【投稿】トランプ・マスク、蜜月から破局へ

<<「史上最も愚かな内戦」>>
6/5、「大きくて美しい法案」(BBB : Big Beautiful Bill )、などという人を欺くような連邦税・歳出法案をめぐるマスク氏とトランプ氏の対立は、単なる内部対立から公然とした激しい応酬、ののしりあいへと発展するに至った。
この法案は、メディケイド(低所得者向け医療保険)、補足栄養支援プログラム(SNAP)、連邦学生援助などの社会保障プログラムを削減し、逆に富裕層への減税延長を推進するもので、米議会予算局(CBO)によると、法案は4兆ドル超の減税と新たな歳出を組み合わせ、結果として2.4兆ドルの財政赤字を生み出し、2034年までに1090万人のアメリカ人が健康保険に加入できなくなると予測されると報告されている。
マスク氏は、この法案に強く反対し、「赤字を大幅に増やし、債務上限を5兆ドルも引き上げるような法案ではなく、新しい歳出法案を出すべきだ」と自らのソーシャルメディアXに投稿、「ビッグ・アグリー法案(大きく醜い法案)は2.5兆ドルの財政赤字を生み出す」、「忌まわしい忌まわしいもの」と厳しく批判。

 あくまでもこの法案を通したいトランプ氏は、マスク氏に「非常に失望した」とあからさまな不満を表明、EV自動車テスラのCEOであるマスク氏が「ビッグ・ビューティフル・ビル」に反対したのは、EV税額控除の削減が原因だからだ、彼は「ただ狂った」のだと切り返し、マスク氏と連邦政府との契約を解除すると脅すに至った。
おまけに、トランプ氏は、イーロン・マスクは「トランプ錯乱症候群」(“Trump Derangement Syndrome.”)にかかっているとまで示唆した。トランプ氏自身が、「マスク錯乱症候群」(“TMusk Derangement Syndrome.”)にかかり、マスク氏の南ア「白人ジェノサイド」というデマゴーグで大恥をかいたばかりであるが、自らについては何の反省もない。

6/6、さらにトランプ氏は「予算を節約する一番簡単な方法、何十億ドルも節約できる方法は、イーロンへの政府の補助金と契約を打ち切ることだ。バイデンがそうしないのが、いつも不思議だったよ!」とTruth Socialに投稿。マスク氏がCEOを務めるスペースXなどに対する政府契約を打ち切るとの脅しであった。
これに対し、マスク氏は「どうぞやってくださいよ。楽しませてくださいよ…」とXで応戦。
ここで、マスク氏は大統領を「恩知らず」と非難し、「私がいなければ、トランプは選挙に負け、民主党が下院を掌握し、共和党は上院で51対49の勢力になっていただろう…なんと恩知らずなことだろう」と、誰のおかげで大統領になれたのだと言わんばかりのののしりあいへと昇華。
さらにマスク氏は、「本当に大きな爆弾」を投下した。「本当に大きな爆弾を投下する時が来ました。@realDonaldTrump はエプスタインのファイルに含まれています。それが、公開されていない本当の理由です。」と暴露したのである。
トランプ大統領がいわゆる「エプスタイン・ファイル」に名前の挙がっていると非難したのである。この文書は、ジェフリー・エプスタイン氏の性的人身売買疑惑ネットワークに関与した可能性のある人物を明らかにすると考えられており、トランプ氏がエプスタインと近い関係だったことは知られており、同じ飛行機に乗っていたことを示す記録が存在することも報道されている。トランプ氏にとっては、公開されてはならない「爆弾」であろう。

マスク氏は「この投稿は今後のためにとっておいてください」とマスク氏は付け加えた。「真実は明らかになります」とツィートしている。

<<マスク氏が圧勝?>>
マスク氏はまた、2億2000万人のフォロワーに向けて「アメリカで、中間層の80%を真に代表する新しい政党を作るべき時が来たか?」というアンケート調査を開始し、4時間以内に300万人近くのユーザーが回答し、約81%が「賛

成」票を集めている。

「トランプはエプスタインのファイルに入っている」とマスク氏が非難、右翼億万長者同士の確執が爆発、と報じる CommonDreams は、「これはすごい。史上最も愚かな内戦を経験することになりそうだ」という発言を紹介している。。

6/5の米国株式市場では、トランプ氏とマスク氏の確執でテスラが14%急落。
同社株は過去5営業日のうち4日下落。両者の応酬を始めてから、テスラは約1500億ドルの損失を被っている。
そしてもちろん、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの株価も、8%下落し、大統領は約2億200万ドルの損失である。トランプ氏の収益にさらに大きな打撃を与えたのは、公式トランプ・ミームコインが約10%下落し、9億ドル近くの損失を被った可能性がある、と報じられている。

かくして、トランプ大統領とイーロン・マスク氏は、非常に醜悪で、公然とした破局の真っ只中にある。
だが、6/6のCNNは、【分析】トランプ米大統領と交わした激論、マスク氏が圧勝? SNSの威力見せつけ と報じている。「マスク氏は、自身のXアカウントを政治的武器のように利用して、矢継ぎ早にトランプ大統領を攻撃した。トランプ氏も、はるかに規模が小さい自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で反撃を試みたものの、真夜中を含めて1日の投稿が100回を超すこともあるSNS中毒の大物には太刀打ちできなかった。」と言うのである。「マスク氏の投稿は瞬時に拡散する。トランプ氏のトゥルース・ソーシャルの実質ユーザーが630万とされるのに対し、マスク氏のXは推定6億に上る。」注目される規模が桁違いなのである。もちろん、とっておきのけた違いは、現職の大統領であるという事実であるが、その政治的説得力に根本的欠陥があれば、対抗できない、であろう。第二次トランプ政権は、発足してまだ半年もたたないうちに、根本的な政治的危機に瀕している、と言えよう。

(生駒 敬)

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