【投稿】南北戦争以来の大分裂に直面し、対外危機を煽るバイデン政権
福井 杉本達也
1 米国の大分裂―ワシントン・ポストの世論調査
2021年1月6日の米連邦議会議事堂の占拠事件から1年、12月17,18日に実施されたワシントン・ポスト紙・メリランド大学世論調査(2022年1月2日アップトデー ト)では34%の人が政府に対する暴力を支持している。同調査によれば、「市民が政府に対し暴力を使用することは正当化できるか、決して正当化できないか」という質問に対し、「正当化できる」が34%、一方「決してできない」は62%であった。それが「いかなる時に正当化できるか」ということについては、「政府が市民の権利、自由を取り去り、市民に反対する時」が22%、「政府が最早民主的でなく、独裁的でクーデターを行った時」が15%であった。また、「バイデン大統領は合法的に選出されたか」という質問では、「合法的」が69%、「合法的でない」が29%。さらに2020年の「大統領選挙において広範な欺瞞行為 fraud に確実な証拠 solid evidence があると思うか」については「確実にある」が30%、「ない」が68%となっており(孫崎享作成資料:2022.1.3)、調査では連邦議事堂事件に関する完全な二極化が示された。調査したアマースト教授は、「正反対の現実に住んでいる共和党員と民主党員」を示していると嘆いた。
2 国内の大分断を対外危機を煽って乗り切ろうとするバイデン
南北戦争以来と言われる国内の大分断の中、支持率の低迷に喘ぐバイデン大統領をはウクライナや台湾危機を煽り、再び、「9.11」や「トンキン湾事件」のように海外に『敵』を作って乗り切ろうと画策している。連邦議事堂事件では725人以上が訴追されたが、大多数は選挙不正があったとするトランプ前大統領らの主張を信じた「どこにでもいる米国人」(米メディア)だったとされる(福井=共同:2022.1.8)。バイデン氏は事件1周年の演説において、トランプ氏を「うその網を張り巡らせた」と批判、「選挙結果が不正確だとの証拠はゼロだ」とし、「米史上初めて大統領が敗北後に平和的な権力移行を限止しようとした」と糾弾し、「米国の民主主義の喉元に短剣を突き付けた」と非難した(福井=共同:同上)。
しかし、「公正な選挙」を巡る民主党と共和党の見解は真っ向から対立する。テキサスやジョージアなど共和党優勢の州は郵便投票での身分証明替の提示義務化など投票機会を狭める法改正を進める(日経:2022.1.7)。孫崎享氏も1月8日の「孫崎享チャンネル」において、米の大統領選挙における郵便投票の方法にについて疑問を投げかけている。トランプ氏は1月4日の声明で、議会下院特別委員会は、なぜ「大統領選の不正行為を調査の主要テーマにしないのか。これは世紀の犯罪だった」と唱えている(日経:同上)。
ブリッジウオーター・アソシエーツの創業者ダリオ氏は、基軸通貨であるドルの購買力が低下し、米国の国力は弱体化しており、「パンデミックや洪水、干ばつといった自然災害も相次ぎ、米国の国政へのリスクが拡大している。国内の秩序を保つシステムもうまく機能していない。歴史をふりかえるとこうした問題に直面する国家は内戦や戦争に突入するのが常だ。」と警告している(孫崎享:2022.1.9)。米国は、台湾海峡での危機を煽り、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」での原子力潜水艦配備計画を明らかにし、対中強硬姿勢を強めている。既に米原潜「コネティカット」が2021年10月7日に対中国潜水艦作戦中、南シナ海で中国の無人潜水艦と衝突し?大損害を出したとの報告もある(CRI時
評:2021.11.7)。また、この危険な安保の枠組みに日本を組み入れようとする米軍産複合体は、岸田首相に「敵基地攻撃論」を吹き込み、日豪共同訓練協定の締結させ、安倍元首相らは「台湾有事論」を振り回している。一方、NATOと共にウクライナ東部やベラルーシ・ポーランド国境に軍事力を集めロシアと一触即発の危機を作り出そうとしている。こうした海外に『敵』を求めるバイデン政権の動きはあまりにも冒険主義であり、米金融資本内部にも異論がある。中ロとの差し迫った緊張を緩和しようと、1月3日、米ロ中英仏の核保有大国5か国は、「我々は、核戦争に勝者はおらず、核戦争をしてはならないということを表明する。核兵器の使用が計り知れない影響をもたらすことを鑑み、我々はまた、核兵器が存在し続ける限り、防衛や侵略抑止、戦争防止の目的に資するべきであることを表明する。」との声明を発表した。
3 ネットを検閲するツイッターやメタ(フェイスブック)
ツイッターは、新型コロナウイルスの誤情報の拡散に関する規約に繰り返し違反したとして、米南部ジョージア州選出の共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員の個人アカウントを永久停止した。既に、ツイッターは連邦議事堂事件で、暴動を扇動したとして、事件直後にトランプ氏のツイッターを永久追放している(日経:2022.1.4)。8800万人のフォロワーがいた現職大統領のアカウント停止は情報・金融資本によるクーデター以外の何ものでもない。また、「リチャード・メドハーストは、Instagramが彼のアカウントから約20の画像を削除し、もし彼が類似の投稿をし続ければ、恒久的禁止に直面すると警告したと報じている。問題の投稿はメドハーストがトランプ政権による有名なイラン軍指導者ガーセム・ソレイマーニー暗殺二周年を記念するために作った Twitterスレッドのスクリーンショットだ」と報じている(『マスコミに載らない海外記事』2022.1.7)。
ケイトリン・ジョンストンによれば「実際は今まで誰も『Covid誤報』かどでは禁止されていない。それは現在の口実に過ぎない。以前は、国会議事堂暴動の結果で、その前は、選挙安全管理、ロシアのニセ情報、外国による影響作戦、フェイクニュースなどだった。実際、インターネット検閲を当たり前のことにする背後にある本当の狙いは、インターネット検閲自体を当たり前のことにすることだ。それが、実に多くの人々が追放されている本当の理由だ」。「2016年のトランプ当選は、現状維持政治の失敗ではなく、世界で何が起きているかに関して支配権力機構の思惑と完全に一致する、主要言説を支配する情報管理の失敗だった」と断定した。グレン・グリーンワールドは「選挙で選ばれたわけではないハイテク・オリガルヒが、正当に選挙で選ばれた連邦議会議員や、現職大統領さえ、彼らの巨大プラットホームを使えないようにするのはディストピアだ」と述べている。ツイッターやフェイスブックなどのハイテク・オリガルヒの代弁者:元FBI職員クリント・ワッツは「情報反乱を鎮圧するために我々全員今行動しなくてはならない」、真実情報の集中砲火がソーシャル・メディア・ユーザーに着弾するのを防ぐには、「配布するメディアを沈黙させることだ。銃を沈黙させれば、一斉射撃は終わる」と断言した。米南部:フロリダ州は2021年5月、州議会候補者らのアカウントを、SNS 運営企業が永久凍結した場合に罰金を科す新法を制定した(日経:同上)。「巨大プラットホームが、地球上最も強力な政府の意思と完全に提携して、言論を検閲している」。「政府に結びついた独占的技術プラットホームが世界的言説を支配する危険は、人々が、たまたま、どんな瞬間に嫌いかもしれない、いかなる意見の危険より遙かに大きい。」とケイトリン・ジョンストンは警告する(『マスコミ載らない海外記事』:2022.1.9」。