【投稿】ガス不足で今冬には日本は凍え死ぬ―「サハリン2」からの日本企業撤退要求と日本政府の対応―
福井 杉本達也
1 「サハリン2」から日本排除も
ロシアのプーチン大統領は6月30日、日本の商社も出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。「同事業に参画する三井物産と三菱商事はロシア側の条件をのまないと株主として残れない事態に発展した。日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の約1割を占めるサハリン2を失えば、電力の供給不安は一段と深刻になる」(日経:2022.7.2)。
政府は4月8日にロシアによるウクライナ侵攻の追加制裁を表明し、資産凍結をロシア最大手銀行のズベルパンクに広げ、ロシア産石炭の輸入を禁止、在日ロシア大使館の外交官ら8人を圏外追放した。日ロ間は戦争状態でもないものを、米国のいうがままにロシア資産を凍結するなどという行為は窃盗である。日本や反ロシア派がやっていることは、日本を滅亡させるための愚劣極まる行為である。「サハリン2」は日本に最も近いガス田であり、輸送コストも低い。天に唾する行為であり、もはや、対ロ制裁の失敗は誰の目にも明らかである。日本が敵視している中国の企業が「サハリン2」の代わりに入るかもしれないよ。ウクライナ戦争は欧州での話であり、極東の日本とは全く無関係の話である。米国の言いなりになってロシア制裁に加わればこういう結果となることは目に見えていた。ロシアは何度も日本にシグナルを出していたが、それを無視し、欧米の手先としての道を選んだ。しかし、損害を被るのは日本国民である。岸田首相は「サハリン2」ショックに対し「ロシアの対応を注視」・「関係企業と連携して対応を検討」という、全く頭が空っぽのコメントを出した。明日にもエネルギー危機で国家が綴れるかもしれないという必死さを全く感じない。7月2日のテレビ東京BIZで松尾日本経済新聞編集委員は、「サハリン2」のLNGを日本は600万トン輸入しており、仮に全面停止となれば冬場には「強制停電」もありうると心配する。日本は冬場に電気なしで凍え死ぬ。岸田氏の発言は哀れとしかいいようがない。
2 支離滅裂の岸田首相のNATOサミット出席
岸田首相ほど日本国の国益を積極的の損ねている人物はいない。日本はNATO加盟国ではない。NATOは加盟国が攻撃された場合、全体への攻撃とみなし「集団安全保障」を敷く。日本は極東に位置し、NATOは北大西洋である。それを何をのこのことNATOまで出かけたのか。春名幹男氏は「岸田首相の動向を見ている限り、外交・安全保障政策は支離滅裂です。今回のNATO首脳会議で『米欧VS中ロ』の対立構図は鮮明となり、世界が新たな冷戦体制に向かっていくことがハッキリした。日本が米欧側に立ち、NATOの準加盟国を志向していることも明確になった。これは戦略的転換です。経済的かつ政治的な枠組みであるEUとの関わりを深めるのならまだしも、核共有制度をとり、核戦力を基礎とする軍事同盟のNATOへの接近は、国是として堅持してきた非核三原則に反する。岸田外交は矛盾だらけ。抑止力どころか、周辺国を刺激して緊張を高めるだけです」(ゲンダイ:2022.6.30)と手厳しく批判した。中国も「東アジアの未来を語る前 東アジアの昨日に何が起こったか反省してほしい」=中国外交部報道官が日本側のNATOサミット発言を批判。外交部の趙立堅報道官は1日、日本の岸田文雄首相によるNATOサミットでの発言を批判した(CRI:2022.7.1)。
今度のNATO会議にまんまと乗せられた岸田首相。「サハリン2」の接収は元々容易に予想出来た。「サハリン2」とNATOとどっちが大事なのか?アメリカの言う事に追従し、自国の利害を深読みできず、あまりにもお粗末な外交無知である。
3 米国の操り人形として無節操に動く岸田首相
米国の言いなりで国益を全く無視して無節操に動く岸田首相は、国民にとってあまりにも危険な首相だ。「ジャン・アダムズ駐日豪州大使は、「米国やG7の対ロシア制裁に完全に同調した日本のスピード感は、エマニュエル大使がお膳立てした効果的なコミュニケーションがあった」と指摘」した(ブルームバーグ)。官邸は完全に外国勢力に乗っ取られてる。米国の言いなりに対ロ制裁を繰り返し、挙句にNATOサミットにまで顔を出し、その先の結果も考えない。物価高に円安、さらにエネルギー危機・電力危機、農業用肥料高騰となれば、いいかげん国民は目を覚まさなければならない。
