【投稿】総選挙の結果に思う事

【投稿】総選挙の結果に思う事

<高市政権の登場>
 昨年の参議院選挙の敗北を受けて行われた自民党総裁選挙で、高市総裁が誕生し、維新との連立合意によって高市政権が誕生した。初の女性総理大臣は、官邸で深夜の答弁調整会議を行い、「働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と発言。厳冬期の電気・ガス料金の補助、ガソリン暫定税率の廃止など、国民受けする政策を実施し、日韓・日米首脳会談でのパフォーマンスもあり、高い支持率を維持していた。
 公明党の連立離脱を受けた、維新との連立合意では、維新が求めた議員定数の削減、副首都構想実現法制の整備など、ほぼ維新の政策を丸飲みしてのスタートだった。

<高市自民党圧勝の要因について>
 2月8日投開票の衆議院選挙は、高市自民党が圧勝し、自民党の単独過半数、連立を組む維新も加えると、高市与党では352議席、衆院の76%を占めることとなった。
 さらに、小選挙区で自民党候補が軒並み当選したことで、比例区名簿が不足し、14議席を中道などの野党に振り分けるという異例の事態となった。
 与党圧勝の要因の第1は、憲政史上初の女性総理の誕生、さらに高い内閣支持率を背景にした異例の短期戦を強行したことによる。大きな賭けであったが、当事者の予想に反して、大きな支持を受けることになった。公示直前に、高市が「消費税減税」の検討を言いだし、野党と対決を回避したことの影響も大きい。
 第2は、異例の短期戦、突然の解散を受けて、準備も整わない中、立憲民主党と公明党が衆議院での新党結成で対抗しようとしたが、有権者への広がりに欠け、逆に従来の支持者の離反を招き、結果、大きく議席を失うことになった。
 第3は、昨年の参議院選挙では、大きく躍進した参政党だが、大幅な議席増となったが、昨年の参議院選挙での熱気程ではなかった。国民民主党は、その勢いを持続出来ず、大きな躍進とはならなかったこと。外国人排斥を売り物にした参政党は、高市政権の形ばかりの外国人政策に埋没し、「手取りを増やす」と政策重視で支持を拡大してきた国民民主党だが、政権交代の展望も描けない状況に、支持率は横這いとなった。
 第4には、共産党、れいわ、社民党など、いわゆる左派グループが、高市人気を前にして、「中道」への批判を強め、反高市陣営を分散化させたことだ。過去の「社民主要打撃論」的発想では、統一戦線に対する信頼も、自らの存在意義さえも失う結果となった。一方、政治資金の透明化と、消費税減税に異を唱えたチームみらいが、他と明らかに相違した政策への期待から、都市部の比例区の比例区で躍進した。「バラマキ合戦」と評される混乱の中、有権者の大きな選択肢となったことは、注目すべきであろう。
 
<高市政権の「責任ある積極財政」について>
 高市は、本来の右派的主張を事実上封印し、安倍元総理のアベノミクス路線を継承し「責任ある積極財政」と推進するとして、「日本列島を、強く豊かに。」をスローガンとした。
 それは、現在の超円安を容認し、成長への投資によって、日本を豊かにと唄っているが、大企業を中心とする輸出型産業への利益誘導、輸入物価の高騰を放置して、物価高にあえぐ国民生活に応える内容ではない。
 「責任ある積極財政」も、「バラマキ政策を責任をもって進める」ということであり、国債発行に歯止めをかけないというリフレ派の主張そのもの。
 物価上昇、インフレを意図的に起こし、国の借金を事実上目減りさせようという意図も見えるが、高市圧勝と共に、一層円安が進み、国債利率の上昇など今後の日本経済に対し、国際金融市場の動きは明らかに日本の先行きへの不安を表している。
 国民は、高い支持率に現れているように、まずは期待が先行していた。ガソリンの暫定税率の廃止や、給付金支給、そして極めつけが「消費税減税の検討」であり、短い選挙戦の中で、充分に批判、議論がされぬまま、投票日を迎えたのであった。
 
