<<「歴史上最大の愚行」>>
1/11夜、米英両軍が中東・イエメン北部にあるフーシ派の拠点16カ所、60以上の標的に対して、航空機、船舶、潜水艦から攻撃が行われ、150発のロケット弾とミサイルが発射され、紅海に進入した米誘導ミサイル潜水艦「フロリダ」が攻撃に加わり、巡航ミサイル「トマホーク」を発射する、という大規模な戦線拡大のエスカレートであった。
米国防総省・ペンタゴンのパトリック・ライダー報道官は、今回の攻撃は「良い効果」があったと発表。バイデン米大統領は当日の声明で、「紅海における国際海上船舶に対する前例のないフーシ派の攻撃への直接の対応として」攻撃を命令したと述べ、「本日、私の指示により、米軍は英国と協力し、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支援を受けて、フーシ派反政府勢力がイエメンの航行の自由を危険にさらすために利用したイエメン内の多数の目標に対する攻撃を成功させた。 世界で最も重要な水路の一つだ」と指摘し、「必要に応じて我が国国民と国際商取引の自由を守るため、さらなる措置を躊躇なく指示する」と明言。英国のスナク首相も、自国は「常に航行の自由と自由な貿易の流れを擁護する」とし、そのため英国は「自衛のために限定的かつ必要かつ相応の行動をとった」と言明、いずれもエスカレートを正当化した。
米国と英国は事実上、議会や国会の承認すら得られずに新たな戦争を開始したのである。バイデン大統領は、報道陣の前に出て作戦を発表、質問に答えることを放棄し、代わりに、ホワイトハウスはバイデンの名前で声明を発表したに過ぎない。
この共同攻撃には、さらにデンマーク、ドイツ、ニュージーランド、韓国の名前も挙げられた。ただし、昨年12月下旬に編成された、この米英主導の「繁栄の守護者作戦(Operation Prosperity Guardian)」に名を挙げられていたフランス、イタリア、ノルウェー、セイシェル、スペイン、ギリシャの6カ国は脱落している。同盟国であるはずのトルコのエルドアン大統領は今回の空爆を激しく非難し、米国と英国が紅海を「血の海」に変えたと非難しており、イタリア政府当局者は匿名で報道陣に対し、イタリアは紅海での「沈静化」政策を追求することを好み、襲撃への参加や支援を拒否したと語っている。
今回のエスカレートの特筆すべき第一は、米英とその追随諸国は、より広範な戦争を回避することが可能であるにもかかわらず、逆に、地域の緊張を高め、すでにレバノン、シリア、イラク、イエメン、紅海にまで波及している紛争の火に油を注ぎ、さらには対イランにまで戦争を拡大、大規模な中東戦争にエスカレートさせようとしていることである。
この攻撃のもう一つの特徴は、厳密に言えば、国連憲章に基づいて武力行使を承認できる国際システムの唯一の機関である国連からの安全保障理事会決議もなしに実行されたことである。
しかもこのエスカレートは、イエメン爆撃の当日、1月11日と12日、オランダのハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、南アフリカが提訴したイスラエルのパレスチナ人ジェノサイドの初公判が開催され、 国際司法裁判所(ICJ)で南アフリカが「イスラエルの空爆と地上攻撃はガザの『人口の破壊』・ジェノサイドを狙っている」と主張されている最中に行われた、恥知らずな爆撃であったことである。
イエメン当局は、この露骨な侵略によって、首都サナアのほか、
南西部のダマル、北西部のサッダ、最大規模のアル・フダイダが空爆を受けたことを認め、爆撃による被害で5人が死亡したと発表、フーシ派指導者ムハンマド・アル・ブハイチは1/12、英国と米国はイエメンへの攻撃が「歴史上最大の愚行」だったことを「すぐに認識する」だろう、と述べ、「この世界のすべての人は、2つの選択肢に直面している。大量虐殺の被害者側に立つか、それとも加害者側に立つかのどちらかだ」と言明している。