かつて、米国から締め付けられて、イランのアーザーデガーン油田の開発利権を手放した。代わりに参加したのは中国石油天然気集団(CNPC)である。対米追随で日本が大損した。今やイランも上海協力機構(SCO)加盟国である。開発利権に空席が出れば誰でも参入する。中国や韓国・インドなどは手ぐすねを引いて待っている。
4 日ロ漁業協定・知床観光船遭難行方不明者捜索でも後手後手
ロシア外務省が北方領土周辺水域での日本漁船の「安全操業」を担保する漁業協定の履行を停止すると発表した。日ロ漁業協定は1998年に締結されたもので、日本側が資源保護への協力としてロシア側に資金を支払い、日本漁船がクリル諸島で操業するものであるが、今回「日本側が、協定に基づく支払いを『凍結』した」としていた。その後、2022年は昨年より200万円少ない8800万円を日本側が支払い、解禁された。これに対し、日経新聞の6月9日付け社説は「ウクライナ侵攻に伴う制裁の責任はすべてロシア側にある。漁業交渉に結びつけるのは、両国の信頼関係を大きく損なう決定で遺憾だ。」「今後、新たな報復措置を打ち出す可能性がある。政府はそれらに備えるとともに、屈することなく、自らの立場を貫いてほしい。」と書いた。「立場を貫い」たらどうなるのか。全面衝突以外にない。全くの米国の広報紙である。
知床半島沖の観光船沈没事故後、北方領土・国後島で見つかった男女2人の遺体と、事故で行方不明となった2人のDNA型が一致したとの連絡が、ロシア側からあった。遺体の早期引き渡しに向けて調整を進めていく(福井:2022.6.25)としているが、事故から2か月、早くから遺体があるとの連絡を受けたにもかかわらず、まだ遺体の引き取りもできない・引き取りのやる気もないというのは遺族にとってあまりにも非情であり、後手後手の対応である。
5 ドイツや、当の米国の方が制裁を回避して賢く動いている―無能の岸田も頭を少しは使え!―
Sputnik 6月14日付けによると、米国財務省は、制裁対象のロシアの銀行とのエネルギー関連取引を12月まで許可する一般ライセンスを発行した。同省によると、、Vnesheconombank、Otkritie、Sovcombank、Sberbank、VTB、Alfa-Bank、およびロシア中央銀行との取引が許可される。ライセンスの目的は「エネルギーに関連する」もので、原油、リース凝縮液、未完成の石油、天然ガス液体、石油製品、天然ガス、またはエネルギーを生産できるその他の製品が含まれる。これは、原子力、熱、再生可能エネルギー源を含むあらゆる手段によるバイオ燃料、またはウラン、ならびにあらゆる形態のウランの製造、ならびに開発、生産、生成、送電、または電力の交換に使用される石炭、木材、または農産物も含まれるという広範囲なものである。米国は自らが制裁を課しながら、自らは制裁を必死に回避しようとして動いている。また、ブルームバーグによると、バイデン政権は農業会社や海運会社にロシアの肥料をもっと購入して運ぶよう静かに促している(Zerohegee 2022.6.14)。
また、ドイツなどEU諸国は、エネルギー危機のリスクが高まる中、ガスの支払いをルーブルで行うというロシアの要求に同意したとワシントンポストが報道した。ワシントンポストは、この同意をロシア側の「勝利」と呼んでいる。ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は、ロシア国営ガス企業ガスプロムの輸出子会社「ガスプロム・エクスポルト」の顧客である54社の約半数がルーブル口座を開設したと述べている(Sputnik 2022.5.26)。
欧米諸国は自ら課した制裁から自らだけが逃れるため、あらゆる方法を駆使している。それと引き換え、日本は全く何も考えず、米国の言うがままにロシアに対する非友好国として振舞っている。いくらバカとはいえ、少しは自らの頭で考えなければ、国民生活はどん底に突き落とされる。