<稚拙な新党結成をどう考えるか>
 自民党との連立を解消した公明党。先の衆議院選挙、昨年の参議院選挙でも、新興政党と国民民主党の伸長を許し、野田を代表にせざるを得ないほど、人材と組織が枯渇した立憲民主党。急遽の総選挙を前に、保守・中道での「塊」を作り出す方策で、挽回を図りたい、そんな思惑が交差したのだろうか。しかし、中道改革連合という新党結成は、政策議論や国民への説明が充分ないまま、党中枢の決断によって進められた。政策においても、自公政権の流れを基礎にした公明路線に迎合し、安保自衛隊問題、原発再稼働問題も、旧来の立憲民主党路線から大きく右に舵を切った。立憲民主党に期待していた支持層の期待を裏切ったことは言うまでもない。
 労働組合を組織基盤とする立憲と、宗教団体を基盤とする公明党は、どのように党運営を行うのだろうか。地方組織や参議院では、立憲・公明の組織を維持するという方式も含めて、今後、まとまな政党として継続していけるのか、極めて疑問である。
 問題は、立憲民主党が、議員政党としての性格を強め、地域組織や党員の積極的拡大を怠ってきたこと、野田や安住、枝野などの中枢幹部だけで、これほど重要な決断を短期間に行うことができたこと、それ自体に大衆的政党としての基盤がない証左ともいえるのだが。
 
<有権者の動向>
 今回の総選挙における有権者の動向は、どうであったのか。
年代別の出口調査結果が公表されている。まず、自民党だが、どの世代からも高い支持を得ている。一方、中道は、若い世代、中堅層からの支持が薄く、極端に高齢世代に偏っている。
 一方、国民民主、参政、みらいは若年・中堅世代の支持が高く、共産党は、60代以下の世代からの支持が低い、という結果が出ている。
 中道は、結党の記者会見で、年配の男性ばかりが顔を並べて、5Gと揶揄される有様。中堅・若手へのアピール力では、他党と比べても期待すべくもない状況だった。世代交代、そして女性層への広がりを求めらる中、明らかに、そうした層への訴求力は考慮されていなかったではないか。
 
<公明党の評価>
 「中道改革連合」は、小選挙区は立憲民主党の候補、比例区は公明党の候補を優先する仕組みで闘ったが、期待はずれの新党は、小選挙区は総崩れ、比例区では優先的順位の公明候補がまず当選する結果となった。公明は、ほぼ勢力を維持することができた。彼らの戦略勝ちということか。公明党の連立離脱で、小選挙区自民党候補が、1~2万票を失い、立憲民主党系の候補に流れれば・・などという皮算用で考えられた方式ではあったが、完全に裏目に出た。公明比例票には、自民からのバーター票が隠れていたし、高齢化などで弱体化する公明の地方組織では、これまで敵対していた立憲候補支援の選挙行動も、躊躇があっただろう。形の上では、小選挙区で中道候補を応援する行動を行うが、本音は比例区重点ではなかったのか。こうした「中道」組織内での違和感は根強く、その払拭は容易ではない。
 せめて統一候補や、相互推薦などの、ゆるやかな野党連携とすることはできなかったのか、深刻な総括が求められている。
 
<憂慮すべき沖縄の事態>
 野党・左派グループの混迷を象徴するのが、沖縄であろう。沖縄県では、前回の選挙では「オール沖縄」で当選した現職の新垣議員が、昨年11月に社民党を離党したことを受け、総選挙では、社民党が別の候補を擁立。自民・オール沖縄・社民の三つ巴戦となって、オール沖縄候補が落選し、沖縄の4つの議席を自民党が占める事態となった。この過程で、社民党県議など8名が社民党からの離党を表明。沖縄で社民党県議はゼロとなってしまった。
 
<統一戦線の課題>
 新政権発足後、武器輸出の解禁を打ちだし、憲法改正に意欲を示すなど、今後の高市政権は、安定した政権基盤を背景に、じわじわと、そして大胆に平和・軍事の分野において、右より路線を強めることが確実である。選挙前には、政権幹部から、核武装必要論が出たことは記憶に新しい。
 自民・維新・参政の右派連合に対する、リベラル・左派の野党が一致して取り組める課題、「反インフレ政策、反核平和、ジェンダー政策」を軸に、反高市の統一戦線を作り、大衆行動を背景に右派政策に対抗する陣形の構築が求められている。
                              (佐野秀夫)
 

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