<<国連総会、即時停戦要求決議を圧倒的多数で可決>>
12/6、国連のグテーレス事務総長が国連憲章・第99条「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」にもとづいて、この第99条発動という異例の措置を講じ、国連の安全保障理事会に書簡を送り、パレスチナ・ガザ地区での破滅的事態を回避するための緊急行動を求めた。
書簡では「ガザ地域にある家屋の半数以上が破壊され、220万人の住民の80%が家を追われ、国連施設に110万人が避難を求め、ガザ地区の医療システムが崩壊しつつあり、36の医療施設のうち部分的にも機能しているのは14にすぎない」と述べ、ガザ地区への人道支援体制が崩壊の危機に瀕しており、これが地域の国際平和と安全保障に重大な危険な状況をもたらしているとして、安保理に「人道的大惨事」を回避する「人道的停戦」を宣言するよう促したのであった。
12/8、安全保障理事会は「人道的即時停戦」と人質全員の無条件解放を求める決議案を採決したのであるが、米国は15カ国からなる理事会の中でこの法案に反対票を投じた唯一の国であった。この措置に賛成票を投じた安全保障理事会加盟国13カ国は、アルバニア、ブラジル、中国、エクアドル、フランス、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、ロシア、スイス、UAE(アラブ首長国連邦)である。米国の緊密な同盟国であるはずの英国は棄権した唯一の国であった。13対1で可決したのであったが、決議案は米国の拒否権行使により採択されなかった。しかしこの時点で、米国とイスラエルは孤立に追い込まれていることが明らかである。
その翌日、イスラエルのネタニヤフ首相はアメリカの拒否権使用を「感謝」、「評価」し、「正義の戦争を継続する」と、あくまでもガザ虐殺路線の継続を宣言したのである。
すでに、10/16、ロシアが提起した人道危機を回避するための即時停戦決議に、ロシア、中国、UAEなど5か国が賛成、米国と英国、フランス、日本の4か国が反対、残る6か国が棄権で採択されず、その2日後のブラジルが提出したガザ地区での「人道的一時停止」を求める決議案にも、理事国15カ国のうち12カ国が賛成票を投じたが、採択に必要な9カ国以上の賛成は得られたものの、反対したのは米国のみが拒否権を行使し、否決となっている。
12/12、米国が拒否権を発動して破棄した4日後、緊急に招集された緊急特別会合の国連総会は、ガザでの人道的即時停戦を要求する決議を圧倒的多数で可決したのであった(賛成: 153 反対: 10 棄権: 23)。決議は、人道的停戦、民間人の保護、人質全員の即時無条件解放と人道的アクセスを要求している。
この決議案を起草したアラブ20カ国とイスラム協力機構は、193カ国の機関の大多数の支持を獲得し、12/12の総会の緊急特別会期中に153カ国が決議案に賛成票を投じた。 この決議案には10カ国が反対票を投じたのは、米国、イスラエル、パプアニューギニア、パラグアイ、オーストリア、チェコ、グアテマラ、リベリア、ミクロネシア、ナウルの10か国であった。
決議に反対票を投じた米国は、グリーンフィールド米国国連大使が総会で演説し、米国は「ガザの人道状況は悲惨であり、民間人は国際人道法で保護されなければならないことに同意する」として、圧倒的多数の賛成に配慮せざるを得ない苦渋をにじませながらも、「今の停戦はよく言えば一時的で、最悪の場合は危険だ」とイスラエル擁護に回り、イスラエルのギラド・エルダン国連大使は、この決議案をイスラエルの手を拘束しようとする「恥ずべき」試みであると非難し、「ガザでのイスラエルの作戦継続が人質を解放する唯一の方法だ」と強弁した。
この国連総会の即時停戦要求決議について、パレスチナのリヤド・マンスール国連大使は、この決議案は「『呼びかけ』でも『促す』ものでもなく、要求するものであり(The resolution “does not ‘call for’ or ‘urges’ – it demands)、「歴史的」であると称賛している。ハマス政治局員のイザット・アルリシュク氏も、声明の中で、イスラエルのパレスチナ人民に対する「大量虐殺と民族浄化の戦争」と呼ぶものを非難すると同時に、この決議を歓迎している。
国境なき医師団の事務局長アヴリル・ブノワ氏は、「今日、世界の大多数がガザでのこの流血と苦しみの終結を要求するために団結した。米国は再びガザでの民間人に対する大虐殺の継続を容認する決定を行った」と、米バイデン政権を糾弾している。
<<バイデン「イスラエルは支持を失い始めている」>>
明らかにバイデン政権は、窮地に立たされている。イスラエル・ネタニヤフ政権のガザ大虐殺・ガザ地区のガレキ化、パレスチナ住民のエジプト・シナイ半島への追い出し作戦は、全世界からのますます増大する批判の前に孤立化し、何よりも、いくら隠しても隠し切れない230万人近い人的被害と見捨てられた女性と子どもたちの虐殺は、道徳的、政治的深淵・危機の深刻な現実をさらけ出している。これを無条件で支持し、加担してきたバイデン政権自身も、「ジェノサイド・ジョー!」として糾弾され、全世界から孤立化に追い込まれる事態である。
そして、政治的・経済的危機として、バイデン、ネタニヤフ両政権が終始追求してきた「ガザを地図から一掃する」こと、その成果として巨大なガザのすべての海洋沖合ガス埋蔵量を没収することが頓挫しかねないことである。イスラエルがあってこそ、このガス鉱床が当てにできる。バイデン氏は、それを、「もしイスラエルがなかったら、我々はイスラエルを発明しなければならなかったでしょう。」と発言している。
12/12、バイデン氏は、ワシントンD.C.での非公開の募金活動中選挙キャンペーンレセプションで、この発言を再び確認し、ネタニヤフ首相をあだ名のビビで呼び、「私たちはイスラエルの強力な支持者として、自分たちが何をしているのか、何が目標なのかについて正直でなければなりません。私たちは、ハマスに対して、イスラエルが自らを守り、任務を完了するために必要なものを提供することから、当面は手を引くつもりはない。何よりもまず、ハマスの責任を追及するために全力を尽くしてください。 彼らは動物です。」とまで発言している。なんと、イスラエル国防相の「人獣」とたたかっている、という発言と同類である! 「ジェノサイド・ジョー」を自己暴露している。
しかしバイデン氏は同時に、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの「無差別」の爆撃によって支持を失いつつあると述べ、ネタニヤフ首相は強硬路線の政権を変える必要があるとの認識を示さざるをえなくなったのである。バイデン氏はさらに、イスラエルの極右政治家、ベングビール国家治安相に特に言及し、イスラエル現政権は「史上最も保守的な政府だ」と指摘。「ネタニヤフ首相はこの政府を変えなければならない」と、ネタニヤフ政権再編にまで踏み込んでいる。しかし、バイデン氏自身も急速に「支持を失い始めている」ことには言及できない。
窮地に追い込まれたバイデン政権のあがき、とも言えよう。
(生駒 敬)