【投稿】ロシア軍のウクライナ侵攻とネオナチに操られる・ゼレンスキー
福井 杉本達也
1 ロシアのウクライナ侵攻
2月22日朝のSputnikはプーチン大統領は、親露派勢力が支配するドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の独立を承認し、ロシア軍を派遣し、平和維持活動を進めることを定めた大統領令に署名したとし、同共和国の要請を受けて同地域への平和維持軍派遣を決定したと報道した。これに対し欧米は「米国や欧州などが侵攻阻止に向けて発した警告を無視し、主権国家に派兵する。東西の冷戦後の世界秩序を武力で揺さぶる行為で、米欧はロシアへの経済制裁を発動する。民主主義と強権主義の分裂が鮮明となり、世界の混迷は一段と深まることになる。」(日経:2022.2.23)と報道している。27日現在、ロシア軍はドネツク方面の東部からと、クリミア半島方面の南部から及びはウクライナ第二の都市ハリコフなどのある北部からウクライナに侵攻している。また、同時にミサイル等により空港や軍事施設などを破壊した。
2 ネオナチに乗っ取られたウクライナとドンバスのロシア人虐殺
元外務省欧亜局長の東郷和彦氏の地方紙への『特別寄稿』よると「ロシアがウクライナに対する軍事力の行使に踏み切った直接の引き金は、ウクライナ東部親ロシア派支配地域の住民約お万人の安全がウクライナによって脅かされているという判断だった」とし、「ウクライナのゼレンスキ大統領は『親ロ派はテロリスト』と放言して緊張をあお」った(福井:2022.2.26)としている。ウクライナは2014年の米CIAの後ろ盾によるマイダンクーデターにより、選挙で選ばれた政権を倒して築かれた。そのクーデターの主体はネオナチである。クーデターで排除されたヤヌコビッチの支持基盤である東部や南部でも住民が惨殺された。ドンバスやオデッサでの住民虐殺は凄惨なものだった。ネオナチの一人:ヤロシュは2021年11月から参謀長の顧問を務めている。ネオナチの「アゾフ大隊」を率いているのはヤロシュの部下といわれる。元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏は2月25日のYouTube上で「ウクライナは乗っ取られている。ロシア人を虐殺してるんですよ、ウクライナの中でね!」と述べている。このマイダンクーデターを指揮し、ウクライナにおける親露政権を覆し、西側と連携を求める政権を樹立した中核的人物がオバマ政権・国務次官補時代のヌーランドである。ネオコンの理論的支柱ロバート・ケーガンの妻であり、現バイデン政権下では国務副長官である(孫崎享:2022.2.25)。
3 NATOの東方拡大による核戦争の危険の高まり
プーチン大統領は2月24日の演説で「ソ連が解体され能力の大部分を失った後も、ロシアは核保有国の一つだ。最新鋭兵器もある。われわれに攻撃を加えれば不幸な結果となるのは明らかだ。」と述べたが、これを受け、日本原水爆被害者団体協議会や広島県内の被爆者7団体などは「核兵器による威嚇で、被爆者の願いを踏みにじるものだ」として、ロシア大使館に抗議文を送った(読売:2022.2.27)が、これは米欧のプロパガンダをそのまま信じた行為である。2019年2月に当時のトランプ政権はロシアとの間の「INF条約」(Intermediate-range Nuclear Forces Treaty:中距離核戦力全廃条約)の破棄通告をロシア側に通告し、INF条約は8月2日に失効した。中距離核戦力が配備されるとヨーロッパが戦場となる。もし、ウクライナに中距離核ミサイルが配備されれば、モスクワまで数分で届く。ロシア中枢部が何の防衛手段もないまま核攻撃にさらされることとなる。ロシアはウクライナのNATO加盟を警戒するのはそのためである。現状は「相互確証破壊 Mutual Assured Destruction, MAD)」という非常に危うい理論の上に核兵器の使用が避けられている。「核兵器を保有して対立する2か国のどちらか一方が、相手に対し先制的に核兵器を使用した場合、もう一方の国家は破壊を免れた核戦力によって確実に報復することを保証する。これにより、先に核攻撃を行った国も相手の核兵器によって甚大な被害を受けることになるため、相互確証破壊が成立した2国間で核戦争を含む軍事衝突は理論上発生しない」(Wikipedia)というものである。ところが、中距離核ミサイルをウクライナに配備できれば、ロシアの心臓部を数分で壊滅でき、米国は核の反撃を受けないという誘惑が生まれる。核の先制攻撃論である。米国がINF条約を脱退した理由である。
