【投稿】オミクロン“ツナミ”:G7・製薬独占の破綻--経済危機論(70)

<<WHO「医療システムが崩壊寸前」>>
12/29、WHO(世界保健機関)は「新型コロナウイルス感染症のデルタ・オミクロン株の急増により、医療システムが崩壊寸前だ」と警告している。テドロスWHO事務局長は「デルタ株とオミクロン株という脅威により感染者数が記録的に増加し、入院率と致死率も上昇している」、「感染力が非常に高いオミクロン株とデルタ株が同時に拡散し、“ツナミ”のように感染者数が急増している」とし、「これが、疲れきった医療陣にかなりの圧迫を加え、医療システムを崩壊寸前にまで追いやっている」と悲痛な警告を発している。
テドロス氏は、オミクロンの「津波」の中でワクチン・アパルトヘイトを「道徳的恥辱」だと批判し、「今こそ、目先のナショナリズムを乗り越え、世界的なワクチンの不公平を解消し、将来の変異体から国民と経済を守る時です」と訴えている。

テドロス氏「“ツナミ”のように感染者数が急増している」

WHOを無力化させる「目先のナショナリズム」への批判でもある。
世界の感染者数は実に1日当たり144万件を上回り、これまでの記録を大幅に更新し、オミクロン株が、世界的に感染の中心になりつつある。7日間移動平均は12月27日に約84万1000件と、オミクロン株がアフリカ南部で最初に確認された1カ月前から49%も増加しているのである。新型コロナウイルスによるパンデミックは、新たな、危険で深刻な段階を迎えていると言えよう。
特許権放棄を拒否する製薬独占企業、その強欲を野放しにし、弁護しているG7先進国政権、彼らが生み出したワクチンのアパルトヘイトによって、ファイザー社、モデナ社、ビオンテック社だけでも、コロナワクチンで毎秒1,000ドルもの超過利益を上げ続けている一方、先進諸国は約束した18億人分のワクチンのうち実際には14%しか供給していないばかりか、これらの製薬独占企業は依然として供給、流通、価格設定の条件を譲っていない。その当然の結果として、低所得国の人々の4%以下しかワクチンが接種できず、アフリカ諸国が自国の供給分を購入する場合でさえ、製薬企業はしばしば納入の約束をさえ守らず、変異ウイルスの最適な温床を作り出し、コロナウィルスの蔓延を助長し続け、少なくとも500万人がこのウイルスで死亡しているのが現実である。
そして、自らが作り出したともいえる変異ウイルスが、先進諸国に容赦なく逆上陸し、その悪行の当然の帰結として、自らの政治的経済的危機をより激化させているのである。
12/28、米疾病対策センター(CDC)は米国で27日に報告された新型コロナウイルス感染者が44万1278人だったと発表。1日あたりでは今年1月8日の29万4015人を上回り、過去最高。直近1週間の1日平均は約24万人で前週の約6割増しという非常事態である。
フランスでは1日あたりの感染者数が20万人を超え(20万8千人)、欧州では過去最悪を記録している。ベラン保健相は29日の国会で「オミクロンは波ではなく、大きなうねりと呼ぶべきだ。ここ数日の数字を見れば、地滑りだ」、「めまいがする、1秒に2人が陽性になっている」と語る事態である。
イタリアも29日に新規感染者数が約9万8千人に達し、過去最悪を更新。英BBC放送は「欧州の新規感染者数としては過去最高」と伝え、イギリスも12万9471人と過去最多、ポルトガルも過去最高の約1万7000人の感染が判明している。12/29、デンマークで、22,023、アイルランドは16,428、スイスは16,760。ドイツでは、カール・ラウターバッハ保健大臣は、新たな感染は非常に過少報告されており、29日に報告された40,042件の2?3倍であり、28日に比べて45%増加していると述べる事態である。しかも特徴的なのは、これら諸国の感染者の入院の60%は、2回または3回のワクチン接種を受けた患者なのである。日本でもじわじわとオミクロンの脅威が差し迫っていると言えよう。

