<<比例区・野党4勝28敗>>
今回の参院選、「野党共闘」の機運がしぼみ、「バラバラ野党」と酷評される野党共闘の現状からすれば、野党はよくぞ持ちこたえた、と言えるのかもしれない。
その象徴が沖縄選挙区での、オール沖縄の野党統一候補・伊波洋一氏の当選である。オール沖縄は「選挙イヤー」の今年、名護市長選をはじめ4市長選で連敗してきており、逆風下であった。対して、与党候補・古謝氏の応援には、岸田首相や菅義偉前首相、茂木敏充幹事長などを次々と送り込み、物心両面、保守勢力全組織を挙げての全面支援態勢で勝利を当然のものにせんとしていたにもかかわらず、オール沖縄が競り勝ち、与党は敗北した。大勝したはずの自民にとってこの沖縄での古謝氏敗北の打撃は極めて大きい、と言えよう。
しかし問題は、沖縄以外の1人区の野党共闘である。前回の2019年参院選は、立憲民主、共産、国民民主、社民の野党4党が全1人区で候補者を一本化し、10選挙区で勝利している。しかし今回は、全国32ある改選数1の「1人区」で、自民党が28勝4敗となった。野党にとっては4勝28敗、野党の大敗である。
共闘が崩壊し、それでもかろうじて自民との一騎打ちが11選挙区にとどまり、野党系が議席を得たのは、立憲民主現職が勝利した青森と長野、国民民主党の現職が勝った山形のみであった。過去2回連続で野党系が勝利してきた岩手、宮城、新潟をはじめ、複数の1人区で与党候補に競り負けてしまったのである。統一候補でこそ勝てるものが、それぞれの党勢拡大のために足を引っ張り合った結果がこれである。
野党共闘を崩壊に導き、自民大勝をもたらした立憲民主党幹部、連合労組幹部は責任を問われてしかるべきであろう。野党第1党の求心力を自ら放棄した泉党首をはじめとする執行部は刷新されるべきであろう。
同時に徹底して野党共闘を追求すべき共産党も、事実上の野党統一候補路線、押しかけ統一候補路線を放棄し、独自候補による共産党比例票拡大にのみ戦略的重点を置いた選挙戦略そのものが、共産党の後退をもたらしたことを深刻に反省すべきであろう。
<<政局転換の余地>>
こうした野党共闘後退の結果、改憲勢力は、与党の自民、公明党に加え、日本維新の会と国民民主党を合わせて3分の2を超える勢力を獲得した。数だけをみれば、4党で改憲発議に必要な3分の2を超えている。しかし選挙戦、街頭演説ではほとんど9条改憲論議は素通りである。
なおそれでも、選挙戦終盤、安倍前首相が銃弾に倒れるという異常事態で、危惧された「弔い選挙」による自民党の超圧勝に至らなかったこと、自民を超右派路線で補完する維新躍進による野党第一党化も阻止されたこと、与党すり寄り路線に転じた国民民主党が後退したこと、などは、まだまだ政局転換の余地があることも同時に示していると言えよう。
あらためて、選挙結果を確認すると、
第26回参院選 全議席 新勢力
自民 119 ( 8 増 )
立憲 39 ( 6 減 )
公明 27 ( 1 減 )
維新 21 ( 6 増 )
共産 11 ( 2 減 )
国民 10 ( 2 減 )
れいわ 5 ( 3 増 )
N党 2 ( 1 増 )
社民 1 (横ばい)
参政 1 ( 1 増 )
無所属 12( 3 減 )
比例代表 党派別得票・獲得議席
党派 改選 今回 得票 得票率
自民 19 18 18,258,791 34.4%
維新 3 8 7,845,985 14.8%
立民 7 7 6,769,854 12.8%
公明 7 6 6,181,431 11.7%
共産 5 3 3,618,342 6.8%
国民 4 3 3,159,045 6.0%
れいわ 0 2 2,319,159 4.4%
参政 0 1 1,768,349 3.3%
社民 1 1 1,258,621 2.4%
N党 0 1 1,253,875 2.4%
この比例区の得票数、得票率から現時点で留意すべき点、指摘されるべき弱点として、
・社民党・福島党首が何とか持ちこたえ、政党要件としての得票率も2%をぎりぎり確保したこと。
・共産党は、最重点を置いた比例区得票拡大戦略にもかかわらず、2013年515万票、2019年450万票、そして今回360万票と得票数を大きく減少させていること。
・れいわ新選組は、前回228万票で、今回231万票、2議席確保したが微増であり、山本太郎氏は9年前の東京選挙区で66万6千票獲得していたが、今回56万5千票と約10万票ほど減らしていること。
野党第1党・立憲民主党の求心力が働かない現状の中で、この社民党・共産党・れいわの大胆な統一政策の練り上げ、野党共闘のイニシアチブ、広範で多様な統一戦線の形成が要請されているのではないだろうか。
(生駒 敬)