青年の旗 1980年2月1日 第36号

青年の旗 1980年2月1日 第36号

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【主張】 アフガン問題とカーター・ドクトリン

<革命転覆に失敗した米>
アフガニスタンヘのソ連軍進行を契機に、今までになく〝ソ連脅威″論と反ソ煽伝の音量が高まっている。国連での「外国軍撤退」決議採択によって、ソ連は第三世界からも見はなされ、世界的に孤立したとさえ言われている。しかし、アフガンで失敗したのは、米であり、中国であり、勝利したのは、アフガニスタンであり、ソ連である。我々は反ソの洪水の中から、冷静に真実のみを拾い上げねばならない。
アフガニスタンヘの帝国主義者の挑発は、七八年四日の革命勝利の日から始まっている。七九年春にはワシントンでアフガニスタンヘの”秘密干渉″が討議され、パキスタン国境でのCIAの活動が活発化し始めていた。パキスタン国内には、反革命派の訓練のための十二ケ所のキャンプが設けられ、約五千名の破壊工作者が謀略活動の訓練を受けていたのである。
又、このテロリスト集団は、中国でも猛訓練を受けていた。パキスタンと中国を結ぶ新しいカラコルム公路が破壊工作分子の投入に利用され、反政府分子には最新の中国製軽機関銃と自動小銃を供給されているのである。
これら外からの挑発と呼応して、内部の裏切り者・アミン一派が、タラキ大統領を殺害し人民民主党員を中心にした何万人もの市民を政治犯として投獄し、革命をもっとも困難な局面に落し入れていた。
従って、逆言すれば帝国主義と中国はアフガニスタン革命の転覆を、今一歩の所にまでこぎつけていたのである。
この危機を予想し、直面していたアフガニスタン救府は、アミンの時でさえ再三再四ソ連に援助を要請し続け、ソ連は可能な眼り平和的解決のため努力し続けて釆たが、今日に到り、これ以上黙視すれば、チリの二の舞いになりかねないという判断のもとに、外部の武力干渉の一掃にのみ目的を限定して、ソ連軍を進行させたのである。

<中東の軍事支配こそ狙い  —力-ター・新ドクトリン—>
目前にして大魚を逃したカーターはヒステリックに「ソ連の武力干渉だ」とがなりたて、かろうじてイスラム諸国を両側につけ、反ソ軍事包囲網をめぐらすことによってポイントをかせごうとしている。
ソ連への”制裁”として、米国沿岸水域での漁業禁止、穀物輸出制眼、モスクワ五輪ボイコット等を同盟諸国に呼びかけている。しかし、もっと危険なことはこの機会に軍事力によって中東支配を試みようとする、″カーター・ドクトリン″である。
それは、一月二十三日の一般教書で発表され、″中東安保″構想とも呼ばれている。この構想の柱は、①今後五年間に九十億ドルの巨額を投じて創設する部隊と、そのための選抜徴兵制度の復活②中距離核戦力の欧州配備を通じたNATOの強化、③インド洋・北アフリカ・ペルシャ湾岸地域での海・空軍基地の建設等である。
ここで大事なことは、この”カータードクトリン″が、ソ連けん制を看板にしながら、実は中東諸国へむけられていることである。「中東へのソ連の脅威以前に、油田地帯を脅かしているのは、こうした各国内の内部不安だという見方が強い。米軍事力の中東進出は、こうした国内不安が内乱や革命に発展しないようにラミをきかすねらいも大きいことを、米政府も認めている。」のである。
とすれば、米国は中東で再びベトナム経験を繰り返す危険もあるし、勢い、アラブ諸国の不安と反発はつのっている。シリア、ヨルダン、PLOは勿論のことサウジアラビアでさえ基地供与を拒んでいる。アラブ諸国の支配者たちは、国内の親ソ派や民衆の胎頭におびえつつ、やはり、一番恐しい存在が米国であることを、歴史から学びとっているのである。
米国内でも、ケネディーが批判するなど、デタントの流れに逆らうこのドクトリンは、決っしてカーターの思惑通りに進むものではないだろう。

<米の冷戦外交に加担—大平施政演説—>
日本に対し、カーターは、ヤクートの天然ガス事業、サハリン大陸棚の石油・天然ガス開発等の日米協力計画の中止とそれに関連した対ソ信用供与の停止を要求している。
そこで、大平はおどおどしつつではあるが、はっきりとカーターの反ソ冷戦外交に相乗りしようとしている。施政方針演説(二十四日)では、「犠牲をともなうものであっても、避けてはならないしと決意を表明し、ココムによる輸出規制の強化、文化協定交渉の凍結等を打ち出している。又、アフガニスタンに対しては農業機械購入のための八億円援助を拒否し、自国製原爆実験を計画しているパキスタンには、二〇〇億円も惜しみなく供与するのである。
しかし、大平のこの道は、ベトナム戦争時に最後までひとり米国を支えて、外交方針を誤ったと同じように、結局カーターに振りまわされ、多大の損失をこうむることになるだろう。しかし、何にも増して、アソアと日本の人民にとって、危険で重要なことは、再び軍事緊張が拡大され、平和がおびやかされることであり、平和を守る闘いがいよいよ急務となっている。

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