青年の旗 1978年6月1日 第16号

青年の旗 1978年6月1日 第16号

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【主張】 企業主義の克服へ—現実的政策の確立を—

<なにが問われているのか>
七八春闘の敗北をめぐつて春闘方式の再検討も含めた活発な論議が起っている。
五月十九日の総評拡大評議員会での総括論議では、全電通をはじめとして春闘見直し論が活発に出され、春闘方式の継続か全面的見直しかをめぐって意見がまとまらないままに、「春闘問題検討委員会」を設けて討議の継続をはかることになった。一方、日経連も同日の集会で、今年の春闘はおおむね妥当な線での賃上げ結果になったと評価し、「相場依存の考え方が崩れ、自主決定の傾向が強まり、春闘方式を見直す時期にきたとの認識が労組も含めて生まれた」(日経5・22)ことを重視している。日経連の方針を受け関経協では二年間の中期賃金協定を提唱し、春闘否定を明確に打出してきている。
春闘方式は、労働市場が逼迫していた高度成長期においてこそ相場形成力をもちえたとしても、深刻な雇用不安を伴う不況期においては、企業主義が前面に現れ、低位平準化にならぎるをえない性格をもつものであった。七五-八春闘の経過はこのことを如実に示している。その意味で労働運動に、今問われているのは、春闘方式であるというよりは、春闘方式をとらざるをえなかった企業内労働組合という体質的な弱さそのものである。従って、この弱点をいかに克服するかという論議をぬきにして、春闘方式だけの是非を論ずるのは木を見て森を見ない論である。

<企業主義の克服と産別最賃・横断賃金の確立>
問われているのが日本的企業内組合だとすれば、企業内組合から産別組合に向けての展望が今こそ大胆に語られねばならない。三年程度の春闘の″中期展望”という槇枝提案も単に春闘に関する展望にとどまらず、この労働組合の階級的再生の課題に向けての展望と結びつけて提起されねば、春闘の一層の後退を招きかねない。
企業主義を克服し、賃金の低位平準化に歯止めをかける上で当面の最重点課題は産別最賃制の確立である。産別最賃は、産別交渉と産別協定が前提であり、産別の闘争態勢の強化が不可欠である。そして産別最賃の基礎の上に職種・年令別の個別横断賃金を確立することによって、産別組合への移行の物質的基礎が築かれるといえよう。
全電通が提起した物価スライド制とそれに伴う春闘方式の見直しは、スライドの基礎となる賃金の横断的な平準化が前提であり、それとの結合ぬきには実現困難である。また、春闘方式についても、中小労組の大半が五月闘争に突入し、平均六・七%という大手を上回る平均賃上げ率を獲得した事に示されるように、春闘の意義はなお強く掛っている事から、当面春闘方式を堅持すべき事を強調しなければならない。

<夏季一時金、最賃、スト権奪還、雇用拡大闘争に全力を>
保守巻き返しと春闘連勝に自信を得た政府・独占は反動攻勢を強め、労働運動に対しては、スト権剥奪を続けるだけでなく国労への刑事罰適用も含めた露骨な弾圧態勢でのぞもうとしている。労働運動は、次の当面する重点課題に直ちに取り組まねばならない。
第一に、三カ月以上の夏季一時金を獲得すること、額はもちろん、率でも昨年を下回らない一時金を獲得せねば実質年収ダウンを招きかねない。春闘で値切られた分までとり返そう。
第二に、地域最賃の引上げ闘争に全力を上げること、特に、今年は中央最賃審から″目安″が出されるだけに待機姿勢に陥ることなく、物価上昇率を大巾に上回る、実質引上げになる金額を得なければならない。又、この地域闘争の発展のもとに、″目安”に対する全国闘争を展開しなければならない。
第三に、スト権奪還闘争に本格的にとりくむこと、来月中旬に公企体のスト権に関する答申が出る予定になっているが、すでにその内容は国鉄などにはスト権を認めない方向に固まったといわれ、むしろ、分割・民営移管などをセットした後退的案が準備されている。更に、国鉄ストヘの刑事罰適用の為の鉄道営業法改悪の動き(自民党総務会)や損害賠償の制度化などの動きも活発化し、闘う公労協を弾圧する事に全力を上げてきている。国際世論に押された世界人権宣言の批准もスト権を除くという反動ぶりである。全逓スト中止の痛手を早急に回服し、全労働者の力でスト権奪還に向けて直ちに反撃を開始しなければならない。
第四に、失業対策・雇用拡大闘争を強化することである。景気の部分的な回復が言われている中でも、雇用状況は改善するどころか、むしろ悪化しているのが実態である。労働省が、春闘が終了した後アドバルーン的にあげている週休二日制・時間短縮による雇用拡大、福祉型の職業分野の拡大による雇用拡大という二本柱は労働運動の力で現実化させねばならない。
また、今春闘の地域闘争としてとりくまれている雇用保障協定や、自治体による雇用条例の制定を求める闘争なども、これから取りあげてゆくべき課題となっている。

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