【投稿】『第二極』路線に求められているものは何か

【投稿】『第二極』路線に求められているものは何か

<あさましい姿に、深く深く失望>
民主党は、インターネット上にホームページを開設していることはすでに紹介したことがある。そのホームページ上に民主党への率直な意見や批判まで含めてそのほとんどを公開していることは、他の党に比べて好感の持てるものではある。間題は、ありばいとしてあるいはポーズとして、掲載さえしておけばそれでよいといった態度が少しでも感知されれば、それが逆効果になりかねないことであろう。
民主党が、今回の米軍用地特別措置法改悪に賛成した行動に対して、このホームページ上に抗議が殺到し、いまだに失望と怒りの声が同ホームページのフォーラム「民主党に一言!」欄に寄せられつづけていることは見逃せないことである。にもかかわらず当初、特措法賛成方針について党本部への抗議の声がないのかと質問されて、同党の菅代表は「わが事務所も含めて、党本部からも特に開いていない」とこれらの抗議の声を無視したのであるが、ついに4/18にはこれを認めざるを得なくなり、「特措法改正に対する民主党の対応」と逢する釈明文を掲載、「この民主党の決定に対して、皆様からお寄せいただいたご意見のほとんどは、残念ながら否定的なものでした」として、仙谷・同党政調会長の「民主党はなぜ特措法改正に賛成したのか」と、菅代表の「沖縄基地問題の具体的解決を民主党はめざします」とする反論を掲載した。
仙谷氏はその中で、「日米安保条約の適切な運用を確保する道筋を示すことなく、沖縄の米軍基地の削減だけを性急に要求することは、無責任政党との批判を免れません」と述べ、「今回の選択によって、民主党は政権担当能力を有する政党としての姿勢を明確に示すことができたと確信します」と開き直っている。菅氏も冒頭から「立法府が、法的空白を容認するような無責任な態度をとることはできません」として自民党への同調を弁解し、「沖縄の皆さんは単なる同情や反対運動を求めているのではないと、私は思っています。そうではなくて、具体的で実際的な基地問題の解決を望まれているのだと思います。民主党はそのことに、他のどの政党よりも真剣に取り組んでいく覚悟です」と述べている。まさにこうした具体的で実際的な行動が、「建設的野党」の実態が特措法賛成でしかなかったことに対して、その「あさましい姿に、深く深く失望」した多くの怒りと失望の声が寄せられたのである。その一端は別掲の「民主党に一言!」に紹介する通りの非常に厳しい内容である。

<この国にとっての不幸>
自民党の野中幹事長代理が4/11の衆院本会議の演壇から「この法律が沖縄を軍靴で踏みにじる結果にならぬように。私たち、古い苦しい時代を生きてさた人間は、国会の審議が再び大政翼賛会的にならないよう若い皆さんにお願いしたい」と述べたことは前号にも指摘したことであるが、こうした冷静で正当な認識が野党から出てこず、自民党から出てきているという、しかもよってたかって野中氏の発言を議事録から削除までさせるという、大政翼賛会を地で行くような、なんともふがいない、ある意味では危機的な日本の政治状況の進行である。
野中氏は「9割という熱風のような賛成の結果、防衛問題で橋本政権はやはり米国の言いなりなのか、という印象を沖縄県民に与えかねないな、と不安になった」と述べている(4/27朝日インタビュー)。野中氏は「沖縄問題の処理は大変なんだ、という印象を米国に与える「カード」を橋本首相は持つべきだと思っていた」ことから、社民党は当然、それにプラス、少なくとも民主党がこの特措法反対に回ることを期待していたことがありありと伺える。事態はそうならずに、逆に橋本・小沢会談を契機にもっとも危惧される保保連合が現実味を帯び始めたのである。野中氏はこの点についても「今度の特措法でも、小沢さんは早々と米国の意向どおり、海兵隊削減はできないと言った。小沢さんにすれば、先にオレが米国にカードを切った、と言いたいんでしょう。そんな危険な政治家と大連合を組むのは、この国にとって不幸だ」とズバリ核心を突いている。
一方、アメリカの議会では、5/8、米上院外交委員会が、沖縄の在日米軍基地について、「沖縄県民の特別な貢献に感謝する」とうたった上で、なおかつ「沖縄県民は過重な負担をしている」などとする決議案を全会一致で可決している。上院の本会議でも原案通り可決される見通しだが、「過重負担」を明確に認めたことは、米議会内に、沖縄の米軍基地の削減の可能性を追求すべきだとする根強い動さがあることを明確にしたものであろう。海兵隊の削減をも含めて、野中氏の言うカードが切れる状況がアメリカ側には存在しているのである。
しかしこうした野中氏の期待と警告とは逆に、自民党内にも保保連合への動きが表面化してさている。5/2、なんとロンドンで新進党の小沢党首と自民党の森総務会長が隠密裏に会談をし、その根回しに亀井建設相が動いていた、というのである。野中氏は「小沢さんが保保連合ができそうな雰囲気を作ろうとすればするほど、現実にはできなくなる。小沢さんが新進党のトップである限り、それはできません」と断言するが、それは野中氏も期待する強力な野党の存在があってこそである。

