【投稿】米・イスラエル:ガザ虐殺の第二段階--経済危機論(125)

<<「子どもたちに対する戦争」>>
イスラエルのガザ攻撃再開によって、パレスチナ・ガザ地区は「停戦協定締結」前の段階よりもより一層過酷な、ジェノサイド・大虐殺の様相を濃くした「悪夢のような状況」をもたらしている。
 赤十字国際委員会のロバート・マルディーニ事務局長は、爆撃再開によりガザの人々は「停戦協定締結前の悪夢のような状況に逆戻り」し、以前よりもさらに何百万人もの人々が切実に支援を必要としている、食料、医薬品、きれいな水、そして衛生的な生活環境が皆無に近くなり、「人々は限界点にあり、病院も限界点にあり、ガザ地区全体が非常に不安定な状態にある」と語っている。
ガザ南部のカーンユニスに滞在中の国連国際児童緊急基金(ユニセフ)のジェームズ・エルダー報道官は、多くの人が避難している市内のナセル病院の近くまでが空爆されており、「ガザの人道状況は非常に危険であり、持続的な平和と大規模な緊急支援以外はガザの子どもたちにとって破滅を意味する」と警告し、ガザへの攻撃は「子どもたちに対する戦争」であると告発している。

この2か月弱の間に、イスラエルは子供6000人、女性4000人を含む少なくとも1万5000人以上を殺害し、約3万人が負傷し、6000人以上が行方不明1となり、その多くは瓦礫の下に埋もれている。 殺害された人の70%は女性と子供である。10万棟の建物を破壊・損傷し、170万人のパレスチナ人を南部へ避難させ、その南部まで爆撃し、ガザの医療施設のほとんどを破壊した。まさにジェノサイドそのものである。

 停戦・人質交換協定の過程で、ネタニヤフ政権内最右派から、イスラエル国防軍(IDF)は、「勢いを失っている」との繰り返しの苦情と首相罷免要求、さらには支持率急落の中で、ネタニヤフ首相は何が起こっても軍事行動を再開することをすでに決定していたのである。ガザへの攻撃を継続させると約束し、「地上攻撃の最も集中的な段階が2024年初頭まで続き、1年以上続く」、新たな段階の戦争準備を進めていることを請け合ったのである。

12/3に公開されたハマスの公式声明は、「私たちは、民間人捕虜交換作戦の後、侵略がガザに戻るだろうという情報を持っていました。ガザへの侵略が続く限り捕虜交換は行われない。私たちは解放の戦いの最中にあり、占領者は私たちの土地から立ち去らなければなりません。」と述べている。ハマス上級報道官オサマ・ハムダン氏は、「一時停戦の過去7日間、イスラエルは毎日、プロセス全体を弱体化させるような行動をとっていた」と語り、「解決策は停戦を結ぶことではない。本当の解決策は、この占領を終わらせる仕組みを見つけることである。」と強調している。

<<ガザの巨大なガス鉱床>>

ガザにおけるイスラエルの大量虐殺作戦の第1段階から、第2段階への移行は、停戦などとは全く無縁な、さらに高いレベルのパレスチナ住民の死、ガザ地区全体のガレキ化と占領をもたらす危険性を現実のものとしており、すでにイスラエル情報省は、漏洩した報告書の中で、ガザ地区住民をエジプトのシナイ半島へ強制移住するよう求めている。

