【投稿】安倍晋三元首相「暗殺」の背景
福井 杉本達也
1 安倍元首相「暗殺」される
7月8日午前11時32分、奈良市西大寺・近鉄大和西大寺駅前において、参院選のため街頭演説をしていた安倍晋三元首相が背後から近づいた男に銃で撃たれ「暗殺」された。7月9日付け毎日朝刊一面トップ見出しは「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「安倍元首相撃たれ死去 民主主義の破壊許さない」、朝日は「安倍元首相撃たれ死亡」社説は「民主主義の破壊許さぬ」、読売も「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「安倍元首相銃撃 卑劣な凶行に怒り禁じ得ない…要人警護の体制不備は重大だ」、日経も「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「絶対に許されぬ民主主義への凶行」である。2年前まで日本国のトップの人物を狙った犯行である。周到な計画の下に実行されたと思われる。「政治的動機」がないはずはない。しかし、1面トップで「暗殺」あるいは「テロ」などの見出しを掲げると、実行者の政治的動機や背景を書かざるを得なくなる。各紙はそろって意識的に「政治的動機」の追及を避けるため全く同じ見出しを掲げたものと思われる。
2 明らかに手抜きの要人警護―批判をかわすため死亡発表を意図的に遅らせる
読売新聞奈良支局の平野和彦記者、社会部の建石剛記者の記事では、「目撃者の話やSNSに投稿された映像によると、…安倍氏の後ろの車道を挟んで十数メートル離れた場所で、しばらく演説を聞いていた。その後、歩いて車道を渡り、ゆっくり安倍氏の背後に近づくと、警察官に制止されることなく発砲していた。」「警察幹部は『容疑者が車道に出た時点で、警察官が声をかけなければならなかった。完全に警察の落ち度だと認めざるを得ない』と話す。」と書いている(2022.7.9)。また、スポーツニッポンは元警視庁刑事の吉川祐二氏のインタビューで「安倍氏の背中側にも警備はいたが、銃撃を許した。吉川氏は『容疑者が安倍氏に迫った際、背中側には警察官らしき人が2人いた。1人は不審者に気がついたのか、もう1人に耳打ちした。本来はこの時に不審者に詰め寄るべきだった。銃撃以前に、至近距離の背後に入られた時点で警護は失敗だ』と語った。」とし、もう1人のインタビュー者の「日本ボディーガード協会の阿久津良樹会長は『映像を見ると、SPが1発目で反応できておらず、2発目も撃たせてしまった。犯人は3メートルという距離にいたのに、状況を認識できていなかったのでは』と指摘。『守るべき範囲に入ってきた人物には気づくはずだ』と疑問を呈した」と書いている(2022.7.9)。
先に、辻元清美氏が福井市を訪れた。金沢からの流れで急遽決まったものである。辻元氏は先の衆院選で落選し、現在は全くの「ただの人」である。しかし、県警は私服警官を20人動員し会場周辺を10メートル間隔で警備し、その他、交通関係の警察官も動員した。むろん、事務所に侵入されたという事件もあったからだし、当日は右翼の街宣車も来ていたということもあるが、これが通常の警備体制である。それに比較すると、安倍元首相の警備体制は元首相・与党最大派閥の首領というにはあまりにもお粗末である。
もう1点、死亡時刻の偽造がある。救急車が現場到着した11時40分頃には「心肺停止」状態にあった。しかし、消防には医師はいないので、死亡診断は医師しか出せない。奈良県立医大病院に運ばれた時点で死亡が確定する。13時には「死亡」を確定していてもおかしくはない。しかし、それを4時間も引き延ばした。この4時間の間に、マスコミへの世論工作と閣僚の口裏合わせ、警備体制に批判が向かわないような時間操作を行ったのである。
3 「暗殺」の政治的背景を語らないと決めた政府・マスコミ
