【問題提起】92春闘総括を巡って

【問題提起】92春闘総括を巡って

92春闘は事前に予想された通り、賃上げ課題での低額妥結、労働時間短縮での一定の前進という結果に終わった。
春闘以前から景気の後退が明らかになり、連合も当初の8%賃上げから「実質賃金の維持」の防衛戦に転じたものの、主要単産の多くが4%台の賃上げにとどまったため、それさえも経営側に突破されてしまった。
こうした状況の中、私鉄総連や全電通、さらにはJR総連の一部がストライキに突入したものの、実質的な賃上げ効果を獲得するには至らなかった。
もっとも、ストに突入した上記の各単産には、それぞれの内部事情が存在し、純然たる経済ストではなかったものの「回答が不満ならストライキ」の戦術が連合時代でも存続していることを示したものといえる。
一方労働時間短縮については、電機労連を中心に「休日、年休の増加が図られた。しかし、大枠の「1800時間」については、達成時期の先送りが目立ち、政府の92年度はおろか、連合の主張する93年度も極めて困難となってきた。
また、各企業が大量の在庫を抱え込んでいる中での春闘であることから、経営主導の時間短縮=生産調整のイメージもぬぐえない、との見方もある。
とはいっても、獲得された成果は100%行使し、今後どんなことがあっても削られないようにすることが肝要である。
92春闘がこのような結果になったのは、日本的労使関係の必然的帰結であるが、こうした関係の見直しについては、今春関前から学者、関係者の一部で積極的に問題提起をされてきたところである。
それらの論調を意識し、連合も例年以上に経営側との対決姿勢を打ちだしたや官、新たな春闘を模索するまでには至らなかった。
連合自身が、不十分と認めざるを得なかった、賃上げ結果に対する組合員の不満が存在している春闘直後は、総括をめぐって各組合での論議も沸騰する可能性がある。
本来そうした時期にこそ、根本的なところまで突っ込んだ論議を行い、次の闘争につなげていかねばならないのであるが、「総合的判断」をもって肯定的総括をいたずらに先行させ、根本的論議自体を冷え込ませてしまう傾向が一部に見られたのは、残念なことといわざるを得ない。
また現実問題としてすでに連合の政治方針を最重要課題として討議中であるため、春闘を巡っての論議は中断している。それでも春闘ヤマ場直後の主要単産幹部の問題意識をみると「横並び要求基準」や「産業別統一一闘争体制」の抱える問題点から労働組合運動の未来まで幅広いものがある。
今後参議院選挙後の新たな政治情勢の中で迎える各単産大会での、トータルな論議の再開に期待したい。(大阪 0)

【出典】 青年の旗 No.175 1992年5月15日

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