<<「素晴らしいアメリカの装備」を使用した>>
内外から強い批判と非難を浴びているイスラエルの対イラン奇襲攻撃を、トランプ大統領は、イランの今回の作戦は「素晴らしい」ものだったと礼賛している。
6/13、米ABC Newsのジョナサン・カール記者は、私はトランプ大統領と話し、イスラエルによるイラン攻撃について尋ねたところ、彼の答えはこうでした。「素晴らしい攻撃だったと思う。我々は彼らにチャンスを与えたが、彼らはそれを逃した。彼らは大きな打撃を受けた。非常に大きな打撃だ。我々が受けられるであろう攻撃と同じくらいの打撃を受けた。そして、さらに大きな打撃を受けるだろう。もっとずっと多くの攻撃が、これから起こるだろう。」と。
さらに、アクシオス(AXIOS)は、同じく6/13、実はイスラエルが奇襲攻撃を準備している間、トランプ氏は米・イラン核協議交渉で、「公の場ではイスラエルの攻撃に反対しているふりをしていただけで、個人的には反対を表明していなかった」と内幕を暴露し、「イランに攻撃は差し迫っていないと納得させ、イスラエルの攻撃対象リストに載っているイラン人が新たな場所に移動しないようにすること」であったことまで報じている。つまり、米・イランの交渉は、「欺瞞のために仕組まれたもの」であり、トランプ大統領とネタニヤフ首相は非公式に対イラン攻撃を調整していたことまで、明らかにしている。
AXIOSのバラク・ラビッド氏は、さらに重大な事実を明らかにしている。
* トランプ大統領は、「昨日は重要な日だった」と述べ、イスラエルが攻撃の際に「素晴らしいアメリカの装備」を使用したことを指摘した。
* ネタニヤフ首相は、自身と最高顧問のロン・ダーマー氏が攻撃に先立ち、トランプ大統領とそのチームと何度も電話会談や会合を行い、調整していた。
* 「米国の立場は米国に委ねる」とネタニヤフ首相は述べ、トランプ政権は攻撃計画を事前に知っていたし、「大統領には、奇襲こそが成功の鍵だ」と伝えてい。
* さらに注目すべき今後の緊切の課題として、イランの核開発計画を完全に壊滅させるためには、イスラエルは山腹に建設されたフォルドゥの地下核施設を破壊する必要がある。しかし、イスラエルにはこの施設を破壊するのに必要な巨大なバンカーバスターが不足している。そのため、イスラエル当局は米国がフォルドゥ破壊作戦に参加することを期待しているという、ことまで明らかにしている。
<<「米国から明確なゴーサインがあった」>>
これらの報道が明らかにしていることは、イスラエル当局は、「トランプ大統領がイラン攻撃を承認した」という厳然たる事実関係を明示し、「米国から明確なゴーサインがあった」ことを明らかにしている。
そしてトランプ氏自身も、「もちろん我々はイスラエルを支持している。誰も支持したことのないほど支持」していると表明している。
数ヶ月にわたって行われてきた米・イラン核協議は、合意が可能であるかのような装いをばらまきながら、合意を意図的に引き延ばし、実質的には「イスラエルに最大限の奇襲を仕掛け、最大限の損害を与える機会」を与えるための、「米イスラエル共同のイラン攻撃」作戦であった、と言えよう。
トランプ大統領は、それでもAxiosに「イスラエルの攻撃はイラ
ンとの合意形成に役立つ可能性がある」、イランに対し、「何も残らなくなる前に」核協議に合意するよう促す、などと発言しているが、
* 交渉相手としてのアメリカの信頼性は完全に失われた、という厳しい現実はもはや取り返せるものではない。嘘つきディーラーなど、誰も相手にしたくないし、相手にしないであろう。
* そして同時に、イスラエルは実際にはトランプ大統領の承認があろうがなかろうが、アメリカを中東戦争の拡大に引きずり込むことに最も重大な利害関係、ネタニヤフ政権存続の利害関係を持って行動しており、
* トランプ氏はそれを見越して、今後のイスラエルによる対イラン攻撃は「一段と残忍なものになる」と警告し、ネタニヤフの戦争拡大路線を放置している。それを抑止する姿勢などみじんも見せていないことである。
* それは同時に、トランプ氏は自らの状況をコントロールしていると見せかけたい欲求から、実際上はネタニヤフ政権にひきずりこまれている現実を覆い隠すために、虚勢を張り、ウソを平気でばらまき、結果として自己を追い詰めている現実の裏返しでもある。
問題は、こうした厳然たる事実関係を前提に、危険な戦争挑発路線を孤立させ、破綻させる、広範な勢力の結集が要請されている。
(生駒 敬)