イエメンのフーシ派はイスラエルへ向かう船舶に対する軍事行動は、イスラエルによるガザでの大量虐殺を阻止、罰するというジェノサイド条約の第1条を実行に移したのだ、としており、フーシ派報道官のムハンマド・アブドゥサラム氏は、「紅海とアラビア海での国際航行に対する脅威はなく、標的はイスラエルの船舶や占領下のパレスチナの港に向かう船舶に影響を与え続けており、今後も影響を及ぼし続ける」と断固として言明している。
イエメンでは、攻撃を受けた翌日、この攻撃に抗議し、パレスチナ人民との連帯を継続する大規模なデモンレーションが行われている。。
<<「これは容認できない憲法違反だ」>>
バイデン政権自身が、米国内での大規模な抗議行動が再び拡大しているばかりか、今やアメリカ議会からさえ追求される事態に追い込まれている.政権当局者らは議会指導者らにイエメン爆撃計画について説明したが、議員からの正式な許可は得られなかった。逆に、議会は、イエメン戦争は違憲であることを追求する事態である。
・ ロー・カンナ下院議員 (民主党、カリフォルニア州 )
イエメンにおける大統領のストライキは憲法違反である。「イエメンのフーシ派に対する攻撃を開始し、我々を新たな中東紛争に巻き込む前に、大統領は議会に来る必要がある。 それが憲法第1条だ」 私たちは湾岸同盟国の意見に耳を傾け、緊張緩和を追求し、新たな中東戦争に巻き込まれるのを避ける必要がある。
・ トーマス・マッシー議員 (共和党、ケンタッキー州 4)
宣戦布告をする権限があるのは議会だけです。
・ ラシダ・トレイブ下院議員(民主党、ミシガン州)
バイデン米国大統領が「議会の承認なしにイエメンで空爆を実施
することで憲法第1条に違反している」。「アメリカ国民は終わりのない戦争にうんざりしている」
・ プラミラ・ジャヤパル下院議員(民主党、ワシントン州)
「これは容認できない憲法違反だ」「第1条は軍事行動が議会によって承認されることを要求している。」
・ 民主党のコリ・ブッシュ下院議員は「国民は、これ以上私たちの税金が終わりのない戦争や民間人の殺害に費やされることを望んでいない」、「議会の承認なしに
イエメンを空爆することはできない。これは違法であり、憲法第 1 条に違反します。
バイデンの手には血が付いている!
「バイデンはフェンス、憲兵、屋上の狙撃兵に守られホワイトハウス内
に隠れているが、包囲されたガザ地区の子供たちはイスラエルによる大量爆撃から無防備に放置されており、1時間に5人の子供が命を落としている。これは毎日約117人の子供が殺害されていることになる!」 直接行動の先頭に立った反戦団体「コードピンク」の共同創設者ジョディ・エヴァンス氏はそう宣言した。ガザでのバイデンの共謀に抗議するため、血まみれの赤ちゃん人形がホワイトハウスの前にアピールしている。
全世界で広がる抗議
「イエメンから手を引け!」
「正義が欠けている」:パレスチナと連帯する大規模なデモがイギリス全土で展開され、ロンドンでは、50万人もの人々が国会議事堂広場に行進し、ガザの即時停戦を要求し、イスラエルの不釣り合いな「大量虐殺」猛攻撃に対する自国英国政府の支援を非難し、より危険な中東戦争、より広範な地域戦争、世界戦争への危険を警告し、「イエメンから手を引く」ことを要求している。
ダブリンでは、10万人以上が市街を行進したデモ行進の主催者らは、これをアイルランド史上最大のパレスチナ人の権利を求める集会と称した。アイリッシュ・タイムズ紙は次のように報じている。 群衆はパレスチナの国旗や「ガザ虐殺の終焉」を訴えるポスター、そして紛争で失われた多くの若い命を象徴するベビー服が吊るされた仮設の洗濯物で埋め尽くされた。
ケープタウンの主催者が発表した声明では、「私たちは今日、66以上の都市、少なくとも36か国で計画されているデモが行われる世界行動デーに参加するためにここに来ている」と述べた。 「今日の集会は、即時かつ恒久的な停戦を無条件に求める世界的な声の統一戦線の一環となるだろう。」
米英軍によるイエメン空爆の開始により、ブレント原油が上昇し、80ドルの壁を突破した。「繁栄の守護者作戦」なるものは、彼ら自身の政治的経済的危機の激化を解決しがたいものにし、「繁栄の守護者」は、「破壊者」にならんとしている、と言えよう。
(生駒 敬)