【投稿】安倍元首相「暗殺」と「国葬」に米ネオコンの影
福井 杉本達也
1 法の支配と法治主義が崩される「閣議決定」による「安倍国葬」
憲法学者の小林節慶応大名誉教授は「憲法上、日本国の意思を決定する機関は、(改憲の場合を除いて)『国会』であり内閣ではない。内閣は、国会が決めた国家の意思を執行する機関である(73条)。」「これが憲法に明記された国家権力の行使に関する基本ルールである。」「元首相の国葬の根拠になる法律は存在しない。」「現憲法下での元首相の国葬は吉田茂氏の一例があり、それも閣議決定による。しかし、違憲は違憲である。」「国葬にはその根拠を定めた法律が不可欠である。だから、今回、『安倍国葬』がふさわしいと岸田首相が考えるなら、時間はあるのだから、議案として堂々と国会に提出すべきである。」「また、『法の支配』(憲法)と『法治主義』(立法権)が侵された。」と述べている(『日刊ゲンダイ』2022.7.26)。
今回の岸田内閣による「安倍国葬」は「暗殺」というショックから抜け出す間もなく唐突に閣議決定され、その根拠も曖昧であり全く説得力に欠ける。あたかも、安倍氏を祀り上げて「暗殺」という事実自体の議論を封じようとする意図が感じられる。
2 まともな発表もなされない奈良県警の警備体制
奈良県警察本部 鬼塚友章本部長は「警護・警備に関する問題があったことは否定できないと考えており、早急に問題点を把握し適切な対策を講じたい」と述べているが、なぜ問題があったのか、一向に明らかとなっていない。また、マスコミも警察からの一方的情報を垂れ流すのみで、まともに警備の不備を分析するような記事は皆無である。関西テレビによると「立憲民主党の関係者によると、ことし4月に泉健太代表が同じ場所で演説したいと申し出ると、警察から『後方の警備が難しい』と指摘され、断念していたことが分かりました。そのため泉代表は、少し離れた場所で演説。警察から車の上で演説することや、車を防弾パネルで覆うことなどを要望されたといいます。」(2022.7.21)。
また、産経新聞の『主張』は「警護の成否は、警護対象が死亡すれば0点である。重大な結果が生じた以上、警備に問題があったことはすでに明らかだ。どこにどんな問題があったのか。反省点を速やかに検証すべきである。疑問点は多々ある。なぜ、やすやすと山上容疑者に背後からの接近を許したのか。1発目の発砲から致命傷となったとみられる約3秒後の2発目まで、警備陣はなぜ安倍氏の防御に動くことはできなかったのか。山上容疑者は犯行の約1時間半前から現場を徘(はい)徊(かい)する姿が確認されている。不審者として職務質問の機会はなかったか。帯同する警視庁警備部警護課員(SP)1人という態勢に問題はなかったのか。奈良県警による警備実施の計画を、警察庁はどこまで把握し、確定していたのか。適切な指示、指導は行われたのか。」(2022.7.13)等々の数々の疑問点が当初より出されている。しかし、警察からはまともな説明も言い訳も一向に出されていない。警察のリークでは、「1発目の発砲を車のパンクの音と誤認した」などという間の抜けた情報のみがマスコミに流されている。事件翌日のNHKニュース7に生出演した元警視総監で警視庁公安部長などを警備、公安の要職を歴任した米村敏朗氏は「不審者がいれば未然に確保することは大事なこと」とし、「ここで言う背後からの接近、この状態というのは不審そのものじゃないですか?なぜそこで動かなかったのか、ということが大きなポイントだと思います」と指摘した。1発目の「銃声を聞いた時に安倍元総理を倒してでも地面に押さえて、自分が守るということができなかったのか。十分に見るべきだろうと思います」と話した(『スポーツニッポン』2022.7.10)。後方警戒の人員は置かれず、ガラ空きの背後から接近されて撃たれ、誰も元首相をカバーしない。素人目にもあまりにも杜撰な警備である。これが全て偶然だというには無理がある。奈良県警、そしてその上部機関の警察庁も一枚かんでの警備の意識的手抜きが引き起こした「暗殺」事件と捉える以外には説明のしようがない。
3 「消えた」銃弾
