<<1981年以来最悪>>
1/12に発表された昨年12月の米消費者物価指数(総合CPI)は、11月の前年同月比6.8%上昇からさらに加速し、7.0%上昇と、39年ぶりの高騰を記録した。 19ヶ月連続の上昇であり、変動が激しいとされる食料やエネルギーなどを取り除いたコアCPIでも1991年2月以来の高水準(前年比+5.5%と予想を上回る高水準)となり、1981年以来最悪である。最大の価格上昇はガソリンと灯
油で、それぞれ年率50%と41%の上昇。中古車の価格が37%上昇、暖房や調理に使用される天然ガスは24%上昇と続く。食品価格では、牛肉と子牛肉が16%、鶏肉が10.4%、卵が11.1%、パンは11%、とまさに急騰である。サービスインフレは+3.7%と2007年1月以来の高水準、物品インフレは前年同月比10.7%と1975年5月以来の高水準である。
当然、実質賃金は減少し、実質平均時給が9ヶ月連続で減少、前年比2.4%減を記録している。
この「残酷なインフレレポート」と評される実態を和らげるために、バイデン政権広報は、「前月比では(0.8%から0.5%上昇へ)減速している」「インフレは緩和している」と言い訳をしたのであるが、その舌の根も乾かない、1/13に発表された物価指数は、2022年1月第1週は昨年12月最終週の2倍の速さで上昇し、商品価格は20.2%も上昇していることが明らかになっている。
昨年12月、バイデン大統領は、サプライチェーンの危機を打ち破ったと豪語し、インフレ懸念を打ち消したはずであったが、とんでもない。価格が上昇する一方で、スーパーの商品棚は驚くほどむき出しの空っぽの事態が急速に拡大しているのである。
1/10にはツィッターで、
#BareShelvesBiden(棚が空っぽ・バイデン)というハッシュタグがトレンドになり、どんどん拡散する事態である。
もちろん、日本も含めたOECD先進国グループの消費者物価上昇率も、昨年11月に5.8%に達し、前年同月のわずか1.2%から上昇し、1996年5月以来の最高の上昇率となっている。
こうした事態の結果として、バイデン大統領の支持率は急速に下落してきており、キニピアック社の最新の世論調査で史上最低を記録、わずか33%、調査対象者の53%は不支持であった。「国の民主主義は崩壊の危機に瀕している」と考えている人々が58&にも達している。
<<問われる反独占政策>>
何が原因なのか? 最大の上昇となっている石油、ガ
ス、エネルギーのインフレは、資源豊富でだぶつきこそすれ、供給不足からではない。しかし、米国の石油独占資本は石油・ガス料金で29.6%もの値上げを実行している。つまりは、独占企業が、好機到来と、価格を吊り上げ続けているのである。米中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会・FRBがインフレ懸念から2022年3月から、超金融緩和政策から引き
締め・金利引き上げ政策への転換を余儀なくされる、2022年だけで3~4回の金利引き上げが議論されている。もしこれが実行されれば、バブルが暗転し、大不況に突入することは必定である。そうした事態を見据え、CO2削減・環境保護に便乗、供給制限・供給不足を演出し、独占価格を吊り上げているのが実態である。
肉や食品の価格も上昇しているが、ここでも食肉生産、穀物・パンなど食品生産の独占企業主導による価格高騰が横行している。バイデン氏は「競争不足が原因だ、もっと競争をさせる」と言っているが、具体的には、補助金を与えるための口実に過ぎない。食品産業はすべて独占に近く、石油独占体に対するのと同様、独占価格にメスを入れ、分割・再編する反独占政策こそが提起されるべきなのである。
もう一つのインフレ高進の原因としてあげられるサプライチェーンの危機は、バイデン政権ならびにG7・先進諸国自身が招いたものでもある。大手製薬独占企業を擁護し、コロナワクチン特許権放棄を拒否してきたツケでもある。
1/14、フェデックス社は、オミクロン変異体の爆発的な急増により、スタッフ不足と航空機で輸送される貨物の遅延が発生していると警告している。
全世界にコロナ禍を蔓延させ、物流・運輸を混乱・麻痺させたばかりか、前トランプ政権の反中国・反ロシア政策をより一層危険な段階に推し進めたバイデン政権は、軍事的緊張激化を高め、対中国高関税を放置して物価を上昇させ、自らに跳ね返ってきているのである。
さらに決定的なのは、ゼロ金利で潤うバブルがもたらした投機経済が、石油・ガスのみならず、小麦や綿花、トウモロコシ、大豆、砂糖、ココアにまで投機筋がむらがり、価格を吊り上げてきたことである。もちろんここでは大手金融独占資本がふんだんに資金を供給し、利益をむさぼってきたのである。
こうして、2022年はインフレの高進に伴い、実体経済の収縮、そして金融市場の収縮の可能性、つまりは総体的な政治的経済的危機がより一層進行する可能性を高めていると言えよう。
しかし、いずれも、反中・反ロの緊張激化政策を緊張緩和政策に転換すること、そしてより根本的には反独占・ニューディール政策への抜本的な政策転換によって、インフレ抑制が可能であることを示している。
(生駒 敬)