【投稿】電気料金を横領して、知らぬ存ぜぬを決め込む関電の腐敗構造

【投稿】電気料金を横領して、知らぬ存ぜぬを決め込む関電の腐敗構造
福井 杉本達也

1 3億2千万円もの金をポケットに入れた関電の役員
関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役森山栄治氏(今年3月に90歳で死亡)から金品を受領していた問題で、岩根茂樹社長(66)と八木誠会長(69)は10月2日、大阪市で記者会見を開き、昨年9月11日作成の調査報告書を公表した。受領した金品の総額は3億1845万円相当で、現金のほかスーツ券や金貨、小判型の金、米ドルなどもあった。最多は原子力事業本部(福井県美浜町)で本部長代理を務める鈴木聡常務執行役員の1億2367万円で、元本部長の豊松秀己元副社長の1億1057万円が続いた。また、森山氏はこの他、福井県幹部職員にも贈答品を送っていたとされる(福井:2019.10.3)。この金の出どころは森山氏が顧問を務めていた高浜町にある建設会社の吉田開発であり、吉田開発は関電から工事を請け負っており、電気料金の一部が吉田開発から森山元助役を通して発注元の経営者個人の懐に転がり込むという「資金環流」の構図が明らかとなった。ことの発端は、金沢国税局が昨年1月、関電の高浜原発や大飯原発の関連工事を請け負う吉田開発を税務調査したところ、この会社から森山氏に工事受注の手数料として約3億円が流れていたことが判明。さらに森山氏から2017年までの7年間、関電の八木誠会長や岩根茂樹社長ら役員ら6人に計約1億8000万円の資金提供が確認された。税務当局の調べに対し、役員らのうち4人は森山氏へ資金返却し、修正申告。森山氏も申告漏れを指摘され、追徴課税に応じたという。また、吉田開発から直接、関電の役員への金品が提供されていたことも明らかとなっており、今後、調査が進めば新たなルートが浮上してくるかもしれない。高浜原発の工事受注に絡んで地元の有力者に巨額のカネが渡り、一部が関電幹部に還流していたのが事実であれば言語道断である。工事発注や資金提供などで関電側の行為が関連していれば取締役の収賄罪が適用される可能性もある(郷原信郎弁護士)。

2 工事原価も利益も含まれる「総括原価方式」の電力会社の役員の横領
周知のように電気料金は「総括原価方式」と呼ばれ、必要であると見込まれる費用に利潤を加えた額(総原価等)と電気料金の収入が等しくなるよう設定されている。当然ながらここには吉田開発に発注した工事費も役員の報酬や職員の人件費も含まれる。また、原発の立地が困難だとして、立地市町村に交付される財源となる電源開発促進税や使用済燃料再処理費用なども含まれている。今回、吉田開発への税務調査で指摘されたことは、会社の帳簿から3億円以上の金が余っていたということであり、これは、関電が吉田開発への工事発注は競争しない1社のみの「特命発注」とし、材料費・工事費用や人件費を支払い、会社の儲けを計上しても、さらに余分な金額を予め工事金額に上乗せしていたと国税局が認定したということである。その金がどこへ行ったかを調査したところ、森山氏に渡ったとして、森山氏は脱税で修正申告するが、さらに森山氏から関電役員に渡っていたということで、当初の発注の金が関電役員に還流するという会社法上も電気事業法上も倫理的にも許されない行為が堂々と何十年にもわたり積み重ねられてきていたということである。税務調査が入ってすぐの時期に1億6千万円ほどは森山氏返したとしているが、税務調査で遡れるのは7年前までである。当然、それ以前の金は役員のポケットに収まっている。菓子箱の下に「小判」という「越後屋~お主も悪よのう・・・いえいえ、お代官様ほどでは」という時代劇の「水戸黄門」そのものの場面が繰り返されていたのである。

3 会社の経営者としての体をなさない関電社長・会長の記者会見
9月27日の記者会見での岩根社長の発言は、受け取ったカネについて「一時的に預かっていたが、一般的な儀礼の範囲内のもの以外は全て返却した」「厳しい態度で拒まれた。関係悪化を恐れた」などと釈明したが、修正申告をしながら「預かっていた」などと抜け抜けと言えたものである。さらに輪をかけて「一時的に各個人の管理下で、返却の機会をうかがいながら保管していた」などと言い訳にもならぬ言い訳をしたが、「個人の管理下」でどうして管理ができるのか。金品を受け取った時点でこうした釈明は成り立たない。しかも、岩根社長は1年以上も前に調査が終わっているはずの社内調査委員会の報告についての記者の質問に「個人情報だから」とか「答えられない」とか繰り返し、全く決定権のないような答弁に終始した。このような経営者が動かしている原発とな何ぞやと言わなけらばならない。きわめて危険極まりない経営体制である。

