<<「核のビッグバンまで、あと数ステップ」>>
3/23、ロシアの前大統領で、現在、ロシアの安全保障理事会副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ氏が、ロシアのソーシャルメディアサイト「VK.com」への投稿で、核の「ディストピア」を警告した。
プーチン大統領の最高顧問の一人であるチュバイス氏(Anatoly Chubais)がロシア気候変動特使を辞任するなど、ウクライナ危機をめぐってプーチン氏側近の去就が注目されるが、メドベージェフ氏は、2008年から2012年まで大統領を務め、長年、プーチン大統領の側近を務め、盟友でもある。
そのメドベージェフ氏が、第二次世界大戦の終結以来、米国は「常に無意味な戦争を行い」、結果を考慮することなく破壊を残してきたと述べた後、米国がイラクやアフガニスタンなど他国と同じようにロシアを不安定にすれば、クレムリンはロシアの破壊を決して許さないが、もし破壊的な目的を達成したならば、最大数の核兵器が米国と欧州の目標に向けられ、世界は「大きな核爆発」で終わるディストピ
ア的な危機に直面する可能性、「核のディストピア」につながると警告しているのである。
しかも、「最悪の世界危機、エネルギーと食糧の崩壊、すべての集団安全保障システムの破
綻、そして近い将来、新たな普遍的特異点である冥界への道を開く核のビッグバンまで、あと数ステップしか残されていない。」と述べている。
メドベージェフ氏は、「ロシアがこれを決して許さないことは言うまでもない。それは、今日、誰の目にも明らかです。さらに、我が国の終焉を望むアメリカのエスタブリッシュメントとは異なり、ロシアはアメリカが強く賢い国であり、ゆっくりと老衰に陥っている人々の最後の避難所ではないことを望んでいます。」と、結んでいる。
この警告は、単なる思い付きや、あるいはその場限りの冗談として済ませられるものではないであろう。プーチン大統領自身が、すでに4年前、極超音速ミサイルをはじめとするロシアの新型核兵器を発表した直後に、この問題を取り上げ、インタビューに対して、「確かに、それは人類にとって世界的な災難であり、全世界にとっての災難だ。ロシア国民として、またロシアの国家元首として、私は自問自答しなければならない。なぜ、ロシアのいない世界を望むのか、と。悲惨な結果になろうとも、ロシアはその存在自体が危うくなれば、あらゆる手段を使って自国を守ることを余儀なくされるだろう」と述べているのである。
まともな、冷静な外交関係があればまだしも、バイデン米大統領は、プーチン氏を今や「戦争犯罪者」と決め付けた後、「チンピラ」「独裁者」とまで呼んでいる。ロシア側は、「許しがたい」侮辱だと返している。孤立するプーチン氏、自らが招いた政治的経済的危機の中で支持率がどんどん落ち込むバイデン氏、両者ともに余裕がない状態である。
米国は、ロシアが現にウクライナで行っている戦争犯罪を何倍も超えた規模で戦争犯罪を犯し、イラク、シリア、アフガン、イエメン、パレスチナ、南スーダン等々、アメリカ自身が直接・間接、戦争犯罪に関与・加担し、今現在も続行させている現実が不問に付されてはならないものである。それを全く棚に上げて、頭から外交交渉と平和解決を投げ捨てるような悪罵を投げつける、火に油を注ぐように兵器をどんどん大量に送り込む、これでは意図的に危険極まりない世界大戦と核戦争への道に世界を引きずり込むものである。
不測の事態、単に誤警報が発生しただけでも、当事者間の確認すらなく、自動的に核ミサイルが発射される事態さえ予測される危険な情勢の到来である。
<<包括的な和平交渉こそが必要>>
3/22、アメリカの独立系ニュースサイト「デモクラシー・ナウ」の番組で、ウクライナ平和運動の事務局長であるユーリイ・シェリアジェンコ氏(YURII SHELIAZHENKO)は、「私たちに必要なのは、より多くの武器、より多くの制裁、ロシアと中国に対するより多くの憎悪との紛争の拡大ではありません」と強調し、必要なのは、「包括的な和平交渉です」と断言している。
シェリアジェンコ氏は、良心的兵役拒否のためのヨーロッパ事務局の理事でもあり、ワールド・ビヨンド・ウォー(World BEYOND War)の理事、ウクライナのキエフにあるKROK大学の研究員でもある。氏は、番組の中で次のように訴えている。
・「私たちに必要なのは、より多くの武器、より多くの制裁、ロシアと中国に対するより多くの憎悪と紛争の拡大ではありません」「包括的な和平交渉が必要なのです。」
・「西側でのウクライナの支援が主に軍事支援であり、ロシアに痛みを伴う経済制裁を課していることは残念です。戦争に対する非暴力的な抵抗をほとんど無視しています。」「たとえば、ベルジャンシク市とクリキフカ村では、人々は平和集会を組織し、ロシア軍に脱出するよう説得しています。」
・「ウクライナの平和運動は、ウクライナの、ゼレンスキー政権の軍事的対応を非難し、この交渉の停滞は、軍事的解決の追求の結果であると私たちは見ています。」
・「人々は戦う代わりに、交渉するために政府にプッシュするべきなのです。」「平和運動は、無謀な軍事化が戦争につながることを何年にもわたって警告してきました。私たちは正しかった。私たちは、平和的な紛争解決や侵略に対する非暴力的な抵抗のために多くの人々を準備しました。それは今助けになり、平和的な解決策への希望を与えています。」
・「即時停戦を実行してください。警告灯が点滅しています。第三次世界大戦はレッドゾーンに入りました。」
シェリアジェンコ氏はまた、ヨーロッパで、Europe for Peaceキャンペーンが開始され、4月28日に世界的な動員「ロッキードマーティンを止めろ」が提起され、イタリアでは、Movimento Nonviolentoが良心的兵役拒否者、兵役逃亡者、ロシアおよびウクライナの脱走兵と連帯して良心的兵役拒否キャンペーンを開始していることなどを紹介している。
そして実際に、ローマとピサでは、ウクライナへの武器出荷に反対する抗議行動”トスカーナから戦争ではなく平和の橋を””イタリアよ、NATOと戦争から手を引け””No War, No NATO “などのスローガンを叫び、数千人のイタリアの人々が、NATOの政策に反対するプラカードを持ちながら、NATO からの脱退を要求す
るデモ隊が首都ローマを行進している。
またイタリアのピサのガリレオ・ガリレイ空港では、ウクライナ向けの武器・弾薬の積み込みを拒否した港湾労働者の行動が共感を呼び、連帯行動が広がっている。
第三次世界大戦・核戦争の危機に対する平和の闘いが、危機的情勢を転換させるカギを握っている。
(生駒 敬)