<<バイデン、ついに敗北を受け入れる ?>>
とりわけ米国の実態は深刻である。米国の1日の平均症例数は267,305に達し、コロナ感染の入院は急速に増加し、現在75,000人近くが病気の合併症で入院している。感染症例は5500万人に急速に近づいており、1,000人以上の子供を含む844,000人以上が死亡している。米国でオミクロンの最初の症例が検出された12月の初め以来、小児の症例が急増し、2021年12月2日までの週の132,000の感染から、2021年12月23日までの週の199,000まで、51%も増加している。小児入院がニューヨーク市で5倍に跳ね上がり、ワシントンDCで2倍と、爆発的な増加に直面している。ニューヨークの1日あたりの感染の7日間の平均は、12月1日の7,000から38,500を超える事態である。トランプ前政権時代よりもパンデミックをめぐるあらゆる症例は悪化しているのである。
ところがバイデン政権は、12/21になって、オミクロンの急増について「これがこれほど急速に広がるとは誰も予想していなかった」と責任を転嫁する路線を明瞭に打ち出した。(—ABCニュース(@ABC)2021年12月21日
とんでもないでたらめである。南アフリカで11/9に感染が確認され、11/24に報告され、WHOがオミクロン変異株について最初に警告したのが11月26日であった。11/26のニューヨーク株式市場がこの警告で激震に見舞われ、今年最悪・最大の下げ幅を記録、世界的に株安が連鎖したのはほんの1か月前である。すでに12月初めには米国でのオミクロン症例が確認されていたのである。一部の症例ではなく、12/21時点で新規の感染者の実に73%がオミクロン変異株によるものであったことも明らかにされており(APnews 12/21)、ここに至るまでにバイデン政権は、トップヘルスの専門家から何度も警告されていたのである。
さらにバイデン氏は、12/21の会見で「あなたがワクチン接種を受けているなら、あなたは正しいことをしました、あなたがそれらを計画したように休日を祝います。」と述べ、接種を受けていない人々を暗黙のうちに非難し、自らの政権の取り組み不足と無能さを棚に上げて、予防接種をするかどうかの個々の決定にすべての責任を負わせる個人責任路線を明瞭にしたのである。

2020年のジョーバイデン:「私はウイルスをシャットダウンするつもりです。」                                                                                                          今日のジョー・バイデン:COVID-19に対して「そう! 連邦政府の解決策はありません」

そうした流れの極めつけが、「連邦政府に解決策はありません」というバイデン氏の発言であった。12/27、バイデン大統領は、全米知事協会とのホワイトハウス・コロナウイルスブリーフィングで、オミクロン亜種に対する「連邦政府の解決策はない」と認め、コロナウイルスの大流行を終わらせる責任を州政府に負わせる発言をしたのであった。「いいか、連邦政府の解決策はないんだ。これは州レベルで解決されるのだ」と。(Biden:‘There is no federal solution’ to coronavirus pandemic Whitehousewire 2021/12/27
2020年の大統領選で勝利したバイデン氏は、「私はウイルスをシャットダウンするつもりです」と宣言していたのであるから、この発言は、バイデン氏の敗北宣言とも言えよう。

<<特許なしワクチン、開発される !>>
バイデン氏の発言があった同じ12/27、米テキサス州のテキサス小児病院、ヒューストン・ベイラー医科大学、インドの製薬会社のバイオロジカル・イー社が共同開発した未特許のCovid-19ワクチン・コバーバックス(Cobervax)が、インドの規制当局から緊急使用承認を受けたというニュースが流れ、翌12/28、テキサス子ども病院はその詳細を明らかにした。
テキサス子供病院によると、この新しいワクチンは、新しくて複雑な技術ではなく、すでに多くのメーカーが経験している旧式の組換え蛋白質技術を使用しており、3000人以上の被験者を対象とした2つの第Ⅲ相臨床試験を完了し、安全性、忍容性、免疫原性が確認され、SARS-CoV-2ウイルスに対して少なくとも90%、デルタ変異型に対しては80%以上の効果があるという。テキサス小児病院のチームを率いるピーター・ホテツ氏(Dr. Peter J. Hotez)はワシントンポスト紙に「我々は金儲けをしようとしているのではありません」、「我々は、人々が予防接種を受けるのを見たいだけなのです。」と語っている。

テキサスチーム・パテントフリーワクチン「金儲けのためじゃない。ただ、人々が予防接種を受けるのを見たいだけなのです。」

このワクチンは、特許で保護された大手製薬会社のワクチンに代わるオープンソースのワクチンであり、営利目的で製造されるのではなく、最終的には世界中で製造され、政府や民間の法的報復を受けることなく、すべての人が安価に入手できるようになる可能性を開いている。ホテツ氏は「このワクチンは世界中の現地で製造することができます。私たちは現在、インド、インドネシア、バングラデシュ、ボツワナの製造業者にテキサス子供ワクチンを技術移転しています」とツイート(12/27)している。
すでにインドの製薬会社は、約1億5000万回分のコバーバックスを配布する準備ができており、さらに3億回分をインド政府から事前注文されているという。同社は、国民の約40%しか予防接種を受けていないインドでより良いサービスを提供するために、毎月1億回分まで生産量を増やす計画である。
消費者擁護団体・パブリック・シティズン(Public Citizen)のディレクターであるメイバルダク氏(Peter Maybarduk)は、12/30、「テキサス小児病院の技術共有への取り組みは、製薬大手とワクチン生産と医療革新が秘密主義と独占権によって繁栄するという誤ったシナリオへの挑戦である 」、「テキサス小児病院が出来るのなら、なぜファイザーとモデルナが出来ないのか?」と問いかけている。
バイデン大統領の支持率が、もともと低いハリス副大統領の支持率をさえ下回り始め、コバーバックスのニュースと同時に、ファイザー、モデルナ、両社の株価が下落し始めたのは偶然ではないと言えよう。
(生駒 敬)

カテゴリー: 政治, 新型コロナ関連, 生駒 敬, 経済危機論 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA