【翻訳】豪州の原潜商談について:リスクは何か

The Japan Times on Thursday, September 23, 2021
“Australia’s nuclear-powered submarine deal : What are the risks?”
By Washington AFP JIJI

「豪州の原潜商談について:リスクは何か」

米国の原潜を豪州に売るとの決定は、これから先の長年にわたりリスクを曝すものであり、しかも、この商談は、危険な核の技術の拡散を防ぐには、脆い取り決めである、と専門家たちは見ている。この商談は、非核の潜水艦の仏国より豪州への売却契約を破棄したが、Asia-Pacific海域へ投入するCanberraの軍事力を急速に手助けするであろう。
他方、このことは他の国々を勇気付けて核の技術を自由に売るのではないか、潜在的に核兵器を作れる国を増やすのではないだろうか?  

 [The uranium problem]
豪州は、最初は在来のディーゼル駆動の仏国の潜水艦を考えていた。このタイプの潜水艦は容易に探知されるし、数日ごとに電池のチャージの為に浮上しなければならない。原子力駆動の潜水艦は、数週間も海中に留まることが出来て、探知されず長距離を移動できる。ただ、乗組員の食料と水に制限があるも、最大3カ月潜水できる。米英海軍が運航している原潜はHEU (highly enriched uranium: 高濃縮ウラニウム)を使っていて濃縮度は93 %である。このレベルの原潜は燃料補給なして30年運航できる。しかし、これは強力な核兵器に必要とされるウラニウムの濃度と同じレベルである。
Mr. Alan Kuperman, coordinator of the National Proliferation Prevention Project at University of Texas, at Austin は、以下のごとく述べている、即ち、核拡散についての重大懸念の一つは、ならず者国家やテログループの手に、武器レベルの HEU が渡ることである、と。さらに同氏は”the Breaking Defense news site” に投稿している、即ち、そのような爆発物が敵対者の手に渡る一番ありそうな道程は、武器ではない原子炉の燃料からウラニウムまたはHEU を盗み、爆弾に変換することであろう、と。さらに彼は述べている、即ち、米海軍の原潜は、およそ100個の原子爆弾に相当するHEU を毎年使っている。これは世界の他の原子炉を合わせたより以上の量である、と。

 [Proliferation(拡散)]
たった6か国が原潜を保有している、米国、英国、仏国、ロシア、中国、インド。そしてこれらの国々は、核の技術と燃料の拡散を許すことに対して注意深く用心してきた。Mr. James Acton, Carnegie Endowment for International Peace は、述べている、即ち、米国の豪州への原潜の売却は、混乱の先例である、と彼は書き留めている。即ち、1970年に制定された核不拡散条約の下では、核兵器を持たない国々でも原潜を持つことは禁止されていない。そしてもしそれらの国々が望めば、所有した原潜から核材料を取り出すことが出来るであろう、と。 彼は Twitter で述べている。「これは大きな抜け道(“loophole”) である。」 豪州が核兵器を持つか否かに、私は強い関心を払ってはいないが、懸念しているのは、その他の国々が不拡散体制の潜在する「抜け穴」を利用する先例として、この米豪の原潜商談を使用するかもしれないということである、と。

 [Snowball Effect (雪だるま効果)]
Mr. Daryl Kimball, the Arm Control Association は以下のごとく述べた。即ち、米国の豪州への原潜の売却は、Washington 独自の核不拡散の原則への妥協である。それは、規則/規制を原則とする国際秩序において「蝕む効果 “corrosive effect” 」を持つ、と。
サキ報道官(White House spokeswoman Mrs. Jen Psaki)は、米国は今も不拡散を誓っている。豪州への売却は「例外であり前例を置くものではない。」と主張した。
しかし、専門家たちは、それは危険を孕んでいる、と叫んでいる。 Mr. Tariq Rauf, the former head of verification at the International Atomic Energy Agency は、この米・豪商談は、拡散のパンドラの箱を開け得るであろう、と述べている。そして、この組織は核関連協定の順守に助力している。さらに、この取引は、核の武器を持たない国々— Argentina, Brazil, Canada, Saudi Arabia or South Korea—に武器レベルの核燃料を与えうる原潜を購入すべく勇気付け得るであろう、とも述べている。
Mr. Hans Kristensen, the Federation of American Scientists は、拡散の雪だるま式効果になるのではと心配している。彼はまた述べている、即ち、ロシアは、その技術をインドに供与しうるであろうし、中国はパキスタン、その他の国に海軍用の原子炉技術を供給出来うるし、ブラジルは自国技術で行き詰っている潜水艦原子炉計画に取って替え,より楽な方法(購入すること)をも考え得る、と。

 [Safer Alternatives(より安全な代替案?)]
いくらか安全な代替案は、豪州が低濃度のウラニウム(LEU low-enriched uranium)を使用する原潜を調達することであろう、と専門家たちは述べている。 LEUは、20%以下のレベル濃縮度にて原子力発電所の燃料として使われている。原潜にては、危険で難しい工程ではあるが、10年毎に取り換えられる。このLEU技術は、仏国や中国の海軍にて使用されて、今も使い続けられている。 米国海軍は、LEUに転換するようとの圧力を受けて来ているが、まだそうはしていない。

                             [ 訳:芋森 ]

 

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