【コラム】ひとりごと –本音と建前–
建前と本音といいます。「暮らしの手帳」の編集長であった花森安治氏は生前、若い編集局員達に対して「諸君、建前を大切にしたまえ」とよく言われていたそうです。雑誌「一銭五厘の旗」で読売文学賞を受賞された花森氏が生きておられたら、憲法、自衛隊を巡るこの頃の諸政党、労働組合などの言動にどのように言われるでしょうか▼我々凡人が建前を下ろす時、それを正当化するかのように、よく口から出る言葉が「しょうがない」です。思えば私も、この都合のよい言葉に何度救われたことか▼5月いっぱいで休刊(廃刊)となる朝日ジャーナルに、「東京発」と題して、日本に滞在する外国人ジャーナリストが書いた原稿を翻訳したものが掲載されています。今年に入ってから掲載された原稿ですが、米国人の女性の方が、日本から世界に広まりつつあり、人類を滅ほす恐るべきものとして、日本人のこの「しょうがない」を取り上げ、批判されていました▼彼女は納得のいかないことも「しょうがない」の一言で受け入れてしまう日本人のこの行動・思考を、ユーlモアたっぷりに厳しく指摘されていました▼なるべく I「しょうがない」という言葉を使わないで生きていきたいと思います。(W.K.)
【出典】 青年の旗 No.175 1992年5月15日