4 森山氏は資金洗浄(マネーロンダリング)の「通帳」に過ぎない
関電は森山氏を資金還流のための「通帳」として利用していたのである。吉田開発から直接受け取ると、今回のように国税局が税務調査に入ったりするとすぐ金の流れが分かってしまう。そこで、もう1段森山氏をかませて、現金を商品券や金塊や外貨の形に変換し、就任祝い・中元・歳暮という形で還流させたのである。現金を手元にそのまま置いておくのは不安である。通帳に入れると税務調査ですぐに足がつく。金地金は店頭で200万円を超えて売買する場合には税務署に支払調書を提出することになっているが、小判や金貨のようなものは保有していても税務署に知られない、しかも換金性が高い、小分けに分割しやすい等々のメリットが大きい。やましい金をどこかでマネーロンダリングするには地元で顔が利き、原発のイロハからわかる森山氏はうってつけだったのである。「通帳」としての役割だったからこそ、森山氏は関電役員の誰に何を・いつ・いくら渡してきたかを几帳面に記入していたのである。それを国税局の調査で持っていかれてしまったので、関電として自白せざるを無くなったのである。

5 故人の森山氏を「極悪人」として自らの犯罪から目を逸らそうとする関電の人権無視
関電の社内調査報告書(2018.9.11)では、森山氏の人物像を「昭和50年代に、高浜発電所3,4号機増設の誘致や地域のとりまとめ等について」多大な協力を受けたとしつつ、そのすぐ後に「些細なことで急に怒り出し、長時間にわたって叱責・激昂することが多々あるなど、感情の起伏が大きく対応が非常に難しい人物」とし、「社内では過去の伝聞情報として、森山氏からの圧力に耐えかねて、対応者の中には、うつ病になった人」がいたり、「『お前の家にダンプを突っ込ませる』などといった発言があった。」「『お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?』とすごまれた」「その対応者は身の危険もあることから経緯を書いた遺書を創って貸金庫に預けていた」などとの伝聞を事細かく書き、森山氏が一方的極悪人であり、森山氏に「脅されたから」「一時的に保管していた」などと、あたかも関電は被害者であるかのような報告書をマスコミ各社に渡している。読むにつけ非常に後味の悪い、腹の立つ文章である。それをそのまま各マスコミは記事にしている。
しかし、これは森山氏個人の完全なる人権侵害である。小林敬関電社内調査委員長は10月2日の記者会見で森山氏本人からの意見は一度も聞かなかなかったこと認めている。森山氏が亡くなったのは今年3月である。いくらでも聞く機会はあったはずである。それを一方的にしかも『社内伝聞』をそのままマスコミ各社に渡したのである。もし、森山氏の家族が名誉棄損で関電を訴えれば森山氏への名誉棄損・人権侵害が認められる(若狭勝弁護士:2019.10.3 フジテレビコメント)。それを本人や家族の裏も取らずに垂れ流したマスコミも同罪である。

6 関電は自らの保身のために部落差別を利用して森山氏を個人攻撃する黒い野望
10月2日に発売された『週刊文春』・『週刊新潮』はそろって「金品を拒めなかった理由」・「京都の料亭に呼び出され」「『原子力を止めるぞ』と恫喝」等々「『関電』が震え上がった『高浜原発のドン』」(週刊新潮:2019.10.10)などとする記事を出した。『週刊新潮』は「関電幹部ともあろう有力財界人が金品を返せなかったのは、決して機嫌を損ねたり激高されるのが嫌だったからではあるまい。」とし、「反対派を抑えるために、『若い時分から解放同盟の活動をやっていた彼が、”ヘッドハント“された』」とつないでいる。一方、『週刊文春』は「人権団体を率いて、差別をなくす”糾弾活動“の名目で恐怖政治を敷き、高浜町民を手壊けていく、まさに暗黒町政の時代」(週刊文春:2019.10.10)と書き、森山氏こそが悪の権化であると書いているのである。とんでもない差別文書である。関電は自らの保身のために、部落差別の意識を利用している。巧妙にも内部調査報告書で森山氏個人を攻撃してマスコミに書かせ、週刊誌でその『背景』を書かせる手法をとっている。原発を運転する電力会社は腐った組織だとは思っていたが、自らの保身のためには部落差別意識の助長もためらわないという徹底的に腐りきった組織であることが今回明らかとなった。

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