【投稿】核戦争への危険なステップ--経済危機論(79)

<<バイデン氏、「先制核攻撃も視野に」>>
3/25付けウォールストリート・ジャーナル紙の報道によると、バイデン米大統領の「同盟国からの圧力で今週初めに下された新しい決定は、米国の核兵器の『基本的な役割』は核攻撃を抑止することであるというもので、大統領選の公約の姿勢からは微妙だが大きな転換である」と報じている。大統領選では、米国は核の脅

WSJ : 大統領は、選挙公約から一歩後退した

威を抑止するためにのみ核兵器を使用すべきであると公約していたものが、その公約を放棄して、代わりに通常兵器、化学兵器、生物兵器、サイバー関連攻撃を含む非核戦争に対

2022年3月23日、ワシントンDCで、核兵器発射コードが入った「核のフットボール」と呼ばれるものが入ったブリーフケースを持ち、マリーンワンに向かって歩く米軍補佐官

応して核兵器の使用を認める、先制核攻撃も視野に入れるというものである。
バイデン氏の、この米国の核態勢に関する決断は、まだ公には発表されているものではない。しかし、政権として決定したものであれば、ロシア・プーチン政権の核兵器の使用をも含めた「特別な戦闘態勢」に対応してエスカレートさせる、きわめて危険なステップに踏み出したものと言えよう。
ロシアのメドベージェフ前大統領が「核のビッグバンまで、あと数ステップ」として警告していた、そのワンステップが表面化したのである。
核兵器の先制使用について、米ロ双方ともにあいまいさを意図的に維持しており、「戦術」核の使用まで論議され出している危険な情勢は、一気に熱核戦争に発展しかねない事態への進展である。

さらに3/26、バイデン氏が訪問先のポーランド・ワルシャワでの演説で、ロシアのプーチン大統領について「この男を権力の座に残しておいてはいけない」「人殺しの独裁者」「プーチンに未来はない」と発言。この発言後、ホワイトハウスは急遽、声明を発表し、「バイデン氏は、プーチン氏の権力や体制転換について話したものではない」と軌道修正し、釈明をしている。しかし、この発言は、クレムリンの政権交代を示唆し、プーチン打倒を公然と呼びかけたようなものであり、バイデン氏がハナから、プーチン氏との外交交渉や緊張緩和策を折衝する姿勢を放棄して、挑発オンリーの姿勢を明確にしたことを公然と表明したものである。このようなバイデン氏の政治姿勢は、情勢をさらに悪化させる危険なステップに踏み出したものと言えよう。

ヤニス・バルファキス氏「プーチンに実行可能な撤退戦略を」

3/26に放映された「デモクラシー・ナウ!」のインタビューで、元ギリシャ財務大臣のヤニス・バルファキス氏は、このバイデン氏の発言について、「その狙いはいったい何なのか?」と問い、「政権交代でないとしたら、これは火遊び、核の火遊びのようなものだ、と言うべきだろう。」と述べ、むしろ必要なのは、プーチン氏に実行可能な撤退戦略を与えることだと強調している。その理由は、「プーチン氏が卑劣な戦争犯罪人ではないからではなく、ウクライナの無実の市民の大量殺戮を終わらせる最も早い方法になるだろうからである。」、「妥協の余地を与えない」のであれば、「ウクライナ人の利益を事実上危険にさらし、ウクライナ人の利益にはならないからだ」と述べている。まさにバイデン氏には、このような姿勢が完全に欠落しているのである。

<<「我々は戦争と核兵器を拒否する」>>
同じ3/26、ダライ・ラマをはじめ、核戦争防止国際医師会議、核兵器廃絶のための国際キャンペーン、科学と世界情勢に関するパグウォッシュ会議などノーベル平和賞を受賞した個人・団体が、「核兵器の終焉か、我々の終焉か」と題して、「ウクライナへの攻撃を直ちに停止し、ロシアとNATOの双方が、この紛争やその他のいかなる紛争にも核兵器を使用しないことを明確に誓うように求める」公開書簡を共同発表している。
書簡は、以下のように述べている。

「我々は戦争と核兵器を拒否する」

・ 私たちは戦争と核兵器を拒否します。私たちは戦争と核兵器を拒否します。私たち全員の家である地球を、それを破壊しようとする者たちから守るために、世界中のすべての市民が私たちと共に行動するよう呼びかけます。

・ ウクライナへの侵攻は、その国民に人道的惨事を引き起こした。全世界は、我々の文明を破壊し、地球全体に甚大な生態学的被害をもたらすことのできる大規模な核戦争という、歴史上最大の脅威に直面しているのである。

・ 私たちは、即時停戦とウクライナからの全ロシア軍の撤退、そしてこの究極の災害を防ぐためのあらゆる対話の努力を要求する。

・ 私たちは、ロシアとNATOに対し、この紛争におけるいかなる核兵器の使用も明確に放棄するよう求めます。そして、私たちが二度と同じような核の危険に直面することがないよう、すべての国に対し、核兵器禁止条約を支持するよう求めます。

・ 今こそ、核兵器を禁止し、廃絶する時である。それが、この地球上の住民がこの実存的脅威から安全であることを保証する唯一の方法です。

・ 核兵器が廃絶されるか、私たちが廃絶されるかのどちらかです。

・ 私たちは、押しつけと脅しによる統治を拒否し、対話と共存、そして正義を提唱します。

・ 核兵器のない世界は必要かつ可能であり、私たちは共にそれを築き上げる。私たちは、平和にチャンスを与えることが急務である。

———————————-

ノーベル平和賞受賞者の署名者一覧です。

ダライ・ラマ(1989年)
核戦争防止国際医師会議(1985年)
核兵器廃絶のための国際キャンペーン(2017年)
ファン・マヌエル・サントス(2016年)
カイラシュ・サティヤルティ(2014年)
レイマ・ボウイー(2011年)
タワックル・カルマン(2011年)
ムハマド・ユヌス(2006年)
デビッド・トリンブル(1998年)
ジョディ・ウィリアムズ(1997年)
ホセ・ラモス=ホルタ(1996年)
科学と世界情勢に関するパグウォッシュ会議(1995年)
オスカル・アリアス・サンチェス(1987年)
レフ・ワレサ (1983年)
アメリカン・フレンズ奉仕委員会(1947年)
国際平和ビューロー(1910年)

この書簡の全文と主な署名者のリストは、Avaazのホームページで公開されており、緊急に100万人の署名を呼びかけている。誰でも賛同することができ、署名することができる。
Avaazは、ヨーロッパ、中東、アジアのさまざまな言語で「声」を意味しており、「我々は戦争と核兵器を拒否する」として、2007年に発足、「あらゆる国の市民を組織し、今ある世界と世界中の多くの人々が望む世界とのギャップを縮める」ことを使命に掲げている。

まさに、世界は危険な政治的経済的危機、さらには人類的危機の真っ只中に遭遇しており、核戦争への危険なステップに抗議し、「戦争と核兵器を拒否する」巨大な運動が要請されている。
(生駒 敬)

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 平和, 政治, 生駒 敬, 経済危機論 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA