【投稿】「新党」構想の現実化と社民党

【投稿】「新党」構想の現実化と社民党

<<過去最低を更新する社民党支持率>>
本紙前号の大阪・O氏の「最終局面迎えた社民党」は、もはや「ご臨終」の段階に至った同党の惨状を実に赤裸々に描き出している。氏は最後に、「こうした惨状は、言ってみれば自業自得であり何ら同情に値するものではないし、逆に最後にして最大の社会貢献と言っても良いのではなかろうか」と断を下しておられる。確かに同じ実感を持つのではあるが、「最後にして最大の社会貢献」にしては情けなく、もう少し「社会貢献」の余地がないものであろうかと考えさせられてしまう。
7/7-8の朝日の世論調査によると、政党支持率で社民党は過去最低を更新したという。全国平均では5月調査の11%から10%へ低下、大都市地域(東京区部と12政令指定都市)では、さきがけ10%(全国8%)、共産9%(全国7%)をも下回る8%であった。
一方、自民支持率は46%と高い水準を維持し、新進は14%で低迷している。共産支持率が7%になったのは、76/3調査以来である。
なおこの少し前に行われた、6/21-23の日経調査は以下の通りである。
支持率   今回 前回=4月    連立与党の成果      鳩山新党
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自民    39.6  40.7      十分な成果 2.1      大いに期待   9.1
新進    10.0  11.3      ある程度成果 30.5   少しは期待   31.2
社民     8.8    8.7     あまり成果ない 41.3   あまり期待しない 34.5
共産     5.5    5.4     成果なし 21.0       期待しない  19.6
さきがけ   4.2    5.2     わからない 5.2      わからない   5.5
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<<「新党」への期待度と共産党の善戦>>
確かにこれらを見ると、社民党が「臨終」局面に至っていることは間違いないといえよう。問題は、この「ご臨終」に際して「親族、関係者ご一統」が「ご焼香」「お見送り」でそれぞれの帰路へとただただ解散してしまう以外に道がないのであろうかということである。
焦点は「新党」結成への動きである。すでに「鳩山新党」は9月結党を目指して動き出しており、「ソフトクリーム」であろうがなかろうが、これに失敗すればもはや誰からも相手にされないギリギリの局面でレールが敷かれたといえよう。新党への期待は何度も裏切られ、挫折を繰り返してきたがために、あきらめムードが強いにもかかわらず、それでも40%前後の期待が寄せられている。
それは、自民、新進、保守2党体制への危機感、保・保連合への嫌悪感が多くの人々の意識の中に厳然として存在していることの証明でもある。朝日の調査では、消費税の5%への引き上げについては、「支持する」18%に対し、「支持しない」が76%にも達している。共産党の支持率が久方ぶりに上昇してきたこと、各種選挙で善戦していることもその現れであるといえよう。それでも、先頃の共産党中央委総会で不破委員長が「党活動が前進している中で、機関紙拡大だけが後退を続けていることは重大だ」と指摘せざるをえない、幅の狭い、敵失による前進である。そのセクト主義的我田引水路線が改められない限り、質的な前進はありえないであろう。

<<政党交付金にしがみつく抜け殻>>
その意味で、新たな第三勢力、第三勢力と言うよりは、反保・保連合という意味での広範で強力な連合への国民的期待度は依然として強いのである。
 〇〇氏の立候補通信にあるように、すでに社民党内では赤松氏ら「創志会」グループ20名前後の現職議員が離党を前提に新党合流を確認している。これに北海道の衆参現職9名、自治労系新グループ18人が同じく合流を目指している。ローカルパーティ系もこれに加わることは間違いない。これらが現実化すれば、社民党の現執行部は、年間50億円にも上る政党交付金にしがみつく老齢グループの抜け殻と化してしまう可能性が極めて高いのである。
たとえ「抜け殻」であっても、その存在価値があればまだしもであろうが、事態の進展はそうしたことも許さないであろう。まず連合政権を組んでいる当のさきがけはそのほとんど20名以上が新党に合流し、その主柱を構成するであろう。海江田氏らの市民リーグ5名、そして新進党の反小沢グループ、旧日本新党系グループからも当然参加が見込まれている。こうして新党が事実上形成されつつあり、これが9月の時点で現実に結党という事態になると同時に、もはや自・社・さ連合政権の屋台骨が崩壊してしまうのである。あえて現橋本政権を継続させようとすれば、それを支えるのは自民党加藤グループと社民党残留グループでしかなくなってしまう。当然、橋本政権は無理矢理現状を維持するか、あるいは結成された「新党」と手を組むか、いずれにしても新たな政界再再編成を前提とした国会解散・総選挙に踏み切らざるを得ないといえよう。

<<「最後の社会貢献」>>
ここで、社民党にとって残された最後の「社会貢献」が、切りとられ、散々に踏みつけにされ、「抜け殻」と化した惨状をさらすことだけではないとすれば、後々の新党のためにも、現連合政権の枠内であれ、最大限の政策転換を明示し、実行に踏み出すことであろう。消費税の据え置き、特別減税の継続、不公平税制の改革、地方分権の推進、強制収用を目指した沖縄特別基地立法の放棄、従軍慰安婦問題等の国家賠償による戦後補償責任の明確化、「もんじゅ」の即時閉鎖、情報公開法・人権基本立法・環境保護立法の確立、等々、社会党としてこれまで一貫して掲げてきた政策課題は依然として有効であり、今後とも継承され、追求されなければならない課題である。「臨終」を前に、「最後の社会貢献」があるとすれば、これらの一つでも獲得するために、最大限の努力をすることではないだろうか。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.224 1996年7月20日

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