警察庁側は、安倍氏について銃弾が身体を貫かず、体内にとどまっている傷「盲管銃創」が確認されたと説明した。奈良県立医科大学付属病院によると、「安倍氏の首の右前部に約5センチの間隔で2カ所の小さな銃創があった。銃弾が首から体内に入り、心臓と胸部の大血管を損傷したとみられる。心臓の壁には大きな穴が開いていたという。左肩に銃弾が貫通したとみられる傷が一つあったという。体内から銃弾は発見されていない」(朝日:2022.7.9)・という。そもそも、背後から撃たれたにもかかわらず、首の前部に2か所の銃創があるというのも疑問である。別なスナイパーがいたという説を唱える者もいる。また、警察庁の説明では「盲管銃創」であり、銃弾が体内に留まっているはずであるが、病院の説明では「銃弾は発見されていない」。銃弾が「消えた」のである。もし、弾が出たところとすれば、右首の傷口の損傷は大きくなって、大量出血になる。しかし、現場の写真を見る限り、ほとんど出血がなく、傷は丸く小さい。これも、物理的にあり得ない。自民党の青山繁晴氏は体外に弾は出ず、肺などの体内空洞に大量出血して、失血死したとの説である。その後13日に現場から90m先の壁に「銃弾発見か?」の見出しの記事が出たが(福井:2022.7.14)、これが安倍氏を殺害した銃弾なのかどうかは不明である。容疑者の手製の銃から発射された銃弾かどうか、あるいは安倍氏の体内を「通過」した銃弾かどうかも全く不明である。これでは容疑者がどの銃を使って殺傷したのかの証拠を確定することはできない。
4 容疑者の手製の銃では人を殺傷できない?
銃というのは精密な工業製品である。こんな粗悪な、手製の銃で、人間を殺傷出来るのか。しかも頸元に正確に2発もの銃弾を撃ち込むことができるのか。海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は19日の記者会見で、「銃の自作能力を自衛隊の教育や訓練で得ることは無理だ。所要もなく、教育訓練を行うこともない」「銃を自ら作り、火薬を調達して自分で作製することは砲雷科の通常の動務では穫得し得ない知識、技術だ」と述べている(福井:2022.7.20)。警察は容疑者は奈良県の山中
で試し打ちしたとか、集合住宅の1室で火薬を乾かしたなどとリークしているが、そのようなもので薬きょうなどを作れるはずもない。子供騙しにもならない戯言である。
5 容疑者の動機には論理の飛躍:「安倍氏は本来の敵ではない」
奈良地検は25日、容疑者の鑑定留置を始めたと発表した。「11月29日まで約4カ月間にわたる精神鑑定の結果は刑事責任能力を判断する根拠」となる(日経:2022.7.26)。容疑者のブログには「強い恨みがつづられており、安倍氏については『苦々しくは患っていましたが、本来の敵ではない』」とつづられていたと報道されている(日経:2022.7.18)。近畿大学の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「殺意が宗教団体ではなく安倍氏に向かったのは論理の飛躍がある。」と解説する。統一教会に恨みがあったのに、安倍氏殺害に向かったという動機が不明なのである。通常、このような裁判は裁判員裁判で行われる。あまりにも動機があいまいで、論理が飛躍し過ぎておれば、裁判員裁判での公判維持は難しいと検察は考えている。あるいは、裁判を遅らせることにより、国民の目をそらせようと考えているのかもしれない。
6 米国にお伺いを立てなければ何事も決められない対米従属国家日本
白井聡氏は「戦後の国体とは何なのかといえば、いわば日本の上にワシントンが乗っかっている」「戦後天皇制というのは頂点にアメリカがある」とし(『誰がこの国を動かしているのか』鳩山由紀夫+白井聡+木村朗)、また、別のところで白井氏は「対米関係における永続敗戦、すなわち無制限かつ恒久的な対米従属をよしとするパワー・エリートたちの思考である」とし、「岸信介は『真の独立』と言い、…安倍晋三は『戦後レジームからの脱却』を唱えてきた。これら永続敗戦レジームの代表者たちの真の意図が、これらのスローガンを決して実現させないことにある」と書いている(白井聡『永続敗戦論』)。首相退任後の鳩山由紀夫氏は、「特に安全保障においては常にアメリカにお伺いを立てなければ何事も決められない」「日本の官僚と米国、特に米軍が常に密接につながっていて、我々日本の政治家と官僚のつながりよりも、むしろ濃いつながりを持っている」「アメリカの意思を尊重しながら…何でもお伺いを立てなければ物事が決められないという状況」にあると述べている(鳩山+白井+木村:同上)。つまり、“我が国を動かしている”事実上の主権者は日本国民ではなく、米国であり、日本の官僚は米国の意向を忖度をしながら物事を進めている。日本の警察機構を直接指示し、要人の警備を緩める行為は米国の指示を仰がなければできるはずはない。安倍「暗殺」は、「永続敗戦レジーム」がいよいよ賞味期限を迎えたということを意味する。
