青年の旗 1977年5月15日 改題3号

青年の旗 1977年5月15日 改題3号

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【主張】 地域・産別闘争強め、企業主義の克服を

<三たび実質賃金を維持できなかった七七春闘>
春闘最大の山場である公労協のストが、賃上げ一万三千六百六円、九.一二%で収拾され、今年の春闘相場は、昨年とほぼ同率の九%弱になることが確実となった。これは、政府発表の三月末物価上昇率九・四%さえ下向り、今年も実質賃金を維持することがおぼつかなくなった。
今春闘の評価についてマスコミでは「勝ち負けなしの引分け春闘」だと宣伝されているが、果してそういえるのだろうか。
資本が「ヒゲ一本余計な感じがするがこれで労使関係がうまくいくなら問題ではない」(桜田日経連会長)と安どし、政府も「合理的な賃金決定という方向にさらに歩を進めることができた」(石田労相)と積極的な評価を下している時、労働陣営も「まずまずの成果」だと自画自賛していられるのか。
七七春闘は、山場を越したとはいえ、中小労組の大半が五月に闘いをもちこし、困難な闘いにとり組んでいる最中に、七七春闘全般の評価を速断することを避けねばならないが、少くとも中間総括をするに当っては、今春闘のこれまでの経過の中から、次のような問題点を指摘しておかねばならない。

<七七春闘の経過と問題点>
第一に、IMF・JCの集中決戦が、一昨年の鉄と船のスクラム・トライ方式、昨年の四単産の集中決戦方式を経て、鉄鋼=JC主導型の賃金決定パターンが今春闘ではっきり定着してきた。当初、JC内部では、不況のさなかにある鉄鋼回答をいかに押し上げるかということから、下部組合員の不満の現れとして、自動車・電機の”先行論″が叫ばれ、春闘もこれを支持した。しかし、資本側の攻勢の前にアドバルーンは空中分解し、同時一発回答一万三千円(八・五%強)を許すこととなった。しかも、この鉄鋼回答は、例年以上にJC以外の民間単産に影響を及ぼし、食品・建設などもストなし、鉄と同時結着となり、私鉄や全金などの中小労組を除く民間全般に鉄鋼主導を貫徹させた。
第二に、私鉄総連は春闘史上はじめて、中労委依存をやめ、自主解決を目指し”事後対処”方式で今春闘に臨んだことである。結果は、賃上げ一万三千三百円(九・一八%)と一時金三万円である。解決一時金を合せるとかろうじて実質二桁アップとなるが、政府財界の圧力の前に自主交渉の眼界が露呈したことである。ここで最も注目すべきことは、資本が「将来は鉄鋼並みの一発回答に移行したい」と言っているように、独占資本・私鉄資本が、私鉄総連全体を同盟・JC路線へ合流させようとする狙いがあることである。そして解決一時金がそれへの移行の”アメ“であり、政府独占が狙っている公労協の完全な孤立への道であることに注意しなければならない。私鉄と国鉄を結ぶ交運共闘が、わが国で最大の力をもつ産別共闘組織であり、同時に官民結合のつなぎ目になっていることから、交運産別の強化を改めて強調する必要がある。
第三に、公労協は単独ストを打ち抜く中で一万三の千六百六円(九・一二%)の賃上げで妥結した。この内容は、当初内示された”民間準拠”方式による一万三千四百円(九・〇%)を拒否し、物価上昇率率を上回る要求を主張した結果である。最終的には″民間準拠″の枠で妥結したが、この枠をこえる独自の主張でストを打った意味は、JC主導からの脱出を試みる第一歩として評価できるだろう。しかし、公労協単独ストでは、政府・財界の壁は厚く物価上昇分にも満たない賃上げで収拾せぎるを得なかった。
第四に、産業・業種別・企業規模別に賃上げ格差が拡大し、企業の支払能力の枠内で賃金が決まる傾向が増大したことである。とくに、未曽有の倒産攻撃と雇用不安にさらされている中小企業労組では鉄鋼回答にさえ至っていない組合が続出している。ここ一・二年不況下でも先行して高額回答を引出してきた全国金属は大阪地本も含めて、一万二千円台(八%台)に停迷し苦戦を強いられている。
以上から言えることは、今春闘を全体としてみればストなしの鉄鋼・JC主導型春闘が貫徹したことからも明らかなように、″引分け″春闘といった状況ではなく、むしろ三連敗したといった方がより正確な評価になるだろう。

<闘いの教訓と今後の方向>
しかし、春闘が敗北したか引分けであったかを論ずることが、我々の春闘総括の中心に置かれるべきでない。我々が最も見なければならないは春闘の中で、日本の労働運動の積年の病弊ともうべき企業主義をどのように克服しえたのか、少なくともそのための萌芽がどのように芽生えているかについてである。労働組合の階級的強化に向けて、真の「産別自決」にふさわしい闘争力を身につける方向で前進しえたのかどうかである。
労働者の置かれている状況が厳しいだけに、この方向に向けて生み出された闘いに、たとえ、それが部分的なものであっても注目しなければならない。そして、その闘いを教訓化し、全労働者のものとして闘いの展望を示していく必要がある。そのような闘いの事例として次のような闘いがあげられる。
(1)七五春闘で大阪に端を発し、今春闘でも地域春闘の中心課題として全国的に取り組まれた地域最賃闘争、(2)春闘共闘委の「産別最賃に関する中間報告書」で方向が正しく提示され、私鉄・電通共闘・全日塗・全金・全自運などがとりくんでいる産別最貨の協定化闘争、(3)全国金属を中心に展開されている使用者概念拡大と中小企業の背景資本に対する雇用保障の闘い、(4)全国港湾の産別団交権確立、産別年金制度、共同雇用制の闘い、(5)全金兵庫地本の「完全雇用協定」の闘い—これらの闘いは、まだ部分的な開いにせよ、大きく拡大していることは事実である。とくに、ここであげた闘いは、地域最貨闘争に示されるように闘争継続中である課題が多く、これらの闘争の前進に全力をあげてとりくむ必要がある。
われわれは、このような闘いに取り組む中から、一歩一歩、階級的な産別組合形成に向けて力を蓄積してゆかなければならない。

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