【投稿】統一地方選をめぐって 統一戦線論(15) 

【投稿】 統一地方選をめぐって 統一戦線論(15) 

<<道知事選が示したもの>>
 統一地方選で与野党の直接対決が注目を集め、現職・高橋はるみ氏を立てる安倍自民が、滋賀、沖縄、佐賀に続いて4連敗をする可能性が最も期待された北海道知事選ではあったが、その逆転劇は成らなかった。
 結果は、投票率:59.62%(前回比:+0.16ポイント)
高橋はるみ   1,496,915票 得票率56.6%
佐藤のりゆき   1,146,573票    43.4% であった。
 4年前の前回は、高橋氏=1,848,504票(得票率69.44%)で、次点の民主・社民・国民推薦の木村俊昭氏(544,319票、20.45%)、共産推薦の宮内聡氏(176,544票、6.63%)、次点とは130万票以上もの大差で勝利していたことからすれば、高橋氏は大きく票を減らした。今回、過去に高橋氏と争った候補では初めて100万票台を超えた佐藤氏は、民主党北海道と市民ネットワーク北海道が支持、共産党道委員会、新党大地、維新の党道総支部、社民党道連が支援する、野党連合の結集によって大いに接戦したとは言える。
 しかしその統一戦線は、その形成があまりにも遅く、民主党は足並みの乱れで直前までもつれ、様子見で出遅れた共産党の支持決定も遅すぎたと言える。とりわけ民主党は、地元の横路孝弘衆院議員らが佐藤氏の適格性を問題視し、岡田代表も民主党・道連からの要望がないことを理由に党を挙げた支援をせず、同日投票日であった札幌市長選の応援に入った蓮舫参院議員が北海道知事選では街宣車にも乗らず、素通りしたという。北海道で最大の支持基盤を持つ民主党が事実上の不統一、混迷を露わにするものであった。結果として、それぞれがちぐはぐで、かみ合った統一した力を発揮することができなかったところに重要な敗因の一つがあると言えよう。有権者はそうした厳しい現実を冷静に直視していたとも言える。昨年12月衆院選の沖縄全小選挙区で実現したような選挙協力、統一戦線構築ができなかったのである。
 そして一方の野党連合の挑戦を受ける側の高橋氏は、徹底した争点隠しに徹し、本来は最大の争点であった北海道電力・泊原発の再稼動問題について、3/26の第一声でも、「脱原発依存社会を目指す」と訴え、「再稼働は慎重に」とまで発言していたと言う。しかし、たとえ「二枚舌」と揶揄・批判されても、相手候補の主張を取り入れ、肩透かしを食らわせたその選挙戦術は、とりあえずは成功したとしても、自らの今後をも縛るものである。沖縄の仲井眞前知事のように、自らの言辞を翻せば、重大なしっぺ返しを受けることになろう。

<<過去最低の投票率>>
 今回の統一地方選で、北海道知事選は与野党の直接対決としては唯一とも言え、投票率が少しではあるが上がっている。しかし、統一地方選前半戦の10道県知事選の確定投票率は47・14%で、統一選として過去最低だった2003年の52・63%を下回り、初の50%割れとなった。41道府県議選の投票率も過去最低の45・05%となり、これまで最低だった前回2011年の48・15%から3・10ポイント低下している。
 5政令市長選は51・57%(前回比2・38ポイント減)、17政令市議選は44・28%(同3・31ポイント減)で、いずれも過去最低だった。
 知事選や政令市長選の投票率低下は、与野党が相乗りで現職を支援した例が多く(10知事選で6知事選)、41道府県議選は5人に1人が無投票当選で、自民系348人が開票前に当選している。
 与野党相乗りや無投票当選の続出は、当然のこととして投票率の低下を招く。結果として、地方政治は形骸化し、野党の出番はなく、見限られ、議会や政党政治への根強い不信感があまねく広がり、選挙制度も含めた民主主義自体も形骸化し、劣化して行く。これらは独裁政治の温床であり、安倍政権が期待しているのは、まさにこういう事態、ファシズム移行期の政治とも言えよう。
 それは、野党が選択に値する政策を提示できず、事実上自民党と変わらない政策で混迷を深めている現状では、野党の出番はなく、見限られている現われでもある。「有権者の関心が十分に高まらなかった」というよりは、事実上の野党の不在、自民党と対抗する野党勢力の結集、統一戦線の不在こそが、こうした事態の根本原因とも言えよう。
 野党各党は、それぞれ離合集散を繰り返しているが、いずれも請け負い主義が基本であり、「わが党に託せば」という代行主義であって、大きく野党を結集し、統一戦線によって、主権者と共に政治を変革していくという根本的な政治姿勢が欠如しているのである。それは、「自共対決」を独りよがりに叫ぶ共産党についても、この代行主義・請負主義が一貫している。唯一自民党に対する対案を提示しているとして、確かに一定の反自民の受け皿の一つとして評価もでき、支持もされているのであるが、牢固としたセクト主義と請負主義から脱しえていないために、統一戦線を大きく広範に形成する主導勢力になりえていない。

