【投稿】P K O法案に思う

【投稿】P K O法案に思う
                           —国際貢献する生き方のできる国へ—

Ⅰ私は現在国会で審議されているPKO法案に反対です。それは、国際社会に対して自分はどのような貢献をすることができるのか一人一人が考え、それを実践するという機会を、国民(市民あるいは民衆と呼びたいところですが、この1億2千万人を考えた時に、いまいちそう呼ぶことに違和感を感じますので、とりあえず国民と呼びます)から奪い、「何かやらなきゃいけないとは思うけど、自分で考えるのは面倒だし、実際にやるのは億劫だし、とりあえずここは自衛隊にでも行ってもらって(行かせてというべきか)、まあ格好だけでもつけとこう」というような安易な考えと行動に国民を至らしめる、と思うからです。
国際貢献といっても、いろいろなことがあって、実は全く普通の人々でも行えるようなことが結構あるんではないかと思います。海外でのボランティア活動に参加する、青年海外協力隊に参加するとか、外国で災害などがあった時に緊急に医療活動に出掛けて行くなど、やってみようとする人々は結構いるんではないかと思います。けれども問題になるのが、海外に出掛けてボランティア活動に参加している間の収入、帰国してからの就職、お医者さんが一時的に海外の被災地に出掛けて活動している間の担当していた患者さんのケア、そのお医者さんが帰国してからもまた以前と同じような患者さんを抱え収入を維持していけるかということなどではないかと思います。2~3年間海外でのボランティアに参加している間、休職扱いにし、それまでの年俸の何割かを支給し続けて、帰国後は復職させる、というようなことを行っている企業も近頃はいるようです。こういうことを行っている法人や、青年海外協力隊の経験者や海外でボランティア活動をやってきた人々を積極的に雇用するというような法人を例えば、税制度上優遇するというような制度を作るとか、お医者さんが緊急に海外の被災地に援助に行けるような社会システムを作れば、もっと多くの人々が、個人で、自発的に、海外へ出掛けて行き、いわゆる国際貢献するのではないでしょうか。(もっとも青年海外協力隊については、出発する前に、3カ月程みっちりと研修が行われて、この研修を外部に委託していることもあって、皇国史観とでもいうような、日の丸、君が代の研修を行うところがあるので、その点は問題だと、全国協議会の場で指摘されました。)
また、街には外国人労働者が多数目につき、大学でも外国人留学生が、中曽根内閣時代の10万人受入れ計画に従って少しずつ増えているようですし、なによりも非常に多くの物を世界中のいろいろな国から輸入し、また非常に多くの商品を世界中へ輸出しているわけで、日常のいたるところで世界と接触しているわけですから、別に国外へ出掛けなくても国際貢献できることはあるのではないでしょうか。
国民一人一人が自発的に国際貢献に参加できるような制度、システムを作ったり、一人一人が自分になにができるか考え、実践していくことを支援することをまず政府は行うべきだと思います。

