<<「おお! バイデンの嘘は大胆になりすぎている」>>
5/15、米労働統計局が発表した4月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比3.4%上昇したことが明らかにされた。これは主にガソリン価格の高騰と家賃の上昇が原因だという。GDP成長率の低迷と相まって、このデータは米国経済が再びスタグフレーションに入りつつあることをあらためて示している。(下図)
この新しいインフレデータに基づいて再計算すると、1月21日以降、食料品は21.3%、家賃は20.8%、電気代は28.5%、自動車保険は52.1%、卵は43.5%、 離乳食と粉ミルクは 30.0% の上昇となる、と言う。実に驚くべき上昇速度である。
しかし、そのCPIの発表概要によれば、日常生活に多大な影響を及ぼす「食料とエネルギーを除く全品目の指数は、それまでの3か月それぞれ0.4%上昇した後、4月は0.3%の上昇であった」という。つまり上昇速度が少しはソフトになったというわけである。
現実には、バイデン大統領の政権下で、食料品価格は3分の1近く上昇し、ガソリン価格は50パーセント上昇し、インフレ率は総体として実に20%の上昇に達しているのである。
ところが、バイデン氏は5/14のヤフー・ファイナンスでインフレについて語った際、インフレ率は「わずかに上昇」し、「現在は約3%まで下がっている」と確信していると述べている。しかもその際、2021年1月に大統領に就任した当時のインフレ率は9%だったと語ったのである。この発言は、その前週、CNNのタウンホールで同じ主張をした際、事実確認のファクトチェックが行われ、バイデン氏が就任した時のインフレ率は実際には1.4%だったことが明らかにされている。しかも、インフレ率が初めて9%に達したのはバイデン氏が大統領に就任して1年以上後の2022年6月であった。40年ぶりの高水準のインフレ率をもたらしたのは、バイデン政権なのである。ホワイトハウス当局が単に見過ごしているのか、加担しているのか、本人の思い込み、あるいは認知不全なのか、意図的なウソの拡散なのか、厳しく問われるところである。「おお! バイデンの嘘は大胆になりすぎている」(WOW! Biden’s Is Getting WAY TOO BOLD With His Lies)と揶揄される事態である。
<<トランプもバイデンも「ツケを払うことになる」>>
11月の大統領選を半年後に控えて、こんな発言をしているようでは、バイデン氏の再選は絶望的であるとさえ言えよう。
5/15に発表されたギャラップの世論調査によると、
「今日、あなたの家族が直面している最も重要な経済的問題は何ですか? 」という問いに対して
1. 高い生活費/インフレ: 41%
2. 住宅の所有/賃貸のコスト: 14%
3. 借金が多すぎる: 8%
4. 医療費: 7%
5. 金欠/低賃金: 7%
6. ガス価格: 6%
7. 税金: 4%
8. 学生ローン: 3%
9. 失業: 3%
10. 金利: 3%
という回答である。この1の同じ質問は、過去、2020 年 4 月 = 3%、 2021 年 4 月 = 8%、 2022 年 4 月 = 32%、 2023 年 4 月 = 35%、そして今回の 2024 年 4 月 = 41% と、過去最高である。
さらにこのインフレ率について危惧されるのは、CPI発表の前日、5/14に発表された 4 月の生産者物価指数(PPI)である。前月比 0.5% 、前年比 2.2%上昇を記録したのであるが、これは、2023 年 4 月以来、最高の上昇である。サービスコストが急騰し、エネルギーが2番目に重要な要素となり、コアPPIはさらに悪化し、前月比0.5%上昇(前月予想+0.2%の2倍以上)したため、コアPPIは前年比+2.4%に上昇し、米国の PPI 最終需要(食品を除く)エネルギーおよび貿易サービスは前月比 0.4%、前年比 3.1% 増加し、この12 か月で最高を記録している。
この生産者物価指数の上昇は、インフレ率を今後さらに押し上げることは明らかであろう。相当なインフレ対策、あるいは政策転換を取らない限りは、インフレを抑え込むことができないことを警告しているのである。
ところが、である。バイデン政権のインフレを高進させる対ロシア・対中国の緊張激化・戦争挑発政策と一体となった関税引き上げ政策が今回再び急浮上している。
5/14、バイデン氏は、トランプ時代の政策を継承し、多くの中国からの輸入品に対する関税を全面的に引き上げる政策を発表している。関税率の引き上げで、中国からの電気自動車、太陽光発電部品、半導体に最も大きな打撃を与え、25%から50%の引き上げ、他の分野の関税も25%に引き上げる、と言う。しかも、バイデン氏は演説の中で、トランプ前大統領が3000億ドル以上の中国製品に対して実施した関税の維持を正式に支持するとまで表明したのである。
当時、中国からの輸入品に対する関税についてトランプ大統領を何度も非難し、トランプ大統領の政策は「無意味」であると批判し、最終的にはアメリカ人が「ツケを払うことになる」と主張してきた民主党が、同じ立場にすり寄ったのである。当時、2019年9月、バイデン氏は「アメリカの農家と製造業者はそうだ。アメリカ国民はトランプ大統領の無分別な政治的駆け引きのツケを払い続けている」とツイートしていたのである。実際に、トランプ前政権の関税戦争は、2018年から2020年にかけて試みられたが、事実上完全な失敗に終わった政策である。
アメリカの庶民、有権者にとって悲劇的なのは、トランプ氏もまた、バイデン氏に負けじと、それでは足りないと、「中国製製品に60%」、「その他の輸入品に10%の関税」を対案として提起していることである。つまりは、バイデン、トランプ両氏とも、とんでもない謬論を振り回し、インフレ率上昇で互いに「ツケを払うことになる」政策で競い合おうとしているのである。イスラエルのガザ大虐殺支援で競い合う両者の立場とも共通している。両者ともに、ジェノサイドには無関心で、米国の経済を守るために何かをしているように見せかけているに過ぎない、その程度の軽さしか、両氏は持ち合わせていない、とも言えよう。
要請されているのは、国際的な平和外交と緊張緩和政策に裏付けられた経済政策の根本的な転換なのである。
(生駒 敬)