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、7月8日のIWJの岩上氏のインタビューにおいて、安倍氏の銃撃事件に関する報道はおかしいと指摘している。岩上:事件からわずか5時間後:「まず、NHKが報じたものです。『容疑者は「安倍元総理大臣に対して不満があり、殺そうと思って狙った」という趣旨の供述をしている一方で、「元総理の政治信条への恨みではない」とも供述しているということです』。そもそも、家宅捜査が始まったばかりの段階で、孫崎:「この資料(FNNの記事)に書いてあるのは、『奈良県警は認否をまだ明らかにしていないが、動機について「安倍元首相の政治信条に対する恨みではない」と話しているという』」。岩上:「すごいことですよね。まだ殺害行為の認否を明らかにしてないのに、まず先に犯行動機の中に『政治信条への恨みではない』と」 孫崎:事件の「認否もしてないのに、『思想は関係ない』ということを本人が言いますかね?」、孫崎:「『政治信条は関係ない』という最初の報道(NHKの記事によれば)ですが、『総理に対して不満があり、殺そうと思っていた』と、言っているわけです。(中略)その不満というのは、殺そうとするほどの不満なわけですよ。この個人と安倍さんとの関係があるかっていうと、まず個人的なものはないと見ていいでしょう。そうすると、個人的なものがなくって殺そうとするまでの不満がある。でも、それは政治信条の恨みではないと」いう。孫崎氏の言葉を借りるまでもなく。個人的関係が全くない政治家を(厳しい警備体制をかいくぐって)殺すという究極的行為を行うのに、「政治信条」がないというのは全くおかしいかぎりである。
4 警備体制の厳しい日本で白昼堂々と要人を「暗殺」できるのは外国勢力のみ
厳しい警備の網をかいくぐって、白昼堂々と元首相という要人に3メートルの距離まで近づいて、しかも銃を2発も発射して、確実に「暗殺」した。「警備体制が緩んでいた」と批判されているが、官僚組織が自らの判断で手抜きすることはない。誰かが手を抜くように指示したとしか考えられない。指示者は官邸を占領する治外法権の外国勢力以外にはない。無論これに証拠はない。
5 ロシアよりの安倍元首相の発言
5月29日付けのSputnikのよると、「日本の安倍晋三元首相はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のNATO加盟に関する姿勢とドンバスでの紛争解決の拒否が、ロシア軍による特殊作戦が始まった原因であると表明した。安倍氏は英誌エコノミストとのインタビューで『ゼレンスキー大統領に対して自国がNATOに加盟せず、ウクライナ東部の2つの地方に自治権を与えると約束させることができた場合、軍事行動は回避できただろう』と述べた。安倍氏は、ゼレンスキー氏の立場を変えることは非常に難しいだろうが、バイデン米大統領であれば影響を与えることができただろうと述べた。」と報道している。
6 背景に米軍産複合体による「サハリン1・2」で動揺する日本を抑える目的か?
6月30日、ロシアのプーチン大統領は日本の商社も出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の約1割を占めるサハリン2を失えば、大変なエネルギー危機に陥る。さらに「サハリン1」についてもロシア政府の管轄下に置くよう、下院のエネルギー委員長が言及している。
金子勝立教大学大学院特任教授は7月7日に「【戦争犯罪者プーチンの脅迫に逃げるキシダメ政権】アベ害交の不良債権に、一方で「ロシアを経済制裁」と言いながら、サハリン、アーク2では「プーチン支援」で日本の権益という二枚舌のキシダメ政権。ついに記者会見で「コメントせず」で逃げ出した。対ロシア政策も破綻。」とツイートしている。金子教授の勝手な妄想とは裏腹に、もし、「サハリン1・2」からのエネルギーが途絶えれば日本は危機的状況に陥る。官僚組織もそれは分かっており動揺している。安倍元首相をロシアへのエネルギー確保の密使にという話も出た。安倍元首相の「暗殺」は米軍産複合体に逆らえばどうなるかという脅しの可能性もある。