11月27日の参議院予算委員会で岸田総理は、円安が進行する中でも今後5年間の軍事費は43兆円とする考えを改めて示した。しかし初年度のレートを1ドル=137円、2年目以降は108円という想定を元にした予算は、1ドル=150円という現実の前に、約3割のロスが生じるとみられており、破綻することは明らかである。
そのため政府は、ミサイルや艦艇、航空機の取得を最優先として、なんとしても軍拡計画を維持・推進しようとしている。
2024年度の軍事費は概算要求段階で7兆7385億円という過去最大のものとなっている。その内訳は東シナ海、南西諸島を主戦場としつつ、中国本土攻撃も想定した兵器の開発に重点が置かれている。
なかでも最優先とされているのが「スタンド・オフ防衛能力」の取得、すなわち長距離、高速ミサイルの取得、開発であり、約7500億円が投じられる。
既存の地対艦誘導弾能力向上型の開発・取得などに624億円、島嶼防衛用高速滑空弾の開発に836億円、極超音速誘導弾の開発・製造態勢の拡充などに85億円、さらに新地対艦・地対地精密誘導弾の開発に320億円など、国産各種誘導弾の開発、装備化を進めようとしている。
これらは「南西諸島に侵攻する中国軍の空海戦力」を迎撃し、さらには中国の航空基地を破壊することを狙ったものである。
さらに政府は、これら兵器の戦力化までの対中武力衝突を想定し、10月の日米防衛相会談を踏まえ、巡航ミサイル「トマホーク」を25年度から前倒しで配備することを決定した。当初は、最新型の「ブロック5」を26年度から導入する計画であったが間に合わないため、旧型の「ブロック4」を先行配備するとしている。
次に約1兆3787億円という最も多額の経費が投じられるのが、陸海空各自衛隊の兵器購入である。陸自の各種戦闘車両を始め、海自の新型護衛艦、潜水艦、補給艦、さらに空自のF35などの取得、建造が予定されている。
これに加え2隻の「イージスシステム搭載艦」建造を核とする、「統合防空ミサイル防衛能力」に約1兆2713億円が当てられる。
このように今後経済情勢が見通せない中でも、岸田政権は計画の修正をしつつ軍拡を進めるものと考えられるが、求められるのは計画全体の見直しである。
近い将来の台湾有事、対中軍事衝突惹起という軍拡の前提こそ、改めなければならない。西南諸島の要塞化が進むなか、11月23日那覇市で開かれ約1万人が結集した県民平和大集会では、対話による信頼構築が強く訴えられた。
11月16日の日中首脳会談では「戦略的互恵関係」が確認され、26日の日中韓外相会談でも首脳会談の早期開催で一致したが、それらを形式的なものにとどまらせないためにも、沖縄に連帯し岸田政権に軍拡政策の転換を求めていかなければならないのである。(大阪O)