Ⅱ ①国際貢献などといいますけれど、基本的にその社会や教育システムが、ボランティア活動などに自発的に参加し、世界の様々なことを見聞きしてきた人を有用な人材であると見なすような社会」「公なるものに私心なく貢献することが貴ぶべき生き方であると見なすような社会」になっていなければ、言葉の通り国際貢献する生き方のできる国にはなれないように思います。残念ながらこの日本に存在するのは,「少しでも効率良く、少しでも多く金儲けのできる人が有用な人材である」とみなすような社会であって、そのような人材をより効率良く選別し、育てる教育システムではないでしょうか。国際貢献といわれた時に、何をやったらいいか、どうやったらいいか、すんなりと頭に浮かんでこないで、結局声の大きな人々が言うことを受け入れていくというのは、やはり現在の日本の社会、教育の在り方に問題力盲あるからではないでしょうか。②九州地方で昨年の台風19号で倒れたままになっている木を除去するために陸上自衛隊西部方面隊が動員されています。昨年の台風19号による九州地方の山林の被害は甚大で(被害総額3900億円)、倒された木を早急に撤去しなければ、(山々の保水力が低下しているので)今後更に大きな被害が予想されること、一方、林業従事者は既に大幅に減少し、高齢化しており今のままの人員では倒木を撤去し、元のように木を植えていくのに30年はかかるといわれていた中で、梅雨時を前にして、九州四県の知事が自衛隊に出動を要請したものです。風倒木撤去にあたる隊員は後方支援部隊を含め1万1千人、長崎・雲仙に派遣されている200人を合わせると、西部方面隊(2万4千人)の約半数に上り、5月中に予定されていた演習や訓練は全て延期されたということです。
こういう報道を見て、妻は「そうだ自衛隊はこういうことだけをやってればいいんだ」などと言いますが、私は素直にうなずけません。
自衛隊がこの様な、災害援助や、復旧作業のみを行うようになった時、当然その時には自衛隊という名杯も変わっていると思いますすが、最低限その活動に必要な人員を集めることができるだろうか、不安です。林業労働を行う人々が減っているのは、やはりその仕事がきつく、収入もあまりよくないというのが大きな原因ではないでしょうか。こういったきつい仕事、災害捜助や、復旧作業を専門とするところに若者が集まっていくでしょうか、不安です。もちろん、このような仕事に生きがいを見出だす若者もいてくれるだろうと期待しますが‥・。ここでも社会のあり方、教育のあり方が顔を出します。
楽じゃない災害復旧に駆り出され、今度は(自衛隊に入隊した際には考えてもいなかった)海外の戦場にまでPKOで駆り出され、危険に晒される。そうなれば自衛隊を辞める人が増えたり、入隊希望者が減少するかもしれません。けどそれを単純に、「自衛隊の縮小につながってよい」と考えてよいのか、複雑な気持ちです。
③津田塾大学のダグラス・ラミス教授が「日本という国は47年間も、国家の意思に基づく戦争で人殺しをしていない、これはとっても大事なことだ」と主張されています。そう言われてみれば、周囲には(70才前後以上の人々を別にすれば)、戦争に行って人を殺してきたとか、戦争に行って傷付いてきたという人はまずいませんし、そんなことを考えてもみませんでした。これはとてもラッキーなことで、こういう日本のラッキーな状態を、世界中の人々に体験してもらうようにすることこそが国際貢献だと思います。
ところで、「自衛隊をPKOに行かせて国際貢献させよう」などと考えている人は、自衛隊員がそのことによって、人を殺し、あるいは逆に負傷、死亡する危険もあるということを理解しながら言っているのでしょうか。防衛大学や防衛医科大学はともかく、一般的大多数の自衛隊員は世の偏差値至上主義教育においては、決して「エリートコース」を歩んでいるとはいえない人々だと思います。ここでもやはり社会のあり方、教育のあり方が顔を出します。「自分さえ良ければ、他人様はどうなっても知らない、ましてや自分より偏差値の低かった人間のことなど・・」とばかりに、実際に自衛隊員がPKOに派遣された時のことに想像力を発揮できないとしたら残念なことです。

Ⅲ 以上のように、全国協議会の場でとりとめもなく発言しておりましたら、「暗いな~」と言われてしまいました。確かに暗いと思います。
ダグラス・ラミスさんは(湾岸戦争の時)「アメリカでは万とか10万単位が集まっても、政府は戦争する。日本で数百人しか集まらなくても派兵を止められる。日本の平和運動 は、・‥一番最後の大事なところで、人を殺すことを止めているというところで成功している。」と、日本の「全体社会の(戦争しないのが当たり前になっているという)平和常識」を高く評価されています(毎日新聞、週間エコノミスト6月16日号インタビュー)。
こんなふうに日本の平和運動を持ち上げられても、私はやっぱり暗いです。47年間まがりなりにも守ってきた国のあり方が大きく変えられようとしている、しかも憲法の内容が、憲法の下位にあたる一本の法律によって、変えられようとしているわけです、全く整然・粛々と!。来るべき参議院選挙では、PKO法案に対する世論の反撃を受けて、自民党は(限りなく願望を込めて)大敗してほしいナァ~。今日(6月11日)衆議院PKO特別委員会で法案が可決されました。本日のニュースステーション電話アンケート調査では(細川・日本新党がらみのアンケートですが)、自民党支持率は10日ほど前より2ポイント上昇しました………ア~なんだこりゃ。
(悩める私にあなたのカンフル剤=ご意見を  W.K.)

【出典】 青年の旗 No.176 1992年6月15日

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