『詩』 悪徳のすすめ

『詩』 悪徳のすすめ
                  大木 透

その昔
ウジ虫の神様は
ウジ虫の形をしている
とM先生はおっしゃった

AUMの楽園も
この世に
よく似ている
と嘆く奴がいる

会社をやめて
出家してまでして
またプラントを作るのはいやだ
とそっぽを向く奴もいる

朝礼の禅問答に
吐き気を覚えて
出家したものの
AUMの修業にも飽きて
出奔して
青木ケ原の風洞に
立てこもり
なぜか
ひとりで
オカリナばかり吹いている奴もいる

分らん奴もいる

夢があるだけ
ましだと言うと
目を吊り上げる奴もいるが

ヤケ酒を飲んで
俺もサリンを撒きたいよ
と怒鳴り返し
そっと
あたりを見回す
奴もいる

分る分る
と泣きじゃくりながら
「昭和ブルース」を
歌う奴もいるが
それからどうした
それからどうした

合いの手をいれると
何万というサーチライトが
いっせいに点灯され
競い合って
必死に
向かって来る
近衛兵の行軍のように
寝起きの
俺の
夢の縁を
渡って行く

一服吸いながら
昔を思い出す

俺は
「たとえ赤子が混じっていても
反革命の群衆は標的にすべきだ」

真面目くさって
議論していた

商売敵は
「ポア」したってかまうものか
と某商社のアフリカ担当部長が
言ったとか言わないとか
騒々しいことではあるが
「ポア」の風習は
この国に
よく根付いている
夕べも
気弱な小学生が
なにものかに
「ポア」されたらしい
(1995.5.20)

【出典】 アサート No.211 1995年6月17日

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