<『ゆ党』路線から『第二極』路線への転換>
多くの矛盾をはらみ、拡大させながらも、新進党が保保連合への道を歩み始めた現在、民主党の動向がある意味で大きな鍵を撞っているとも言えよう。民主党内では、新進、太陽両党との「野党共闘」路線、自民党を含む「行革特命政権」路線、社民、さきがけ両党との統一会派結成を通じた「与党内野党」路線など、いずれも立ち消えしたり、軸足が定まらず、先の3月の党大会では「建設的野党」路線を採択したが、「民主党は与党か野党か分からない『ゆ党』だと椰施される始末である。
菅代表はイギリス労働党政権の誕生を見るや、たちまち「英国労働党のプレア路線で行く」と宣言し、「今まで自民、新進の大きな政党に挟まれた『第三極』という発想だったが、最近の保保連合の動きで自民対新進の構図が崩れた。「第二極」になりうるのは民主党だという自覚を持ちたい。政党の枠組みでいえば、保保的なものができて、その一部が抜け落ちたほうが分かりやすい。ウルトラに近い保守とリベラル勢力の二極だ。歓迎はしないが、そう進むなら進んでいい。小沢一郎氏らは新進党を割って一部で自民党と合流しようとしているのではないか」(5/10朝日インタビュー)と述べている。
ところで英労働党のプレア党首の路線は、保守党の予算枠を受け入れ、民営化や規制緩和政策、労働組合の既得権の縮小、NATOの堅持などこれまでの保守党の政策の継承を公約し、「保守党政治を薄めただけ」ともいわれるが、こんなことを見習っていたのでは「第二極」などありえないことである。むしろ注目すべきなのは、プレア党首が、「学級あたりの児童数を減少させる」、国民医療制度(NIIS)を充実させる、国民年金制度を守る、という公共サービス再建を前面に掲げて選挙戦に勝利したことである。三つの優先政策として「教育、教育、教育」と宣言したのであるが、その教育政策の柱の一つは、サッチャー政権以来の保守党の教育予算削減の結果、教員数が減り続け、学級定数が増え続け、教育が荒廃してきたことに対して、学級の児童数の縮小を対置して、教育の復興を掲げたことであった。問われているのはやはり政策の中身であり、保守党、保保連合に対決しうる基本政策の確定だと言えよう。 (生駒 敬)