4 米・NATOに見捨てられた捨て駒・ゼレンスキー
ゼレンスキーは2月24日にウクライナは孤立していると発言した。ウクライナを利用してロシアを挑発、恫喝してきた米・NATOは隠れてしまい、ウクライナが取り残された。米・NATOはウクライナだけでロシアと戦えと。ウクライナは米国にとって中距離核ミサイルの発射台であり、ロシアとガスパイプラインを利用しての欧州への恫喝の道具ではあるが、米国が血を流して守る地域ではない。既にネオナチに乗っ取られたこの8年間でウクライナの経済は破綻している。またチェルノブイリ原発の後始末という数百年単位の非常に厄介な課題を抱えている。パトリック・アームストロングによれば「ウクライナ人移住労働者による送金が、今年133億ドルに達すると予想される。2019年と2020年の記録的な実績120億ドルより11%多い。今年は、労働が食糧に続き、金属より上で、ウクライナで二番目に大きい輸出になると予想されている。要するに「改革実行でのウクライナの進歩」に関する全てのたわごとは、ウクライナが黒土地帯にある事実と、外国で、金持ちの隣人のために働いている国民のおかげなのだ。産業空洞化は、ほぼ完了した。アントノフ社は去り、ユジマシ社は苦闘し、ドンバスは去り、黒海造船所は倒産した。ここに要約がある:見てお分かりの通り、最も強力な産業の可能性を持っており、ほとんど全ての産業生産物を、自身にも、他の共和国にも提供可能なソビエト社会主義共和国連邦の共和国から、ウクライナは、農業原料加工や林業企業だけが活動する領土に変わった。ウクライナの完全な産業空洞化は、実際、完了した。」(マスコミに載らない海外記事:パトリック・アームストロング:2021.8.11)。米国としてはロシアへの恫喝の踏み台以外の利用価値はないと踏んでいる。
5 SWIFTによるロシア経済制裁の影響
米国、英国、欧州、カナダは2月26日、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意した。「ロシアの金融機関は世界で1日あたり約460億ドル相当の為替取引を手掛け、その8割が米ドル建てだ。は全世界で1日あたり4200万件の送金情報を扱っており、このうちロシアの金融機関は2020年時点で1・5%を占め」(日経:2022.2.27)これが出来なくなれば、欧州とのガス取引や原油取引にも大打撃となる。日本への影響も避けられず、野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏の見方では、対ロ経済制裁によりロシアとの貿易が全て停止する最悪の場合、エネルギー価格の急騰や円高・株安により、日本経済には国内総生産で1.1%程度の下押しになると試算している。原油価格がバレル140ドル程度まで上昇し、円高・株安が進むとの想定だ。しかし、木内氏は「今回のSWIFT排除のステートメントを読むと、ロシアの全ての銀行が対象となっているわけではない。SWIFTを利用しない決済手段もある。このため、日本経済へのインパクトも上記の最悪ケースの試算ほどにはならないと考えられる」(ロイター:2022.2.27)とも分析している。既にロシアは外貨準備高のほとんどを金に換えており、また、中国との間では元建て決済を、ロシアとインド間ではで米ドルを放棄 「インドは相互決済にドルを使うことをやめ、すべての支払いをルーブルとルピーで行うことを発表」(2021.12.8)するなど、ドル離れの動きが進んでおり、ドル覇権体制の崩壊につながる可能性もある。