爆で死亡したと報じられている。加えて憂慮されるのは、イランの主要な核濃縮施設があるナタンズへの攻撃は、放射能汚染への懸念を引き起こしていることである。
イスラエルのネタニヤフ首相は、「ライジング・ライオン作戦」と名付けられたこの布告、通告なしの一方的な攻撃を、「先制攻撃」と表現、自認し、イランの核兵器開発を阻止する必要があると主張、「必要な日数だけ」攻撃を続けると述べ、この攻撃によってイランのナタンツにある主要なウラン濃縮施設、兵器開発に携わるイランの核科学者、そしてイランの弾道ミサイル計画が攻撃されたと主張、イランによる報復の可能性に備え、イスラエル国内に非常事態を宣言している。イスラエルは領空を封鎖し、テルアビブのベン・グリオン国際空港は航空機の発着を停止している。
(なお、イランへのこの攻撃は、イランが核兵器を開発しているという偽旗、非現実によって正当化されているが、アメリカの情報機関は、イランが核兵器を開発していないことを確認している。核拡散防止条約(NPT)の署名国であるイランは核兵器開発が認められていないが、同条約はイランの民生用核開発計画の策定を認めているのである。)
6/13、イランの最高指導者、アヤトラ・セイイド・アリ・ハメネイ師は、「本日未明、シオニスト政権は我々の愛する国で、汚らわしく血に染まった犯罪行為に手を染め、住宅地を標的にすることで、これまで以上にその卑劣な本性を露呈した」と述べ、「今回の犯罪によって、シオニスト政権は自らに苦く苦痛に満ちた運命を準備した。そして、間違いなくその運命に直面することとなるだろう」と報復攻撃を行うことを明らかにしている。
<<「今すぐ武器禁輸を!」>>
問題は、この戦争挑発・拡大路線が、米トランプ政権と、どのように協調、調整されてきたかであるが、トランプ大統領自身が、6/12、記者団に対し、イスラエルによる攻撃が「差し迫っている」とは言いたくないが、「起こり得る」と述べ、しかも中東各国の米大使館および領事館からの人員撤退を発表した直後に、この「先制攻撃」が実施されていることである。事前の協議、明らかな協調が見え隠れしているのである。
マルコ・ルビオ国務長官は、「米国は攻撃に関与していない」と述べている。が同時に、「イスラエルは、今回の行動は自国の自衛に必要だと考えていると我々に伝えてきた」という。
しかし、タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、イスラエル軍は米国と行動を調整している、緊密に連携していることを明らかにしている。米国当局は、表面上は、今回の攻撃への関与を否定しているものの、イスラエルがイランによる報復に応じて、行動の調整どころか米軍自身が関与し、戦争拡大に巻き込まれるリスクが目前に迫っている、あるいはその事態を容認している可能性が大なのである。
米国の進歩派議員と平和、人権擁護団体は、イスラエルがイランへの一連の攻撃を開始したことを受け、直ちに米国の無条件の軍事支援と外交支援の停止を要求している。
民主党のラシダ・トレイブ下院議員は、「ネタニヤフ氏に我が国をイランとの戦争に引きずり込ませるわけにはいかない」、「我が国政府は、このならず者のような大量虐殺政権への資金提供と支援を停止しなければならない」と主張している。イルハン・オマル下院議員(民主党)も、「イランとの協議が再開されようとしていた矢先に、ネタニヤフ首相は攻撃を開始し、非常事態を宣言した。彼はアメリカ国民が望まない戦争を誘発しているのだ」、「自らの死と破壊というアジェンダを追求する外国の指導者によって、我々の意志に反して、またしても紛争に巻き込まれるべきではない」と述べている。
ワシントンD.C.のホワイトハウス前で緊急抗議活動を行った平和団体「コードピンク」は、「イスラエルによるイランへの無謀な攻撃を強く非難する。この攻撃は、壊滅的な戦争を引き起こすリスクがある」、「この危険なエスカレーションは、中東全域で数百万人の命を脅かしている」、「米国はこの違法な侵略行為を支持し、容認し続けるべきではない」と主張。コードピンクの共同創設者メデア・ベンジャミン氏は、「トランプ氏は自らを平和の大統領と称している。彼はこのような事態が起こることを予期していたにもかかわらず、傍観していた。これはアメリカ国民の意志とは全く相容れない」と述べ、「他に選択肢はない」、「今すぐ武器禁輸を!」と強調している。
国際社会がますます「ジェノサイド」と見なすパレスチナ・ガザへの戦争を遂行するイスラエルを、トランプ政権があくまでも強く支持し、軍事援助を続行している現実こそが、イスラエルの戦争挑発・拡大と密接不可分なのである。しかし、その危険なリスクは、トランプ政権自体の矛盾をさらに拡大させることは間違いがない。
(生駒 敬)