11/30、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ政権幹部らと会談したブリンケン米国務長官は、イスラエルに対し、ガザ地区の民間人保護に一層の努力をするよう求めたと伝えられている。しかし、イスラエル政府は、バイデン政権が表明した公的および私的な懸念を繰り返し無視しており、懸念への言及さえ拒否している。ブリンケン氏は、停戦の一時停止は「ハマスのせいで終わった。ハマスは約束を反故にした」というイスラエルの嘘・いつわりを支持し、この期に及んでも、米国が「自国を守るイスラエルとの強い団結」を繰り返している。その一方で、米国は「民間人を守るためにあらゆることを行っている」と主張しているが、ニューヨーク・タイムズ紙からは「しかし、彼はイスラエルによる具体的な約束には言及しなかった。」と皮肉られている。
 それどころか、膨大な数の民間人や子供の死者数にもかかわらず、米国はイスラエルに無条件の軍事援助を提供し続けている。 ホワイトハウスは、イスラエルがガザ地区で何千人もの罪のない人々を殺害していることを認めているが、米国の支援に影響を与える「越えてはならない一線」はないと述べた。

イスラエルのガザ大虐殺の共同正犯として、今や「ジェノサイド・ジョー」と怒りを込めて糾弾されるバイデン大統領は、自らの政治的延命をあきらめざるを得ない段階に追い込んでいる、とも言えよう。アメリカ国民と全世界が目撃してきたパレスチナ人虐殺の恐るべき残虐性、規模、アパルトヘイト政策を無条件に支持してきたバイデン氏は、1年を切った大統領選で最も頼りにすべき民主党支持層からでさえ見放されつつあり、18歳から40歳までの民主党員の実に70%が、イスラエル・ガザ「戦争」に対するバイデンの「対応」に「反対」であることが世論調査で明らかになっている。「この世論調査は驚くべきものだ。イスラエル・ハマス戦争がバイデンに与えている影響を考えると、驚くべきものだ」と報道される事態である。2020年にトランプ大統領ではなくバイデン氏のために懸命に働いた多くの活動家は、気候変動、人種的正義、ガザ虐殺、その他で、今やバイデン氏に対してほとんど熱意を持っていないのである。
さらに、ミシガン州、ミネソタ州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、フロリダ州、ジョージア州、ネバダ州、ペンシルベニア州のイスラム系米国人の指導者らがミシガン州ディアボーンに集まり、「これら激戦州の指導者らは2024年の選挙でバイデン氏の敗北を保証するために協力する」#AbandonBidenと呼ぶキャンペーンを開始する予定を明らかにしている。アラブ系アメリカ人やイスラム系アメリカ人の怒りは、2020年に勝利した激戦州のほとんどでバイデン大統領の再選の見通しに直接的な悪影響を与える可能性がある、と指摘されている。

それでもなおバイデン氏は、イスラエルの無条件指示にこだわり続けるのか? それは民主党議員の大多数に膨大な政治資金支援を続けてきているイスラエルロビーの政治的経済的影響力、そして戦争利権と固く結びついたネオコン勢力とバイデン氏が切っても切れない関係にあること、
そしてさらにイスラエル・ガザ地区沿岸の巨大なガス鉱床の存在が、国際石油・エネルギー独占資本、金融資本にとって、BRICS諸国から

の追い上げ、中東での影響力の後退を跳ね返す機会到来、と手ぐすねを引いていることと無関係ではないであろう。
その巨大なガス鉱床は、1兆立方フィート(約3000億立方メートル)をはるかに超えており、世界のエネルギー供給分野で大きなプレーヤーとなる可能性を秘めており、ガザのパレスチナ住民を追い払うことがこのガス鉱床を略奪する決め手でもある。米・イスラエル両政権が結託する根底に横たわっているこの政治的経済的利害こそが、ガザ大虐殺をもたらしているとも言えよう。
すでにパレスチナ人は、「我々のガスは、我々の権利である」と宣言し、昨年9/13にはパレスチナと世界を結ぶ海路の建設を要求している。(Our Gas is Our Right Palestinians rally on Sept 13 2022)。(the Washington Post November 25, 2022

このようなバイデン・ネタニヤフ両政権のジェノサイド路線は世界から孤立しつつあるが、それをさらに破綻させることが要請されている。ガザ虐殺の第二段階への移行は、さらなる政治的経済的危機を深化させるであろう。
(生駒 敬)

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