<<スタグフレーション・ショック>>
4/25、米経済分析局(BEA)が発表した最新の経済指標は、バイデン政権自身やエコノミストの予想や期待を裏切る厳しい現実を突き付けている。
インフレ率が下がるどころか再び上昇(3.7%に上昇)、2024年第1四半期のGDP成長率も予想を大きく下回り、3.4%から1.6%に減速、GDP成長率が低迷し、インフレ率が上昇するスタグフレーション(stagflation)、高インフレを伴う経済不況に突入しつつあることを明示したのである。これは、成長期待が低下すると同時に、インフレ率が急上昇するスタグフレーション化である。
バイデン氏が一般教書演説で「今、私たちの経済は世界の羨望の的となっています」どころか、真逆の事態である。ウソ・デタラメが露呈されたわけである。
米CNN/ビジネスニュースは、「スタグフレーションへの懸念が高まっている。 すべての中央銀行家にとって最悪の悪夢だ」と報じ 経済専門サイト・ゼロヘッジは、「スタグフレーション・ショック」と報じている。
この4/25の経済指標を受けて、株価は急落、ダウ工業株30種平均は600ポイント以上下落し、3万8085.80で取引を終えた。 S&P500指数も下落、5,048.42で取引を終え、ナスダック総合指数も下落して15,611.76となり、大型株の売りが広がっている。メタは約11%下落、売りは他のハイテク株にも及び、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトも下落、インテルは8%下落、ヘルスケア、不動産、金融、消費財も軒並み下落している。
さらに、このGDP統計の発表により、米国国債の利回りは急上昇、指標となる10年国債利回りは4.8ベーシスポイント上昇して4.702%、2年国債利回りは6.1ベーシスポイント上昇して4.998%となっている。
当然、米中銀が今後数カ月以内に利下げする可能性があるとの期待、とりわけ円安で窮地に追い込まれている日銀・岸田政権が期待していた、FRB利下げの夢は消えつつある(The Dream of Fed Rate Cuts Is Slipping Away)。
<<悪夢到来の警告>>
「stagnation(停滞)」と「inflation(インフレーション)」、不況と物価上昇が併存する悪夢が到来しつつあることを警告している、そのキーポイントは、以下の通りである。
* GDP 成長率は、2023年第4四半期の 3.4%から1.6%に大きく減速した。
* これはその前の2023年第3四半期の4.9%に引き続く後退であり、いずれの指標の半分にも満たない急落である。
* 政権当局やエコノミストのGDP予測はことごとく外れ(最高予想はゴールドマン・サックスによる3.1%)、最低予想(SMBC日興)の1.7%をさえ下回った。
* この名目GDPが、現実のインフレ率に正確に対応・調整された場合には、プラス1.6%ではなく、実際にはマイナスになっている段階だと言えよう。
* 消費者物価指数・CPIデータが示すインフレ率の上昇は、2023年第4四半期の1.8%から3.4%に上昇した。
* さらに悪いことに、変動が大きい食品とエネルギーを除いた、最も重要とされるコアインフレ率でも 2% から 3.7% に加速、これは予想の3.4%をはるかに上回る急上昇である。
* 目立つのは、サービス部門の年率上昇率は5%を超えていることである。家賃が 20 ~ 30% 値上げされ、自動車保険や住宅保険の費用が 20% 以上値上がりし、公共料金が 10% 以上増加している。
* 持続的なインフレ圧力が続いており、物価圧力が再燃していることを示している。
バイデノミクスそのものが、世界大戦化へ戦争を激化させる緊張激化政策から、平和外交・緊張緩和政策への根本的政策転換をはからない限りは、インフレを抑制することもできないし、スタグフレーションを招き入れる結果をもたらしているのである。
(生駒 敬)