【投稿】ごみ焼却場からダイオキシン・・問われる清掃行政
先日衝撃的な調査結果を厚生省が発表した。発ガン性や催奇形性などの強い毒性が指摘され、今年2月に国際保健機構(WHO)も「発ガン性がある」と断定したダイオキシンについて、全国のごみ焼却施設の1150施設の排出濃度を公表したのである。その中には、厚生省の暫定基準を上回る施設が72(6.3%)もあったのである。
厚生省は、調査結果の発表と共に72施設について改善を求め、改善できなければ廃止するよう求めている。
今回の調査は、茨城県新利根町や埼玉県所沢市などの焼却場近くの住民が自らダイオキシン調査を行い、その力が厚生省と自治体による調査を実現し、また調査結果を公表させることとなった。容器包装リサイクル法が施行され、ごみ減量化がさけばれる中で、新た
に清掃・環境行政に課題を明らかにしたことになる。
今回、改善を指示された施設は、いずれも1日の処理能力が100トン以下で、24時間連続稼動していない施設であって、小規模なものが多い。焼却機内の温度が900度を下回る場合、ダイオキシンが発生することは科学的に実証されているのである。
さらに、今回の調査はあくまでも自治体の焼却施設を対象に行われたのであって、民間の廃棄物処理施設や民間の工場内の焼却施設は調査されていないのである。また、ごみ焼却場の新規建設は地元住民の反対などもあり、なかなか建設が難しくなっているため、た
とえ廃止をしたとしても、厚生省が求めている、広域の自治体が協同して大規模施設の建設も実際には中々進まない、という状況にある。
また、これまで一部の自治体では、ごみ減量化ということで各家庭に小さな焼却機を配った経過もあるわけだが、これも900度にみたない温度で焼却する場合は、ダイオキシンが発生ということになるなど、混乱が予想されている。
今回の調査結果の公表は、ことが重大なこととは言え、公開・改善廃止の指示が行われたことは評価できる。しかしながら、依然として大量のごみが焼却場に持ち込まれ、減量化が進んでいないこと。また、ペットボトルやアルミ缶、ビンなどの分別収集による資源化努力が、行政・住民ともに徹底されていないなど、日本の清掃・環境行政に新たな間道を提起している。(S)
【出典】 アサート No.233 1997年4月19日