【投稿】ブッシュに翻弄される親米国家

【投稿】ブッシュに翻弄される親米国家

<グルジアの悲劇>
 8月8日、ユーラシアの東端で灯された聖火をあざ笑うかの様に、その西端で戦火が吹きあがった。南オセチアに侵攻したグルジア軍は、州都ツハンビリを一時制圧、オリンピック開会式に合わせたと思われる奇襲作戦は成功したかに思われたが、ロシアのプーチン首相は北京から直ちに反抗を指示し、ロシア軍の攻勢が開始された。
 それは、南オセチアに駐留する「平和維持軍=ロシア軍」への増派に止まらず、グルジアに対する陸海空からの本格的な攻撃となり、瞬く間に形勢は逆転した。
 ロシア軍がグルジアの幾つかの拠点を支配下に置いた段階で、フランスによる和平交渉で停戦とロシア軍の撤退が合意され、大規模な戦闘はひとまず終結し、聖火が消える前に戦火が消えることになった。
 そもそも、グルジアはソ連崩壊による独立後、シュワルナゼ政権下でCISにとどまったが、サーカシビリ政権成立後に急速に親米化、積極的にイラク派兵をすすめるなどし、コーカサスにおける「ブッシュのポチ」の地歩を揺るぎないものとし、NATO加盟をめざしてきた。
 アメリカも軍事顧問団を派遣するなど、政権と軍の強化を図ってきたことからして、当然グルジア軍の南オセチア侵攻作戦を事前に察知しても、見て見ぬ振りをする「暗黙の了解」を与えていた可能性が指摘されている。
 サーカシビリ政権としては、そうした「阿吽の呼吸」により侵攻1,2日の段階で、アメリカの積極的な介入を期待し、南オセチアの実効支配を既成事実化する目論見であったと考えられるが、結果的にブッシュに梯子を外された結果となった。
 ブッシュはプーチンとは対照的に、北京でオリンピックを楽しんでいたようだ。今回の紛争で、アメリカはロシアを厳しく非難し、グルジア支持を世界に向けてアピールしている。しかし軍事介入は行わず、人道支援と黒海への艦船派遣というパフォーマンスにとどまっている。
 今回の紛争がもう少し長引けば、グルジア軍は壊滅的打撃を受け、政権崩壊も免れなかっただろう。現時点でもグルジア内の親露勢力台頭と、政権弱体化が進行しNATO加盟は遠のくなど、得るものは無かったと言っても過言ではない。

<明日は我が身の日本政府>
 これを対岸の火事と見てはいられないのが日本政府である。米軍再編に伴い在日米軍の任務も「対テロ戦争」にシフトされ、自衛隊もその作戦支援へと役割が変わり、日米安保自体が変質しているにもかかわらず、自民党の一部などには、周辺国と武力衝突が勃発した場合、アメリカ軍の支援を期待する向きがある。
 しかしアメリカは今後も中国に対し敵視政策をとることはないだろうし、すでに対北朝鮮政策で、日本はブッシュ政権から突き放されている。テロ支援国家指定解除は、延期されているが、その理由はあくまで核計画の検証方法を巡る問題であって、拉致問題ではない。また、竹島問題に関してもアメリカ政府地名委員会は、一度は帰属未確定としたものの、再度韓国領と記載することに決定した。
 日本政府は国民を犠牲にして、莫大な予算と軍事基地を提供し、さらにはイラク、インド洋派兵などを推し進めているにもかかわらず、この有様である。次期臨時国会において新テロ対策特別措置法改正案=「給油法案」を衆議院での再議決で成立させ、一層の軍事貢献を図ろうとする目論見がある。
 ところが開会中にアメリカ大統領選挙(11月4日投票)は、2000年のような事態にならない限り、終わっているわけで、その結果如何で国会運営はきわめて難しくなるだろう。
 こうした展開が想定される情勢にあっても、明確な外交政策を指し示すことなく、漂流するかのような政権運営を続ける福田政権が、完全に国民から見限られる日は近いだろう。(大阪O)

 【出典】 アサート No.369 2008年8月30日

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