【投稿】選択迫る「平和か戦争か、対話か対決か」

<<抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会>>
9/3、中国・北京で開かれた「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」で、習近平国家主席は、その冒頭演説で、「人類は再び平和か戦争か、対話か対決か、ウィンウィンかゼロサムゲームかの選択を迫られている」という言葉を強調した。
もちろん、選択は、「世界は平和を求め、戦争を望まない。対話を求め、対抗を望まない。ウィンウィンを求め、ゼロサムを望まない」と断言している。
演説は最後に、「新時代の新たな道のりにおいて、全国各民族は中国共産党の力強い指導のもと、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」重要思想、科学的発展観を指導思想として堅持し、新時代の中国の特色ある社会主義思想を全面的に貫徹し、中国の特色ある社会主義の道を揺るぎなく歩み、偉大な「抗戦精神」を受け継ぎ発揚し、精神を奮い立たせ、勇敢に前進し、中国式現代化によって強国建設と民族復興の偉業を全面的に推し進めるために、団結し奮闘しましょう。」と結んでいる。

この記念大会には、駐中国米国大使のデビッド・パーデュー氏は、出席を辞退したが、

多くの来賓や各国首脳に加え、オーストラリア、日本、ニュージーランド、ベルギー、イタリア、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニア、スイス、ブラジルの元指導者や政治家も出席している。

そして、北京市中心部の天安門広場一帯で5万人を超える観衆を前に、展開された大規模な軍事パレードでは、プーチン大統領や金正恩総書記らも見守る中、1万人以上の兵士が動員され、中国の増強・近代化された軍事力を誇示するかのように、次から次へと新兵器が公開された。
 米本土を射程に入れ、核弾頭が搭載可能なSLBM=潜水艦発射型の弾道ミサイル・「巨浪3」など、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル、新型の極超音速ミサイル、それに無人戦闘車両のほか、4足歩行のロボット兵器まで相次いで公開し、中国の軍事力の増強が並々ならぬものであることを国内外に強くアピールしたのであった。
結果的にこのパレードは、単なる歴史的記念行事ではなく、米一極支配崩壊過程での地政学的なパワーバランスの急速な変化と中国の軍事力の強大化を印象付けたものと言えよう。

<<トランプ:「歴史的な方法で軍を再建、抑止力の再確立」を指示>>
9/3、この事態に慌てたトランプ米大統領は、北京で記念式典が行われている最中に、自身のプラットフォーム・Truth Social で、習近平国家主席に対し、「素晴らしい、そして永遠に続く祝賀の日」を祝す、と言いながら、「あなた方はアメリカ合衆国に対して陰謀を企てている」として、習近平主席、プーチン大統領、金正恩委員長を陰謀家として描いたのであった。
 トランプ氏はさらに、ラジオインタビューで、「もし彼らが米国に対する軍事行動を検討すれば、それは彼らにとって最悪の事態になるだろう」と述べ、アラスカでのプーチン大統領との首脳会談がウクライナ停戦の仲介に失敗したことについて、プーチン大統領への失望を表明している。
同じ9/3、米国防総省のピート・ヘグゼス長官は、FOXニュースのインタビューで、ヘグゼス長官は、北京で行われた中国の大規模な軍事パレードについて、「残念ながら、前政権の弱さがロシアと中国の接近を招いた。これは、アメリカのリーダーシップと力の欠如による、恐ろしい事態だ」と述べ、「しかし、だからこそトランプ大統領は国防総省に対し、備えを万全にし、歴史的な方法で軍を再建し、戦士の精神を取り戻し、抑止力を再確立するよう指示したのだ」と、大統領の指示を確認、「米国はロシアや中国との対立を望んではいないものの」、「戦略的優位性を維持する」ことを目指していると明言したのであった。
これは、新たな軍拡競争再開宣言、とも言えよう。

求められているのは、新たな軍拡競争の再開ではなく、対話と緊張緩和と平和外交、そして軍縮なのである。そのためのイニシャティブこそが、トランプはもちろん、習近平、プーチン、金正恩にも突きつけられているのである。
(生駒 敬)

 

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