<<「重く受け止めなければいけない」>>
 ファシズム的温床の重要な一角を担い、安倍政権から最も期待をかけられているのが、橋下徹氏率いる「大阪維新の会」である。
 その維新は、今回の統一地方選で同日に行われた府議選と大阪市議選を都構想の賛否を問う住民投票(5月17日実施)の前哨戦と位置付け、府議選(定数88)で前回同様過半数獲得、市議選(定数86)で第1党の維持を目指していたが、ともに第1党になったものの、府議選では獲得議席が42と過半数に届かなかった。もちろん、市議選でも過半数に届いていない。
 大阪府議選の結果は、維新 42(選挙前45)、自民 21(〃12)、公明 15(〃21)、共産 3(〃4)、民主 1(〃7)、無所属6(〃12)であった。
 「大阪維新の会」の松井一郎幹事長(大阪府知事)は4/12夜、党本部で記者会見し、大阪市を五つの特別区に分割する「大阪都」構想の是非が争点となった大阪府議選(定数88)で過半数に届かなかったことについて、「負け」と総括し、「幹事長である僕の力不足。都構想の中身を十分に伝えきれなかった」と敗因を分析した。
 大阪市議選の結果は、維新 36(選挙前29)、自民 19(〃18)、公明 19(〃19)、共産 →9(〃8)、民主 →0(〃6)、無所属→3(〃5)であった。
 大阪維新の会の橋下徹代表(大阪市長)は4/13午後、統一地方選の結果について「一定の結果を出してくれたというのは、各候補者がこれまでの改革の必要性をしっかり説明してくれた結果なのかと思う」と評価する一方で、府議選で大阪市内の維新候補が7人落選したことを挙げ、「重く受け止めなければいけない」と語らざるをえなかった。
 ここでも民主党は、大阪府議会で議席数1、大阪市議会では議席ゼロという、立て直しどころか壊滅的打撃を蒙り、有権者から見離されている事態である。
 そして公明党も厳しい事態に立たされていた。昨年12月の衆院選に際し、創価学会と維新、公明の裏取引で、突如、住民投票実施に賛成したものの、「都構想反対」を明確にしなかったことによって苦境に立たされ、選挙終盤になって、公明党大阪府本部幹部は4/5、「中途半端な対応で票が逃げている」として、大阪市議選の候補らに「今後の演説会などでは、まず冒頭で維新単独での都構想反対のスタンスは改めてきちっと訴えた方が良い」とするメールを送信したという(日経新聞2015/4/9)。維新・公明の裏取引は有権者の厳しい目にさらされていたのである。
 こうした府議選・市議選の結果は、維新が一定の健在振りを示したとはいえ、過半数獲得を目指した維新にとっては、やはり手痛い敗北と言えよう。5月17日実施の都構想の賛否を問う住民投票の楽観的な帰趨が見えなくなったのである。この住民投票を、憲法改悪の住民投票の前哨戦と位置づけている安倍政権にとっても、この事態は気が気ではない。都構想反対を貫く自民党大阪府連と、裏で橋下・維新を激励し、支持する安倍政権のねじれは顕在化しており、5月17日実施の住民投票で、橋下・維新と安倍政権のたくらみを決定的な敗北に追い込む、幅広い広範な闘い、統一戦線こそが要請されている。
(生駒 敬) 

【出典】 アサート No.449 2015年4月25日

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