【投稿】新保守主義を許さない民主リベラル勢力の結集が必要だ

【投稿】新保守主義を許さない民主リベラル勢力の結集が必要だ

生駒さんの巻頭文書では自民橋本・新進小沢会談による国会絶対多数による特措法成立へのプロセスが論じられている。「保・保連合」への動きを中心に中曽根・梶山などの「保・保推進」派に焦点をあてているわけだ。
私は、旧来の「野党」的体質に先祖帰り(もともとそうだったのかも知れないが)しながらも、「与党で有り続けたい」という社民党の態度に疑問を持ち、加速するであろう保保連合に村抗する必要性に焦点をあててみたい。

社民党と保・保連合
沖縄米軍用地の暫定使用を認める駐留軍用地特別措置法(以下特別措置法)が4月11日衆議院本会議で可決された。衆議院議員500名の内9割近くの賛成があり、野中広務をして「翼賛議会にしてはならない」と言わしめるほどとなった。その大きな原因は予想されていたとは言え、衛撃的な4月3日の「橋本・小沢会談の3項目合意」である。
5月14日の借地期限切れを前にして、5月政変の議論はこれまでに流布されてきた。自民党単独では過半数が取れず、新進・民主・共産が反対をした時には安保条項でもあり、橋本政権の正念場であった。そういう意味では、安保政策を変更した社民党の対応如何にかかっている、というのがマスコミの論調であった。
しかし、野党第一党である新進党は、オレンジ共済問題に主犯の友部議員、さらに細川前首相に疑惑が波及、離党者が相次ぐなかで、「現在の新進党は膨らむ一方の不良資産を抱えて、経営破綻寸前の企業を思わせる」(2月23日日経)と報道される程、「結束か瓦解か」というところまで「停滞」し、地方でも「新進党では選挙にならない」状況にまで陥っていた。消費税5%を含む97年度予算も早々と成立してしまう。特措法への対応についても、新進党の中では、自民党に対抗して「特措法反対」を決めた場合、オレンジ共済問選や相次ぐ離党問選など一連の党的弛緩状態を背景にして、「特措法」賛成に走る議員がでることが確実視されており、小沢党の存続をかけて決断をすることが迫られていたわけである。そして社民党は3月末、「特措法には反対だが、閣外協力は続ける」方針を決めてこうした新進党の状況を見て取った自民党内の中曽根・梶山などのタカ派グループに根回しされ、「自民・新進部分連合」が進められ、「歴史的和解」が決行されたのではないか。こうした経過を見てくると、社民党の対応は余りに子どもじみてしょうがない。
そんな社民党であることは、最初からわかっていたこと、という意見もあるだろう。しかし、現在の政治状況の特質と今後政治の舞台で議論されるであろう、日本の構造的変革を議論する過程では、「自らの主張」をただ正直に貫くだけで、「唯一の野党です」みたいな議論では徹底的に不充分であり、むしろ犯罪的ですらある。新保守主義への純化が果たして可能かどうか、の議論も必要であるとともに、新保守思考勢力を如何に分断させ結集を許さない全体の流れをどう誘導していくのか、という意味での政治的センスが問われている、ということを言いたいがためである。
こうした中、社民党は「特措法には反対だが、閣外協力は存続、自社さ政権の一員」「特措法には反対して、民主党より支持率があがった。これで都議選・参議院選挙が闘える」などというような「狭い」政治的判断での対応では、いかがなものか。よしんば「保・保連合」の動きがいずれ出てくるとしても、その流れを如何にして食い止めるか、の戦略・議論が必要ではなかったか。
新聞論調も、特措法反村でも閣外協力を続ける、という社民党に対して、政権離脱を鮮明にしてこそ、国民の理解と支持が勝ち取れると批判しているが、ことはそう簡単なものではないとは感じるているのだが。

