【投稿】原発の使用済み核燃料の行き場所がない

【投稿】原発の使用済み核燃料の行き場所がない

福井 杉本達也

1 重大事故を起こした前歴のある美浜原発を建て替え?

関西電力が美浜原発での次世代型へのリプレース(建て替え)の検討に向け、2011年に中断した1号機(15年に廃炉)の後継炉設置を巡る自主調査を再開する方針を固めたことが18日、関係者への取材で分かった2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、建て替えに向けた動きが具体化するのは圏内初となる(福井:2025.7.19)これに対し、原子力規制委員会の山中伸介委員長は29日の同原発視察後、「近くに大きな活断層があり、敷地内にも多数の断層がある」とし、改めて慎重な調査を求めた。山中氏は「関電の三つのサイト(美浜、大飯、高浜)の中で(美浜は)地質に困難さがあるだろう」との見解を示した(福井・2025.7.30)。

周知のように、美浜原発は関電では最も古い原発である。既に美浜1.2号機の廃炉が決定している。美浜3号機は運転開始から40年を超えた原発として2021年6月に全国で初めて再稼働したが、3号機は2004年8月、「2次系配管」が破損して高温の蒸気が噴き出し、作業員11人が死傷する事故を起こしている。2階の天井付近にあった金属製の2次系配管(外径約56センチ)が破裂した。約140度に加熱された蒸気が一気に噴出。定期検査の準備などをしていた作業員が浴び、やけどなどで5人が死亡、6人が重傷を負った。76年の運転開始以来全く点検がなされず、厚さ約1センチの配管は、水流により、事故時には0・4ミリにまで薄くなっており、水圧に耐えられなくなったためである(読売:2021.9.7)。このような前歴のある発電所を建て替えするとはもってのほかである。20210907★読売「40年超」美浜原発3号機、過去には11人死傷する事故…140度の水が配管破り噴出:写真 _ 読売新聞

 

2 原発の建て替えなんてできるのか?

2011年3月に事故を起こした福島第一原発は、14年を経た現在でもそのままである。メルトダウンした炉心には大量の水が常時注入され続けている。その汚染水をALPSで処理したと自称する放射能汚染水は太平洋に垂れ流しである。大事故で周囲にまき散らされた放射能含む土地は除染されたというが、除染されたと称して「中間貯蔵施設」に一カ所に集められた土壌のうち、8000ベクレル以下の土壌を、環境“汚染”省は全国にまき散らせるべく、とりあえずは首相官邸に持ち込んだという(読売:2025.7.19)。汚染土は1時間当たり0.11マイクロシーベルトの放射線を出すが、年間被曝線量は1ミリシーベルト以下(0.11×24H×365)なので問題ないというのが環境“汚染”省の見解であるが、全くのパフォーマンスである。放射能汚染土を進んで受け入れる自治体などない。

もし、廃炉した原発を解体・撤去するとなれば、原子炉を取り巻くコンクリートや放射能に汚染された金属配管など膨大な廃棄物が出る。これを、知らないうちに埋めてしまおうというのが環境“汚染”省のやりかたである。だれが好んで年間1ミリシーベルトも確実に被曝するような公園や遊歩道のベンチで休憩するだろうか。

核エネルギーを発電に使う場合、そのエネルギーの三分の二を温排水として外部に捨てている。大量の海水で冷却している。化石燃料の燃焼などの化学変化においては数電子ボルトのエネルギー問題である。ところが、原子核現象で100万電子ボルトの問題である。ウラニウム核の核分裂から放出されるエネルギーは約2億電子ボルトである。分子現象とは比較にならぬ桁違いの巨大エネルギーが出される。この膨大な核エネルギーを化学変化レベルの工学技術で原子炉の中に閉じ込めようとしてきたのが原発である。それが地震によって破壊され、膨大なエネルギーが原子炉の外部に放出され、東北・関東の広大な地域が放射性物質で汚染されたのであり、我々の時間間隔では元には戻らない。

 

3 コバンザメ商法のクリアランス準備会社

美浜原発建て替えの動きに合わせ、福井県や関電が「福井県原子力リサイクルビジネス準備株式会社」を設立した。廃棄される金属類を集中的に溶融処理して再利用につなげる構想であるという。「クリアランスは、放射能レベルが極めて低く健康への影響がほとんどない廃棄物を、国の認可・確認を得て一般の産業廃棄物として再利用、処分できる制度。県の構想では、複数の原発から鉄やステンレスの廃棄物を集め、除染や分別、切断、溶融、測定・評価を集中的に行う。地元企業が元請けに近い立場で処理業務を受注できるようにする」というが(福井:2025.8.2)、他の金属と混ぜて放射能レベルを抑えようというもので、もし、このような試みが実施されるならば、購入したマンションの鉄筋から24時間放射線被曝を受けるという社会が来ないとも限らない。

 

4 行き詰まる六ケ所村の再処理工場

全国の原発に使用済み核燃料がたまり続けている。福井県内・関電の3原発にある貯蔵プルは、2025年2月末現在で全容量の87%が埋まっている。数年で満杯となる。使用済み核燃料を他に搬出できなければ原発を稼働し続けることはできない。1997年に当時の栗田福井県知事は使用済み核燃料を2010年をめどに県外に搬出するよう求めた。しかし、関電は県外搬出計画を誤魔化し、2025年2月、再処理工場の使用済み核燃料の受け入れが始まる28年度からの3年間、関電は他の電力事業者と調整し受け入れ枠の約6劃を確保。28年度に78トン、29年度に66トン、30年度に54トンを排出する計画を立てた。また、フランスへの搬出を27~29年度に高浜原発から200トンに加え、30~31年度に100トン、31年度以降に大飯原発から100トンを運び出すとしている(福井:2025.2.14)。海外への再処理委託が、どうして県外への搬出か理解に苦しむ。そして、より重要なのは六ヶ所村の再処理工場が動かなければ関電の県外搬出計画は絵にかいた餅となる。関電の3か所の原発は使用済み核燃料

が満杯になることによって稼働停止せざるを得なくなる。

7月17日、武藤経済産業相は杉本福井県知事に対し、使用済み核燃料の主な搬出先となる再処理工場(青森県六ケ所村)の2026年度内の完成目標実現ヘ「官民一体で責任を持って取り組む」と強調した(福井:2025.7.18)が、国主導の原発の再稼働計画の破綻は明らかである。

カテゴリー: 原発・原子力, 杉本執筆 パーマリンク