【翻訳】フランスは、如何にしてAUKUS協定で蚊帳の外に置かれたか

The Japan Times on Thursday, September 23, 2021
“How France was blindsided by the AUKUS pact” by Paris AFP JIJI

「フランスは、如何にしてAUKUS協定で蚊帳の外に置かれたか」

 今年6月、気がかりな懸案を抱えている両国の潜水艦契約への関心を持ってフランスのリーダー Emmanuel Macron は、オーストラリア首相 Scott Morrison をパリに迎えた。日の当たるエリゼ宮殿の階段での所見にて、Mr. Macron は Mr. Morrison に “dear Scott”と呼び掛けて、「契約を早く進めて、出来るだけオーストラリアの要望に応えたい。」と約した。Macronは、顧客がすり抜けていくのを心配する、少し不安そうな商人のように打診する一方で、Morrisonはこの画期的な取引―2016年に調印時は、50 billion Australian Dollar (US弗36.5 billion)―については、言及しなかった。彼は、フランスにおいて「世紀の契約」として知られていることについて、公には何も述べなかった。以来、このことが、西側同盟において亀裂を大きく広げていく。
 匿名という条件でMacronに近いある情報筋は、以下を認識していた。即ち、我々は豪州側が、この契約に懸念を抱いていることは聞いていた。それゆえに彼らの質問に答えるべく便宜を与え、彼らに心配ないとの保証を与えてきた。Macron大統領は、Morrison首相を招待するに、自発的に動かれた、と。他方、豪州の関心は公表する記録の事であった。即ち、増大するコスト、納期の遅れ、さらにより大きな懸念として、12隻の潜水艦が2030年始めに就航するに当たり、その目的に適合できるであろうか。 2016年に調印された時は、Canberra(豪州の首都)は在来のディーゼル推進の潜水艦を望んだ。しかし5年後、中国との貿易上の争いと、Beijing(中国の首都、北京)の太平洋を巡る独断的態度により、より長く潜水できる原子力仕様への声となって来ていた。

 [Summer of worries (心配事の夏)]
 フランス高官たちの会見では、すべてが契約通りに進んでいるパリの様子を描いている。
 ただ、9月15日公式発表の数時間前、パリは豪州がフランスとの取引を見捨てて、AUKUSと呼ばれる米国、英国との原子力潜水艦(以下「原潜」)のための協定を行っている、ということを知った。(訳者注:AUKUS:豪、英、米 三国の軍事同盟。2021年9月15日発足し翌9/16公表された。) パリにおける激しい怒りの感覚は、外務大臣 Jean-Yves Le Drian が叫んだ、Morisonの率直さの欠落に加え「二重人格」「裏切り」そして「背後から刺された」(”stab in the back”)と言う以上のものであった。
 Morrison 豪州首相は日曜日 (9月19日の日曜か— 訳者)に述べた。即ち、Canberraが「深く重大な懸念」を、以前よりフランス原潜に抱いていたことを Paris (フランスの首都)が気付いていたであろう、と。豪州の他の大臣たちが数カ月前にこの取引の問題点を取り上げていたと言いつつ。
 6月のエリゼ宮での会食で、MacronはMorrisonに、フランス海軍グループとの契約についての豪州の懸念の詳細について知らせるよう強く求めた。第三のフランス情報筋―彼はより詳しいことの提供を断った―によれば、全体として保守的な豪州人(Morrisonのことか―訳者)の訪問は、うまくいかなかった。 二週間前の6月2日、パリで豪州国防省の首席Mr. Greg Moriartyは、現行の難局ゆえに、この取引の可能性ある代案を示して、警鐘の準備としていた。 6月9日、フランス国防大臣のMrs. Florence Parlyは、豪州国防大臣のPeter Duttonに、明確化を求めて、大丈夫だとの、さらなる再保証を与えられている、と匿名を条件に第四の情報筋は述べている。また、6月の会食の後、MacronはMorrisonに手紙を出した。他方、仏国と豪州の役人、職員、技術者、軍関係者の連絡/交流は強化さていた。

 [Mysterious movements]
 しかしながら、一連の警報ライトはずっとまたたいていた。この月の初めの、気分を落ち着かせる言葉の後、豪国防大臣Mr. Duttonは、6/24のパリ訪問以来初めて「豪州の受け入れ能力」について取り上げた、と国防省筋は述べた。 パリの神経質を暗示するかのように、Washington駐在の仏外交官Mr. Philippe Etienneは、7月に関係会社、NSA(National Security Adviser), White House等、あらゆる地位の人々をチェックするよう指示を受けたが、何も見つからなかった、とある情報筋は述べている。
 緊張した話し合いの夏の後、下旬の会合がいくらかの安堵をフランスに与えた。
8月30日、豪・仏の国防・外務大臣たちが最初の合同会議をVideoで行った。種々案件の中で両者は共同声明に合意した、即ち「より深めた防衛産業の協力」と「将来の潜水艦計画の重要性の強化」について。 両者には、この二年間に討議してきている重要な段階、即ち”System Functional Review”の完成の軌道に乗っているという確信が出来てきていた。
 しかしながら、フランスの得心は短命だった。金曜日(Sept.10)になって、Canberraの大使がパリに帰って、異状なる展開を知らせた。豪州防衛・外務両大臣が、対面会議の為Washingtonに向かっていると。 仏側は、直ちに十分な警鐘を鳴らして米国務大臣Antony Blinkenと国防大臣Lloid Austinに説明を求めた。しかし両者とも仏側への応対を避けた、と5番目のフランスの情報筋は述ている。

 [Blow to the head(頭を強打)]
 Canberraがフランスとの契約を見捨てる、という爆弾ニュースの豪州新聞の第一報が、水曜日(Sept. 15)ヨーロッパ時間にもたらされた。フランスの役人たちは、毅然たる態度でこのようなやり方での決定について学んだ。
 「Morrisonは、契約の終了についての風評が、すでに新聞に出始めている時にMacron大統領に連絡を取ることを試みた」と、ある大統領側近は述べた。Macronは、事前のはっきりした説明なしに、その電話を取ることを断った、とその情報筋は述べた。Morrisonは、結局手紙を送った。その手紙が到着したのは、公表の数時間前であった。
 怒ったフランス役人と米国の相方の緊張した話し合いに置いて、米側は以下の説明をした。
 即ち、豪州が英国に接近した。そして、そのことがJoe Bidenの新しい米国の統治についての話を促進させた。 6月11,12日の7ヶ国サミットが英国で行われたついでに、Morrison, BidenとUK首相Boris Johnsonの三者対面の話し合いがもたれた。 Morrisonがパリに到着する3日前だった、と仏情報筋は見ている。
 そして、たとえBidenが、他の二人との共同声明に置いてAUKUSの協調/協力を発表したとしても、米国にとっては、非公式には、AUKUSとの協調をパリに伝えるのは、豪州の責任であった、と主張したであろう。
「先週は、頭を強打されたようだった。」ある仏の情報筋は言っていた。

[ 訳:芋森 ]

 

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