部分連合が加速化する背景
言われているように今後具体的な政策を巡る「部分連合」的な動きは、今後加速する勢いである。高齢社会を迎えての国民負担率の議論、負債400兆円と言われる国家財政の再建をめぐる議論、出口の未だ見えない経済低迷と労働法制の改編をめぐる間道、行財政改革と地方分権をめぐる問題においても然りである。これらのいずれについても基本的なところで、自民・新進の間には極端な政策的村立は見られていない。むしろ政党の垣根を超えた「旧竹下派総結集」の動さもあり、部分連合や政策協調への傾斜は確実と言える。
加藤・山崎などの自社さ推進派にしても、今回の社民党の特措法反対の事実は、党内での立場を厳しいものにするだろうし、オレンジ疑惑を抱え傷つき支持低下が著しい新進小沢も「改革派」勢力であることを示せるならば、安保問題・行財政改革・財政再建課題などでは、この動きを強めることになるだろう。
今通常国会の後半には、医療保険改革法案、公的介護保険法案、金融監督庁設置法案、の審議が控えており、年内には財政再建関連法案が出てくる。すでに自社さに加えて民主が、医療保険改革と公的介護保険で大枠の合意に達しており、財政再建法案では、村山・武村を加えた「財政構造改革会議」が審議入りしていることから、この枠組みは変わらない。ただ、小沢は今国会期末に出される財政再建法案の骨格に対して、新たな部分連合または政策協調の用意があると述べている。

都議選・参議院選挙結果がどうなるか
おそらく総選挙は今後1年以上は有り得ないという状況の中で、自民党を中心にした部分連合という形が続く場合、危惧されるのは、結局大胆な改革が行われず、国民への負担増がじわじわと進んでいく危険性である。さらに自民単独過半数に程遠い参議院の議席状
況から、来年の参議院選挙までは表面的に自社さの枠組みが維持される中で、今回のような部分連合・政策協調が重ね合わさり、その行き着く先には何があるのだろうか。予想にしかすぎないが、日本をめぐる経済・社会・財政の激変に対して、新保守主義に純化していく部分とそうでない部分という形で、自民・新進を貫く中で再編か起こるのかどうか、ということが注目すべき点であろうか。(この部分は、昨年11月号での総選挙分析議論を参照されたい)。おそらく今後、日本の選択肢をめぐる焦点が益々「新保守主義」をめぐる議論に傾斜していくことが必死であろうからである。
そういう意味では、第2次橋本政権による97予算、消費税UPと国民負担の増大、そして沖縄特措法などに対して、国政選挙に匹敵する影響力を持つと言われる今年の夏の都議選には注目する必要があろう。
そして、新進党が分裂する場合、旧公明と旧民社がどう動くのかにも注目する必要がある。旧公明グループの「平和と平等」指向と「政権への権力」指向という二面性については、いずれも過小評価できないし、旧民社・友愛グループに対しても「労使協調」の側面だけで論じられるべさではないし、労働組合・労働者の既得権についても「大胆なメス」を入れようとする勢力との分岐についても注意する必要があろう。連合が民主・新進の股裂き状態を危惧し「連合新党」的指向で議論をしていることも、中々進まない状況が伝えられているが、新進に楔を打つ意味でも進められるべきである。

民主党・社民党の取るべき態度
話しを戻してみる。「政治スローガン」としての「特措法改正反対」は誰でも理解する。民主党の5年間の時限立法の修正案提案も私は理解する。しかし、社民党については特措法審議の過程を通じて、確実に政治世界での「存在感」を失ってきているのだ。「反対野党」としての存在感はあったにしても。さらに今回の「保・保部分連合」の口実をつくった責任の一端は、社民党にもあるという側面は否めないのである。
昨年の総選挙の結果として社民党に与えられた任務は、自民・保守勢力ヘのチェック機能であり、過半数への「キャスティングボード」を握ることだったが、今回の部分連合が、それを無意味にしてしまったのである。
これまで述べてきた私の感想的な文書の流れからでてくるのは、おそらく自民・新進を貫いて、保守の分裂ないし再編は必死だろう。それに対抗する「民主的部分」の大同団結を準備することが、政権の中にいようが、野党にいようが必要だ、ということだ。「民主リベラル勢力の大同団結」を準備し、旧公明・旧民社も視野に入れた政策論議が必要だと考えるのだが。(佐野秀夫)

【出典】 アサート No.233 1997年4月19日

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