別掲
=民主党ホームページ「民主党に一言!」欄から=
○「今日(4/8)、ニュースは民主党が沖縄。特措法の改正に賛成を決めたことを伝えました。私は、この決定にどうしようもない悲しみを伝えないではいられません。」
〇「特措法に対する民主党の考え方に失望しています。安保でなければアジアの平和は保てないのでしょうか?特措法はこのままでは法律となってしまいますが、これを後で国民の力によって覆す方法はないのでしょうか?」
〇「特措法に賛成したというではありませんか。もしこのニュースが正しければ、非常に残念です。正しいことは正しく間違ったことは間違っていると誠実に対応すること。今私たちはそれを求めています。
ごまかしや闇での取り引きはごめんです。本当のく民主党)になってほしいものです。菅さん、ぜひ返答をお願いします。」(4/9)
〇「特措法に反対します。メッセージにこれだけ反対の意見が零せられているのに・・国会の改正賛成の勢力は民意を反映していないと思います。条約がそれだけ大事ならば、こうなる前に当然やっておくことはたくさんあったはずです。いつも問題を先送りにして、責任ある政党はどこにもないのでしょうか。消費税も5%になりました。私は直間比率の見直しに賛成ですが、このまま消費税の欠陥も見逃して納得しろというのですか。いつになったらこの国は健全になるのですか。非常にやるせないです。」
〇「特措法の賛成には開いた□が塞がりません。このような基本的な理念に関わる問題を政治的な取り引きに利用する政党とはいったい何なのでしょうか。沖縄を見捨てて政権に擦り寄るというあさましい姿に、深く深く失望いたしました。」
〇「特措法改正で民主党は沖縄の味方と期待していたが、こんなにも簡単に賛成に回るとは夢にも思いませんでした。しかも今国会が動き出したばかりというのに論議も経ないで密室で自民党と協議するとは絶対に許せない。これが野党のとるべき行動か。」
〇「特措法の衆議院通過で日本はアジアの帝王となったのではないか。米国と組んでアジアを支配すると宣言したようなものではないか。・橋本と小沢のねらいは将来全国どこにでも基地の建設ができるようにしたということだから、法の整備もできたし、これからは本土にどんどん基地を移し、公平に安保の犠牲を背負うべきであります。まず岡山県と岩手県にヘリポートと海兵賭を移すことから始めてください。それとも北海道と山口県に移しますか。
真剣に国会での討論を期待します。」
〇「さようなら、民主党。あなた方も、やはり同じでしたね。このフォーラムを見ても分かるように、今まで民主党を応援してきたほとんどの方たちが、このたびの特措法に対する民主党の行動に失望しています。少なくともあなた方は『民主』ではない。裏切られたものの怒りは、大きいですよ。あなた方を支持してきた人たちは、元々自民党に期待はしていなかったのだから、この失望は直接民主党に返りますよ。化けの皮がはがれたからには、早く『民主』の衣を脱いで自民党に擦り寄っていきなさい。
この国に失望しました。結構しつこく周りにいろいろ言われながらも政治に期待してきたのですが本当にあきらめました。もう、選挙には行きません。こ こまで民意を無視されては選挙なんて無駄です。」
〇「特措法に関する民主党の態度は唾棄すべきもの。市民党でもなんでもない。要するに勇気がないだけ。こんな政党は解散して結構です。」
〇「特措法改正問題に対する貴党の対応に失望いたしました。不法状態による混乱を防ぐと言う政府のメンツのために、貴党は仁を捨て去り、沖縄を狙い半ちした立法に賛成なさいました。仁や誠ではなく術による解決に頼ったと言うことです。」
〇「特指法改正案が衆議院を通過しました。とても悲しい気持ちです。日本はいつから民主主義ではなく、政党主義になったのでしょうか。 ・国会議員の皆さんへ何かをお願いするのは、これを最初で最後にしたいと思います。」
〇「貴党の特措法賛成の態度に強く抗議します。国会での発言はいろいろ言い訳をしながら、結局特措法賛成で、沖縄の人たちの怒りの気持ちが分かっていないなと思います。法の名の下で、沖縄の人たちの意志とは関係なく、半永久的に土地が強奪されるというのは、あまりにひどすぎます。安保さえ唱えれば、どんなことでも許されるのでしょうか。」
〇「いくらいいように表現したとしてもあなたがたは特措法でもって沖縄の人々を差別したことには変わりはない。 ・民主党に一票を投じたわたしがなさけない。言い訳はもう必要ない。」
〇「支持者の意見を確実に知っておきながら、どうして賞成したのですか?・・今回このような対応しかできなった民主党に正直失望しました。保保連合がまさに『大政翼賛』的になってしまったのは、あの時民主党が、といわれそうなのが目に見えます。恐ろしいです。議会制民主主義の脅威です。」
〇「民主党は本当に市民が主権者であるための党なのでしょうか?最近の貴党の一連の動きを見ていると、党利党略のみで政界を泳いでいるような気がします。」
〇「前回の選挙では菅直人氏のエイズ問題の取り組みを評価し投票しましたが、今回の方針は単に自民党に擦り寄っただけであり、修正案も否決されるのを見越して表面上取り繕ったように見えます。現在私はこのような政党に投票した自分を深く恥じており ます。」
〇「市民にありもしない希望を抱かせ、あげくの果てに自民党が大喜びする『政策実現』型政党になるのであれば、さっさと自民党もしくは新進党に吸収されてほしいものです。部分的に共鳴できるところがあるからなおさら惑わされるんです。政策実現よりも先に『極悪政策阻止』型政党になってくれることを切に願います。」

【出典】 アサート No.234 1997年5月17日

カテゴリー: 政治, 生駒 敬 パーマリンク