【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理

【投稿】東電の「現金が底をつく」―原発再稼働の論理

福井 杉本達也

1 「倒産企業」東電の資金繰り難で柏崎刈羽原発再稼働

東電はもうすぐ「現金が底をつく」と日経新聞は1月5日付で報道した。元々、2011年3月の福島第一原発事故以降、東電は倒産企業である。それを、政府や各電力会社の持ち寄りによる財政支援と電気料金への転嫁などの「点滴」により、無理矢理・形式上生きながらえてきたゾンビ企業に過ぎない。しかし、そのゾンビ企業も、「点滴」も入らないほど衰弱しており、明日の現金(キャッシュフロー)さえ尽きかけているのが現状である。いつ不渡りを出してもおかしくない。政府もこれ以上東電を支える財政余力はない。また、LNGなど輸入エネルギー物価の高騰によりこれ以上電力料金に負担をかけることもできない。そこで、政府は是が非でも柏崎刈羽原発を再稼働をせよと命じ、東電は柏崎刈羽原発6号機を1月20日に再稼働させると公表したのである(日経:2025.12.23)。

福島第一事故対策もままならぬ状態で、「事故後初めて原発を再稼働させる。柏崎刈羽原発ではテロ対策の不備が相次いで発覚。安全性確保や避難計画の実効性に対する住民の懸念は根強い」(福井:2025.12.23)。11月6日に新潟県は柏崎刈羽原発の再稼働に関する県民の意識調査結果を公表したが、「原発から半径30キロ圏の9市町村別の集計で、立地する刈羽村を除く8市町では、再稼働の条件が現状で整っていないとの回答が53~64%と多数を占めた」と報道された(福井:2025.11.7)。こうしたことを全く無視して、11月21日、花角英世新潟県知事は、6,7号機の再稼働を容認するとした。これは、政府の強力な再稼働圧力と、東電が柏崎刈羽原発1、2号機を廃炉とし、「新潟県に1000億円規模の資金も拠出する」(日経:2025.10,17)ことで、新潟県の買収を図ったからである。

これに便乗しておこぼれを預かろうと、北海道の鈴木知事は泊原発3号機の再稼働について、原子力規制委による審査合格からわずか4カ月で地元同意に応じた。「二番煎じと思われでも構わないと腹を決め、流れに乗った」のである(福井:2025.12.11)。

 

2 経済性の全くない原発

日本では、原子力発電は「安価な電力」であるとされている。電力会社は止まったままでは莫大な不良資産に過ぎない原子力発電を再稼働したがる。そこには、国民には見えない形で莫大な国家資金が流し込まれている。電力会社は国家資金によって利益が保証され、実際の原価を大きく割り込んだ発電価格で販売を行っている。将来的な廃炉や高レベル放射性廃棄物処理などの管理費も免除される。これは市場経済ではない。原子力経済という全く別の原理の閉鎖市場が動いている。

 

3 原発は脱炭素には貢献しない

政府は2025年8月に再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電力の発電所の近くに、半導体関連などの産業を集める「GX戦略地域」を創設すると表明した。風力・太陽光などの再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電力を使う企業を対象に、先進技術への設備投資の支援に乗り出すという構想だが(日経:2025.10.4)、原子力を脱炭素というのは詐欺も甚だしい。

化石燃料にしても、鉱物を採掘するために工業的なエネルギーの投入が必要である。したがって、採掘された化石燃料の持つ熱量の一部は自家消費される。原子炉燃料(5%濃縮の6フッ化ウラン(UF₆))を得るために投入されるエネルギーは電力であり、原子炉の熱出力は核分裂による高温蒸気であり、高温蒸気によって発電機のタービンを回して電力を取り出している。高価な電力を投入して、核分裂熱を取り出している。大量の電力を投入して別の形態の熱を得るためエネルギー的価値は低下している。近藤邦明氏の計算によれば火力発電の熱出力は投入した電力の熱量の3倍程度と考えられる。この場合、火力発電所で投入された化石燃料に対する235U濃度5%のエネルギー産出比は2.4/3=0.8<1.0となる(「環境問題を考える」2025.10.7)。ウラン燃料の製造は化石燃料を浪費している。原発は「化石燃料由来の電力」を大量に消費して燃料を準備する。結果、全体のエネルギー効率では火力発電より劣る。エネルギー供給技術としての合理性は存在しない。

 

4 ゾンビ企業=東電は解体すべき

Wikipediaの説明によれば、東京電力ホールディングスは「福島第一原子力発電所事故の復旧および損害賠償のために、日本国政府による公的資金が注入され、認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が議決権の過半数超(潜在的には3分の2超)を有する大株主となっている。同機構は実質的に国の機関であり、当社は同機構を介して国有企業化され、日本国政府の管理下にある」「同機構による東京電力への出資金(1兆円の優先株引き受け)や、10兆円強におよぶ資金援助の原資は、日本国政府が交付もしくは日本国政府保証により同機構が借り入れたものであり、同機構は管理運営・財政において実質的に国の機関である。したがって、東京電力は同機構を介して半国有化され、日本国政府の管理下にある」。東電は、2011年11月以降、「機構(実質は日本国政府)より、毎月数百億から数千億円規模の資金援助を受けており、2024年度末現在で累計13兆4058億円に達している。当社は機構からの交付資金を特別利益として会計処理しており、交付された資金と同額を特別損失として賠償金に充てている。」。「これにより、当社は損益計算書上の赤字決算と貸借対照表上の債務超過を回避」していたのだが、このスキームが破綻しかかっている。

これは、水俣病の補償のために原因企業であるチッソを存続させたスキームを踏襲したもので、菅直人民主党政権下—枝野幸男官房長官―海江田万里経産相時代に作られたが、水俣病とは規模も社会的影響も解決の不可能さも全く異なる。政府の責任逃れの策であった(「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」(2011.5.13閣議決定)。無理矢理、福島第一原発の廃炉ロードマップ作成し30~40年と決めているが、全くの絵に描いた餅であり、いったいいくらかかるのか、本当にできるかも明らかではない。というか廃炉は全く現実的ではない。原発事故補償・廃炉費用など、年間に兆単位の金がかかる。民間企業のレベルの話ではない。国家予算にも大きな負担がかかっている。いくら、柏崎刈羽原発を再稼働しても、ゾンビ企業=東電の近々の破綻はまぬかれない。もうこれ以上国民を誤魔化すことは諦めて、経産省はまともなスキームを発表すべきである。

立憲民主党の枝野幸男元代表は12月20日の講演で「古い原子炉を廃炉にしてリプレースし、最新鋭にした方が安全性は高まる」と主張したが(福井:2025.12.29)どこに反省の弁はあるのであろうか。

カテゴリー: 原発・原子力, 杉本執筆 パーマリンク