【コラム】ひとりごと—参議院選挙結果に思うこと—

【コラム】ひとりごと—参議院選挙結果に思うこと—

○本号では、先の参議院選挙結果について一定の分析が行われている。そこで以下に私の個人的感想を中心に思うことを書いてみたい。○選挙が公示され1週間が過ぎた頃、最初の世論調査が出てきた。「改憲勢力3分の2をうかがう」との表現の下、1人区では13選挙区で接戦であるとの分析も出ていた。結果は、ほぼその通りになったわけだが、この13区では、野党統一候補が接戦を制したことになる。○開票速報を見ながら、野党共闘=1人区での候補一本化は成功したと思った。特に北海道、東北地方での善戦は、野党統一候補がTPP反対を明確にし、与党候補と対峙した事。農協組織が野党統一候補を推薦し、与党を追い詰めた。沖縄では、普天間基地の辺野古移転反対を明確に掲げた野党候補が勝利した。明確な対決点の明示が必要なのであり、まさに有権者に選択を迫った結果である。○また、都市部において関東圏・愛知の複数区では、与党と互角に野党議席を確保し健闘している。アベノミクスが生み出す格差の広がりへの危機感を確認することができるのではないだろうか。そして議論はあるにしろ、共産党の「野党共闘」路線が今回の健闘に大きく寄与していることは評価すべきであろう。○議席数では確かに「改憲勢力が3分の2を確保」となったが、これは今後3年間の間である。前回3年前の参議院選挙では、今回よりもはるかに自公与党が議席を占めた。仮に3年後の参議院選挙決算結果が、今回と同様であれば、自公与党は70議席の倍の140議席であり、維新を加えても154議席で3分の2に届かないのである。民進党の再生・再建の課題は別の議論としても、野党統一で「改憲勢力」に対峙する構図は、今後も維持されるべきであろう。○野党各党では総括に少々の違いがあるであろうが、「次に繋がる敗北」であり、与党側の分断戦略も今後打ち出されるであろうから、次の戦略について議論が必要である。○さて、改憲議論を封印した自公与党だが、世論調査、選挙報道を通じて、「改憲勢力」として「表記」された。公明党はこれに抗議もせず、甘んじて受け入れている。3万円の低所得高齢者向け「福祉給付金」を始め、公明党が与党に入っているから実現できたと、選挙違反すれすれの「買収行為」で満足なのか。安保法制議論でも然りだが、この政党に甘い評価は禁物であろう。○そこで民進党である。比例当選者をご覧になればすぐにわかることだが、労組候補者のオンパレードである。自分も過去に労組の比例票対策や、個人名記載の取組に関わっては来た。しかし、もっと各界各層の著名人を候補にできないのであろうか。○そして個人票第1位が電力総連東京電力の候補者であった。労組・企業挙げての選挙結果である。こうした勢力を頼るようでは「脱原発」など「夢のまた夢」ではないのかと思う。○最後に大阪・関西についてである。大阪・兵庫・奈良・和歌山・京都では、民進当選者は、京都の福山ただ一人であり、その他はすべて「改憲勢力」となった。特に大阪では4人区のすべてが「改憲勢力」となり、維新は2議席を確保した。「おおさか維新」は民主党政権時代に自民党脱党者を核にし、民主・自民を批判して「徹底した改革」を行うと訴え、橋下代表(当時)の人気を助けに圧倒的な支持を確保してきた。今回の選挙でもその「健在」ぶりを示したのである。○彼ら維新は果たして本当に「改革」してきたのか。何を改革してきたというのか。自民・民主(民進)不信が前提にあると思われるが、この「幻想」をどこかで断ち切ることが必要だと思う。○自分自身には、今回の選挙に敗北感や焦燥感はない。むしろ野党の側の課題が明確になったことは、次に繋がる結果だったと感じている。(2016-07-19佐野)

【出典】 アサート No.464 2016年7月23日

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