【コラム】ひとりごと—参議院選挙、緊張感のある結果を望む— 

【コラム】ひとりごと—参議院選挙、緊張感のある結果を望む— 

○6月4日、菅内閣が誕生した。鳩山政権の後を受けて、参議院選挙に臨むことになる。個人的感想から言えば、理想的なパターンである。しかし、危なさも残る。○理想的なパターンという意味は、「本来の民主党路線」への回帰のイメージを作りだし、小沢主導路線が持っていた「自民党的」政権運営からの変化が期待できるという意味である。○危なさとは、「小沢抜き」でやれるのか、ということ。一昨年の参議院選挙での勝利から昨年の衆議院選挙での政権交代へと民主党が躍進した経過には小沢指導の存在を抜きに考えられないからである。○一般的な国民から見れば、旧民主党は「左派」過ぎたのかもしれない。小沢自由党との合流、選挙采配などなど、政治経験が長く手腕のある小沢とそのグループが民主党に合流したことで、ある種の「安心感」が生まれたことは否定できない。○小沢手法は、連合系の主要組合出身者も取り込んでしまった。連合について選挙の現場部隊としての力を小沢は評価しているのであるし、逆に前原グループなどが、既得権益反対の意味からも労組と距離を置こうとしたことと比較すると、中々すご腕であると思う。表向き、「小沢抜き」は結構だが、実績を上げられるかどうか、菅新体制は問われることになる。○菅政権誕生後の世論調査では、民主党の支持率は急速に回復した。(政権発足直後の週末に実施された調査では、民主の政党支持率は39%(同29%)に伸びている。自民は過去最低の5月調査に並ぶ14%(同18%)に後退した。)敵失にのみ期待していた谷垣自民党や「第3極」を期待していたみんなの党なども、支持率が急降下する結果となった。○高支持率の要因は何なのだろう。それは、擬似政権交代のように国民に写ったからであろう。ひ弱な鳩を凄腕の小沢が操っているかのような前政権から、民主党結成以来の主要メンバーが内閣・党人事に納まったことで、違った意味での安定感も生み出すことに成功したのではないか。党三役も小沢色を一掃したことで、同じ民主党連立政権であるのに、全く新しい政権であるかのような印象を与えることに成功。新閣僚も蓮舫議員などの新メンバーなどを加えて、新鮮さも感じられた。○新政権の最大の課題は、財政再建であろうか。昨年の政権交代後、鳩山政権は、事業仕分け等の目玉政策実行でムダの削減に取り組んだように見えるが、子ども手当・高校無償化といった新政策への財源措置は、新年度予算では税収減もあり国債増発に頼ることとなった。○「強い財政・強い経済・強い社会保障」と菅首相は唱えている。強い財政とは、安定した税収の確保だろう。消費税も含む税制全般の議論を進める必要があるだろう。○小泉以来高所得者の減税が進められたが、所得再分配の観点から所得税の累進性を高めると共に、インボイス制・軽減税率制度を導入し、使途先を社会保障・年金などの財源にするとの設定であれば、国民が納得する可能性はあると思う。○しかし、鳴り物入りで事業仕分け第3弾の特殊法人や独立行政法人への切り込みは、財務省主導のため、ほとんど成果をあげていない。この点では、昨年のマニフェストに謳われた特別会計そのものの解体をめざすのでなければ意味がない。一般会計の3倍の規模を持ち、官僚の天下りの聖域に徹底的に切り込むことが大切である。○ただ、細川連立政権が、福祉目的税=付加価値税導入問題で退陣した記憶も甦るが、菅首相が「与野党含めて広範に議論したい」としている点は、控えめで中々したたかである。○参議院選挙は、新内閣誕生の余韻覚めやらぬ中で執行されるということ、民主が支持率を回復しているということから、とりあえず「民主党勝利」ということになるのだろうが、単独過半数となるかは不明であろう。○外交・防衛問題での国内移設方針は、米軍基地の段階的縮小も言われているとはいえ、このままでは自民党と変わらない。○例え過半数確保できなくとも確実なことは、この選挙を乗り切れば、向こう3年間「民主党政権」が長期化することである。○谷垣自民党は目標議席を40とするなど、戦う前から自民劣勢が濃厚であり、自民党公認から無所属への変更する候補者も出てきている始末である。○大阪では、橋下知事が地域政党「大阪維新の会」を立ち上げ話題になっている。しかし、加入する議員のほとんどが自民党党員である。自民党は地域政党であるということで、自民党籍を残したまま、大阪維新の会への帰属を認めざるを得ず、すでに崩壊が始まっている。沈み行く泥船から議員が逃げ出しているとも言えるのである。自民の弱体化の結果であるという側面が強い。(民主党から移行した2人の府会議員の場合は、除籍という「処分」となった。)○基地問題、消費税問題、マニフェスト修正の是非などが焦点という参議院選挙の様相であるが、すでに公示されている状況の中、自民の没落は当然としても、民主単独過半数ではなく緊張感のある議席配分になるのではないか。もちろん、私は懇意の民主党新人を応援することになるけれど。(2010-06-20佐野秀夫) 

 【出典】 アサート No.391 2010年6月26日

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