7 なぜいま「統一教会」か
7月28日発売の『週刊新潮』の見出しは「『安倍』と『統一教会』ズブズブの深淵」である、同じく『週刊文春』の見出しは「統一教会の闇 自民党工作をスッパ抜く!」である。国際勝共連合=統一教会と日本政界・特に自民党、中でも安倍派(清和会)との深い関係はその設立当初より指摘されていた。1968年1月に韓国で国際勝共連合が設立されると、3カ月後には日本でも同組織が設立された。その前年に教祖の文鮮明が来日し、右翼の大物・笹川良一・児玉誉士夫らと会い、岸信介首相がそれをバックした。当初の事務所は岸信介氏の敷地内に設置されている。安倍元首相の弟であり、岸信介首相の孫にあたる「岸防衛相は26日の記者会見で、『世界平和統一家庭連合』(旧統一教会)との関係について、『付き合いもあるし、選挙の際も電話作戦などボランティアでお手伝いいただいたケースはある』と明らかにした。『選挙だから支援者を多く集めることは必要だ』とも語った。」(読売:2022.7.26)と報道されているように、それこそ、「ズブズブ」の関係が現在も連綿と続いている。マスコミは、こうした統一教会と日本政界の関係を長年にわたり掴みながら報道してこなかった。問題はなぜ安倍氏が「暗殺」されてから突然のように、報道が“解禁”され、統一教会と清和会叩きが始まったかである。
清和会を中心とする岸信介首相の系統は戦前の日本のパワー・エリート達であり、米国に背面服従しつつも独自核武装や自主防衛を唱えるなど、米国の支配から独立したいという“願望”を持っている。そのためのバランス外交として、プーチンのロシアとも習近平の中国とも交渉してきた。安倍氏「暗殺」の背景には日本の政治家がプーチン・ロシアに接近する事を絶対に許さない、元トロツキストで根っからの「反ロシア」主義者・強硬派ネオコンの存在がある。
8 ネオコン:ヌーランドの初訪日
アメリカ大使館のツイッターは7月25日「ビクトリア・ヌーランド国務次官を、政治担当国務次官として初めて日本に迎えました。」とツイートした。ヌーランドの父方の祖父はロシアから移民したウクライナ系のユダヤ人である。夫はネオコンの論客でブルッキングズ研究所上席フェローのロバート・ケーガンである。ビクトリア・ヌーランドはオバマ政権下の2014年、米国務省欧州・ユーラシア担当次官補として、マイダン広場でのネオナチによるデモが始まると現地に姿を表し、ネオナチに飴玉を配ったりした。ウクライナのネオナチ・反露派の指導者と面談して支援を約束したことから「マイダン革命」が起きた(高野孟:2022.4.19)。トランプ政権下では冷や飯を食ったが、今回の訪日では国務省No3の格上の立場で、「岡真臣・防衛審議官と鈴木敦夫・防衛事務次官」「森外務事務次官」と合い、「G7の政務局長でもある山田重夫外務審議官との会合および夕食会」に出席したとツイートした。ヌーランドは日本の自主独立路線を否定し、余計なことは考えずに、ひたすらウクライナのように米国の先兵として最後の一兵まで血を流せと命じたのであろう。台湾と日本を次のウクライナにして中国と戦わせ、中国の国力を弱めるというのが今後のネオコンの方針である。しかし、米国自身は戦わない。その延長線にペロシ米下院議長の台湾訪問計画が浮上している。
「安倍氏銃撃の真犯人は韓国系狙撃手か」との孫崎享元外務省国際情報局長の仮説 荒唐無稽でない証は、KCIAが後の韓国大統領を暗殺目的で東京から拉致した「金大中事件」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/520441
やはりアメリカ絡んでた可能性;
安倍氏暗殺の背後にはジョセフ・ナイの「対日超党派報告書」が関係しているのではないかと感じます。
http://aya-uranai.cocolog-nifty.com/blog/2023/05/post-73bbbe.html